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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第6章:精霊の森編
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【053】精霊之王

「駄目だ。傷はふさげてもそれ以上の回復ができない」


 レイが言う。ウィンディーの腹部の傷はなくなっている。いくつも回復魔法が施されているのに意識が戻らない。


「エルフ?だったら微精霊たちならどうにかできるかな」


 俺はそう言ってセイヤたちが必至で抑えている微精霊の大軍の中に入っていった。おれが、というよりはノメルエンナだろう。俺は二週間近く飲まず食わず寝ずでいたようだから意識が飛んでいた。


『この体には精霊の血が入っている。だったら精霊呪法も使えるはず。一回しか見たことないけど、試してみる価値はありそうだし、やってみよう』


 ノメルエンナは祈るように手を握り、目を閉じた。


「[今ここに集まりし微精霊よ、我が呼びかけに答えてたもう。

  意識なきかの者を再び目覚めさせんと求むる我の望み、聞き入れたもうござむ。

  しからば助力いたしたものには我の力、助力なりとも受け渡せしと誓おうぞ。

  この身ささげてもなお足りぬのならば種族超越の進化に導こうぞ。

  制約の導きとともに力貸したもう]」


 微精霊たちはいっせいに俺の、ノメルエンナの方にやってきた。特に何をするでもなく全員ノメルエンナの周囲を通ってウィンディーの方へ飛んで行った。ウィンディーはあっという間に微精霊たちに埋もれて見えなくなった。

 少しずつ微精霊たちがウィンデイを持ち上げている。


“確認しました。ネイムド〈ウィンディー・フウ〉が全微精霊の加護を受けたことにより、種族‘精霊近似生命体(エルフ)’から種族‘精霊之王(キングスピリット)’に超進化しました。

 精霊之王(キングスピリット)の固有能力‘王の祝福(キングハ-ト)’‘精霊支配(スピリットユー)’‘微精霊創造(メイクスモール)’‘神との対談(コネクション)’を獲得しました。

 精霊之王(キングスピリット)固有アイテム〈聖王の剣(オリジナル)〉を取得しました。

 精霊之王(キングスピリット)の誓約として精霊界の監視役に任命されました。精霊の森から出ることができなくなりました。

 ―――‘精霊之王(キングスピリット)’の著しい生命力の低下を確認。

 世界の無限エネルギー(トキハナツチカラ)をネイムド〈ウィンディー・フウ〉に贈与...成功しました。

 ネイムド〈ウィンディー・フウ〉は称号‘死に戻り’を獲得しました”


 能力案内(アナウンス)だ。

 微精霊たちがウィンディーから離れた。どうやらウィンディーの回復には成功したようだ。それに種族そのものも進化したことで、見た目も少し変化してた。


「なんだよ。死んでねえじゃねえか」


 後ろからレイジーの声がした。首が治ってる。

 確かに二つある心臓と脳は確実に分断した。心臓と脳がつながっていないと再生はできないはずだ。




 俺がレイジーの首を斬ったすぐ後のことだ。

 レイジーの武器双魔呪鎌(ソーマジュレン)がレイジーの体と頭をについている首の部分に突き刺さった。すると、二つはひきつけ合うかのように近づいて首の断面で合わせた。

 すると、双魔呪鎌(ソーマジュレン)はきえてなくなった。首は元通りにくっついた。さらにはレイジーも強化されている。


“ネイムド〈レイジー・リューク〉が称号‘死に戻り’を獲得しました。それに伴い、種族‘魔人(デーモン)’から種族‘悪魔の権化(デスロード)’に進化しました”


「なんだよ。死んでねえじゃねえか」


 レイジーは復活したとたんにウィンディーも進化していることに気付き、ボソッと呟いた。

 みんなレイジーの姿を見て驚いた。


「なんで生きてる?確かに斬ったはず。明確な手ごたえは僕も感じた」


 ノメルエンナが不思議そうな声で言いながらもかなりの威圧感があった。


「俺の双魔呪鎌(ソーマジュレン)の特性は‘死後の蘇生(ヨミガエリ)’だったんだよ。俺が死ねば俺を蘇生させて消える。まさかそれを使わされるとは思いもしなかったけどな」


「そうか。二度も死にたいとはなかなか変わり者だな」


「馬鹿め。ただの蘇生じゃねえ。蘇生させるだけなら一本で十分なんだよ。もう一本分は俺の強化に使われる。お前らじゃ俺には勝てねえよ」


 レイジーは大きくニヤリと笑っている。


 ノメルエンナは一瞬にして間合いを詰めて首目掛けて斬りかかった。しかし、レイジーは身を捻るようにして容易くかわした。


「さっきとは太刀筋が違うみたいだな。何がしたいんだ?」


「今はワコガじゃないってだけだ」


 ノメルエンナは諦めずに何度も斬りかかる。


「訳の分からねえこと言うなよ」


「メイドの土産にはちょうどいいから教えてあげる。僕はこの体に宿った魂。その意志だ」


 ノメルエンナはそれだけ言って一度距離をとった。


「君は下がっていな、あいつは僕が倒す」


 ウィンディーが声をかけてきた。


「お前一人で倒せるのか?」


「容易いこと。任せな」


 そういってウィンディーはゆっくりとレイジーに歩み寄った。


「今度こそ確実に殺してやるよ」


 そういってレイジーはウィンディーの胸部に腕を貫通させた。


「「「......!」」」


 その場にいた全員が言葉を失った。レイジーも例外ではない。

 ウィンディーには確かに腕が貫通している。それなのに違いって来たりとも流れ出していない。


「死ぬのはそっちだ」


 ウィンディーはレイジーの顔面を殴り、吹き飛ばした。

 ウィンディーの胸部は穴どころか傷一つついていなかった。


「僕に物理攻撃はきかないよ」


 ウィンディーは小さな光の粒のようなものになってばらけた。

 レイジーの目の前でまた光が集まってウィンディーの姿になった。

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