【005】魔王襲来、町の警戒
“神獣の絶命を確認。ネイムド〈ワコガ・リュー〉は称号‘神獣殺’並びに‘聖魔混合’を獲得。称号‘神獣殺’‘聖魔混合’を獲得したことによりステータスノが大幅に上昇しました。称号‘竜殺’‘神獣殺’を獲得したことによりスキル‘無限圧迫’‘闘気詐欺’‘無限再生’を獲得。スキル‘超再生’‘無限再生’を獲得したことによりスキル‘超次元回復’に統合されました。”
龍を倒したことで世界の案内が聞こえた。
俺は親父と一緒に家までの帰路をたどった。今いる草原からは一日程度で着く。急げば今日中にでも町に着くだろう。
「おい貴様、やっぱり勇者のこと知ってるだろ」
森を抜けた時に聞いた少女の声だ。また物音一つなく背中を取られた。今回は親父も一緒にいた。親父でもきずかないほどに隠蔽しているのだとすると相当厄介だ。俺と親父は二人で距離を取りながら声のするほうに振り向いた。
そこには小さな少女がいた。だが人間ではなく魔族だ。それも並の魔族なら十人相手にしても互角かそれ以上の強さを持っているほど立派な角をしている。
「この先から勇者に埋め込んだ我の闇の気配がするぞ」
親父が背中に持っていた巨大な剣を取り出した。
「ワコガ、こいつはマジでやばい。お前は早く町に戻って町の人全員を非難させろ」
親父は俺にそういうと一人で魔族の少女に向かって剣を振りかざした。
「そんな動きが鈍いのに我に喧嘩を吹っ掛けるとは言い度胸だな」
親父の剣は粉砕され遠くの街の近くの山まで蹴り飛ばされた。
『急いで戻らないと、、、いや、今は親父のほうが町に近い。ここは俺が引き留めるしかない』
「ね、ねえ、そこの魔族のお嬢ちゃん、勇者のところに行きたいの?」
俺は聖剣と魔剣を手に持っていたが攻撃するそぶりも向けず、一歩も動かないで聞いた。
「我は魔王〈サイオク・リューク〉だぞ。口のきき方には気をつけよ。貴様ごとき捻り潰すことぐらい容易いのだぞ」
「ま、魔王、だと、、、確かに、今の俺にお前を倒せるほどの力はあるわけもない。でも、こっから先には行かせられないよ。この先には俺の故郷の町があるんだ。町のみんなは俺が守らないといけないんだ」
俺は魔王を目の前にしてもあまり強張らなかった。しかしなぜか足が前に出なかった。だが、攻撃のかまえは出来た。聖剣と魔剣の二本で魔王と戦うことになるとは思わなかった。しかも‘勇者’にも成れていない‘賢者’の状態だ。真っ向勝負して勝てるわけがない。相手は仮初の勇者を三人倒している魔王だぞ。
「そんな怯え腰で我に勝てると思っているのか。めでたい奴だな」
怯え腰になるのも当然だろう。仮初とは言え‘勇者’になっても勝てるかどうかなのだから。今の俺にできる魔王を町から遠ざけて俺も町に帰る方法を考えないと。
そんな暇を魔王が与えてくれるわけもなく俺に殴りかかってきた。俺は間一髪のところで防いだがそれでもかなりの衝撃でかなり飛ばされた。しかも足が地面にまともにつけられないタイミングで二発目の殴りに来た。さすがに二発目は防いでもさらに町に近づいてしまう。
「仕方ないか、実力見合う云々はこの際捨てるしかないな。世界に火急の申請……」
俺が魔王の相手をしていたころ町では山で急に轟音と同時に高く砂煙が飛んでいるのが見え騒ぎになっていた。町の警備隊が山のほうを警戒した。
山のほうから俺の親父が戻ってきたときにはさらに騒ぎになったようだ。そんな騒ぎをかき消すように親父は指示を出していたらしい。
「最寄りの草原でワコガと魔王がいる。万が一に備えてみんなは山に避難しろ。奴の狙いはこの町で休養している勇者だ」
それを聞いた町の住人は各々早々に身支度をして山に向かった。町の警備員も非難したが俺の家族だけは町に残っていた。町屈指の実力者である俺の両親二人がかりでなら魔王が来ても加勢が来るまでの時間稼ぎならできかもしれないという算段だったのだろう。二人は完全に戦闘用の装備を整えていた。
「リューさん、勇者様の容態が急変してご冥福なられました」
勇者の専属医が二人に報告に来た。
「まだ残っていたのか?!急いで逃げろ」
親父の慌てたような口調に医者は山に向かって走って行った。
「これは相当まずいかもなお前はあいつのところにいてくれ。もしかしたらあいつの体内に埋め込まれた魔王の闇が暴れだすかもしれない」
親母は親父に言われると軽く頷いてすぐに勇者の元に向かった。
親父は一人で町の周囲の警戒を続けた。
親父が警備をしていると地平線の先からゆっくりと町に近づいてくる人影が見えた。うっすらとシルエットが見えるばかりで目視できる範囲になかなか来ない。
本人が確認できる距離まで近づいてくるとその正体が俺であることに気づいた。親父は武器をしまって俺の元まで走ってきた。
「ワコガ、お前、魔王にやられなかったのか?」
「追い返しはしたけど倒せなかった。ゴメン、せっかく勇者を生贄にしたのに」
俺は意識がもうろうとして倒れてしまった。
俺が次に目が覚めたのは次の日の朝だった。