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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第5章:神宮編
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【047】死神

 ルーサーは何も言わない。アルウスもるーさの方を見るばかりで何も言わない。


「なんで私だと?」


「お前のアルウスに対する...グッ......」


 俺はアルウスに鳩尾を殴られた。


「貴様、今私を呼び捨てにしたな」


 アルウスは俺に殺意の目を向けた。


「ルーサー、さっき絶対神のこと、『何もできないやつ』とか『あいつ』とか言ってたよな。神が唯一絶対的経緯を持てと言っている絶対神に対して」


「貴様、名前じゃないからいいってわけじゃないからな。次呼び捨てにしたら消すぞ」


「アルウス、そんなことしなくていい。そいつはノメルエンナだ。言っても聞かない」


 アルウスは目を丸く見知らいて俺の顔を見た。かなり疑問を持った視線だ。


「こいつがノメルエンナなのか。そうかそうか、転生したのか。ってなるかよ。見た目が違うじゃねえか」


 転生は本来その物の魂が、自分の子孫の体に宿ることで成功する。自我があると失敗する確率が高くなるので本来は胎児の頃に宿り、生まれた時から話すことができ、前世の名前を使う。しかし、俺の場合そういうわけではない。

 生まれた後でも融合転生といった形で転生することは可能だ。融合転生は体に二つの魂を宿すことのできる器と、その物の魂の波長が転生前のものと真反対か多数の類似点があればできる。また、自我が弱くなっている時でも成功する。


「俺だって知らねえけど、ここに来るのは初めてのはずなのに初めての気がしない。

 見たことあるはずなのに見たことない。

 ここじゃなくてもそうだ。

 知らないはずのことを壁でやってのけることがあった。

 記憶はないが前世があってもおかしくはない気がする。

 まあ、ただの勘違いってだけかもしれねえけどな」


「気がする、か。面白い。ならばあいつを倒せたのなら魂の開眼(こんがん)させてやろう。お前が死んだら世界は終わる。負けんじゃないぞ」


 魂の開眼(こんがん)は転生しても前世の記憶がないときに行えば前世の記憶を呼び起こすことができる。ただし、前世の記憶がある者、前世がない者に使えば魂に負荷がかかりすぎて最悪の場合死ぬとすら言われている。


「そんなことされたら大迷惑ってやつ。アルウス、私を生かしたこと後悔させてやろう」


 聞けば、アルウスは唯一の女神だったらしい。

 だが、そんなときにルーサーが来たそうだ。死神とはいえ初めて見る自分以外の女神。そこでアルウスは、死神としてではなく、死を司る神、牧神という形でむかいいれることにしたそうだ。

 だが、死神は天使ではなく悪魔に近い存在。その姿では周りから認められなかったのだろう。そこでアルウスは〈神の手記書〉というアイテムでルーサーに天使に近い体を渡した。

 しかし、その代償として戦う力を失うことになったらしい。


「私がこの神の手記書を捨てれば世界に死をもたらそう。それでも手放せというか?」


 俺は少し考えた。いや、覚悟を決める時間が少しほしかっただけかもしれない。


「ああ、その前に俺がお前を殺してやるよ」


「お前一人でできるのか?」


 アルウスが言った。確かにここに来る前にルーサーの強さは本人から聞いた。俺日知鳥で倒せるほどやわじゃないのはわかっているつもりだ。


「心配になったときにアシストしてくれ。これでも一応勇者の末裔で半魔(ハーフデーモン)半半霊(クオータースピリット)なんでな」


 俺は腰から祝福の聖剣(ハーピーブレード)封魔剣(チェッダーソード)をだした。


「右手にそれが収まるのか。なら貴様がノメルエンナっていうのも事実かもしれぬな」


 アルウス呟いた。


 ルーサーは神の手記書を捨てた。すると、ルーサーの体は禍々しく大きくなった。さっきまでの闘気(けはい)は今の一割にも満たないほどすさまじく感じる。確かにこれは俺じゃ勝てない気がする。闘気(けはい)だけで言えばアルウスよりもある気がする。


「アルウス、やっぱずっと援護してくれ。これは俺一人だと無理だ。確実に死ぬ」


「だから言ったろうに。まあ良い。私も一緒に戦ってやろう。その代わり、決して死ぬんじゃないぞ」


「分かってるって。長期戦になろうが持久戦になろうが勝ってやるよ」


 俺はなぜか笑っていた。ここまで圧迫されたのは初めてだ。

 魔族系神か天使系神か、恐怖を覚えるのは魔族系神の方だ。魔族系神は天使系神を消そうとし、天使系神はすべてを等しく扱おうとする。だが、天使系神はそう簡単に殺されるほどのやわな存在ではない。


「逞しいまでの自信だな。私が貴様ごときに負ける訳ないだろう」


 ルーサーは自身の大きさ程ある巨大な鎌を振り落としてきた。俺たちは間一髪のところでかわした。俺はそのままルーサーの懐まで突っ走った。


「無茶するなよ。‘究極化(アルティメット)’」


 アルウスの魔法のおかげで俺の各ステータスがかなり上昇している。魔法の効果が切れれば元に戻るのだろうが、ルーサーと持久戦になるならこれくらいは欲しいものだ。


「どこまでえぐれるか試してみるか。神聖魔法‘聖光斬撃ライオネットクラッシュ’・双」


 本気で切り付けても胴の半分蔵までの深さしか斬れなかった。


「その程度で私を倒せるわけないだろう」


 ルーサーはそう言いながら俺に殴りかかっていた。


「‘究極障壁(アルード)’。ワコガ、お前も下がれ」


 俺はアルウスの言うとおりに下がった。


「悪い。助かった」


「お前、そろそろ本気を出せ。死ぬぞ」


「ここで使えるかわかんねえけど、あいつ見てたら行ける気がしてきた」


「ならさっさと出せ」

ワコガの本気って一体...?

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