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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
終章:魔界編
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【068】レイン・サメ

 ノメルエンナはレインの体に入った。そのまま魔将二位のヰレアと戦うことになった。

 二人は闇水の壁に囲まれていて出られない。当然外から入ってくることもできない。


「勘違いをされていては困るので先に言っておきましょう。私は魔王様よりも強いですよ」


 ヰレアはたしかにそう言った。しかし、魔将一位のアゼシャンは魔王よりも弱かったはずだ。それに魔将トップの実力のはず。序列がおかしくないか?


「とんだはったりだな。僕の作り出した壁も壊せていないのに、僕に勝てるわけないじゃん」


 ノメルエンナは怯まない。


「そうですね。それでは、私の本気見せてあげましょう」


 ヰレアは瞬きしようとすれば首を斬り落とせるほどの速さでノメルエンナに近づいた。

 間一髪のところで直撃は避けられた。それでも、左目がやられた。


「やるな。僕も本気出さないと負けちゃうよ」


 ノメルエンナの反撃は容易くかわされ、逆に攻め返される。

 消耗戦になれば負けるのはノメルエンナだ。


「レインすまない。勝つのは厳しいかもしれねえ」


『大丈夫。死ぬかくならとっくにできてるから』


「そうか。なら、お前を半魔にさせる」


 ノメルエンナはそう言って壁ぎりぎりまで下がった。そこまで下がるとヰレアもうかつに攻撃できない。何せ触れるものすべてを溶かす。攻撃をかわされでもすれば痛手を負うのは自分だ。


『半魔になるって、無理だよ。僕はただの人間なんだから』


「ワコガの中からか持ってきた魔族の成分を使えばできる。使ってみようか、魔族体(デーモンフォーム)


 ノメルエンナがそういうと体の半分が魔族のようになった。ワコガみたいだ。違うところといえば、ワコガは右半身だったのがノメルエンナの場合は左半身だということだろうか。それくらいの違いだった。


「レイン、悪いが、これでも勝てるかわかんない。負けるつもりはないから僕をちゃんと見てて」


『うん。ノメルエンナなら勝てるよ。仲間は何があっても信じるから』


 ノメルエンナは微笑んだ。


「いつまで突っ立てるつもりですか?いい加減にしていただかないと困るんですが」


「ああ、ごめんごめん。少しでも長生きさせてあげようと思ってね」


 ノメルエンナはさっきまでよりも素早く動く。


『こいつ、さっきまでと動きが違う』


 ヰレアも少し動揺するくらいに早くなっている。


「でも、まだまだ対応可能圏内ですよ」


 完全に攻防戦だ。どちらかが攻撃でどちらかが守りとかではない。どちらも攻撃でどちらも守りなのだ。誰も混ざれないほどけたたましい戦いだ。


「その程度ですか?」


 ヰレアがそういうとノメルエンナはニヤリと笑った。ノメルエンナは一瞬の隙にヰレアに攻撃を当てた。


即興必殺(オリジナル魔法)流れる水の飛沫(ソクゲキソクハツ)’」


 ノメルエンナはヰレアの首を斬りつけた。しかし、一撃で斬り切れずに少しずつしか刃が進まない。

 ヰレアは足掻きとしてノメルエンナの脇腹から斬りつけた。かなり深い、いや、切断されている。


 ノメルエンナはヰレアの首を斬り落とした。と、同時に、ヰレアの剣はノメルエンナの、レイの肩までを切断しきった。左脇腹から右肩までを斬りおとされたノメルエンナ、レインは死んだ。首を斬られたヰレアも死んだ。勝負は引き分けに終わった。

 二人?三人?が死んだことで二人を囲んでいた壁は奇麗さっぱっりなくなった。


「レインく、、、ん、、、」


 ヒエリンは壁がなくなると同時に駆け寄ろうとした。しかし、一歩踏み込んだところで足が止まった。そのまま膝から崩れ落ちた。

 ウィンディーは何も言えず、何も動けず、ただ単に惨い光景を見ている。その横でヒエリンは大号泣している。


「ウィンディー君、どうにかできないの?レイン君を助けてあげられないの?」


 ヒエリンはウィンディーに這いつくばって、縋りつく。しかし、ウィンディーは首を横にする。


「蘇生の魔法なんてないよ。あの状態で生きてる可能性はもうないよ」


 そういってウィンディーも膝から崩れ落ちた。

 ヒエリンはさらに号泣する。ウィンディーも涙を流す。一度溢れた涙は止まることなくどんどん流れだす。


 急に扉が開いた。ウィンディーは泣きながらも剣を握った。

 扉の方を見るとマリネとセイヤがいた。ウィンディーは剣を落とした。


「マリネさん、セイヤさん。よかった無事で」


 ウィンディーはそう言って泣き倒れた。

 

「これは...」


「嘘だろ...」


 二人は部屋に散らばる死体を見て言葉を失った。

 ウィンディーは一通り泣き止むとある程度のあらましを二人に話した。モペが魔族側の存在ッだったこと。レイを取り込んだこと。そして、殺したこと。レインたちの方は見えなくなって分からないことも一応伝えていた。


「そうだったのか」


「俺らがいてやれなくてすまなかった」


 こういう時、普通は部屋は静まり返るのが普通なのだろう。でも、ヒエリンの泣き声がずっと響いている。人一倍仲間を好いていたヒエリンだ。一度に三人も消えたとなると、緊張がなくなった途端に一気に悲しみが出てきたのだろう。


「二人はヒエリンさんをお願いします。僕はワコガ君の様子を見てきます。いやな予感がする」


「待て」


 ウィンディーはセイヤの言葉を聞くことなく飛び出した。多分聞こえていなかったのだろう。

次回、魔王と勇者の最後の戦いが始まる。


レイが一番惨い死に方をしたのは気のせいじゃないよね?

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