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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第4章:忍びの里編
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【043】過去の因縁

 普段の俺とは違うまた別の俺の力。魔族体(デーモンフォーム)になった俺の力は言うまでもない。魔族の力を得た俺はさらに強くなっている。しかし、まだ全くと言っていいほど制御ができていない。



「勇者がそんな姿をしてたら人間どもは恐れるだろうな。正気を失ってるあんたじゃ私には勝てないわよ」


「本当に勝てないかどうか、試してみるか?」


 俺はマージュに何度も斬りかかっていた。しかし、どの攻撃もかわされている。避けることはできるようだが反撃する余裕はないようだ。


「避けてすぐが一番隙が多いんだよ」


 俺は避けてすぐのマージュの心臓に剣を突き刺した。半魔(ハーフデーモン)の心臓は一つだけだ。


「あまいよ」


 俺はマージュに蹴り飛ばされた。その衝撃で俺は自我を取り戻すことができた。

 マージュは刺された部分が再生している。本来なら心臓を潰されたら回復はできないはず。魔族は心臓が二つあるから一つ潰されれも再生ができる。


「まさか、四過半魔クオーターサードデーモンなのか」


「バレちゃったか。そうだよ。私は四過半魔クオーターサードデーモン。心臓が二つある」


 心臓が二つあるなら両方同時に潰すか、脳と心臓を別々にするかでしか殺せない。首を断ち切ることで脳と心臓が別々になるので倒せる。一人で戦うならそのようにして倒すことが多い。


「マージュ、なんで勇者一族に魔将が入り込んでだよ。なんで身内で戦わなきゃいけないんだよ」


「別にいいじゃん。それとも、家族を傷つけたくないだけの変な優しさかな」


「俺は勇者だ。魔族に与するものは何人たりとも許さない。たとえ仲間でも、家族だったとしてもな」


「いいこと言うじゃん。それならなおさらなんで聞いたのか気になるね」


「理由なき争いはない。先に手を挙げたのが人間か魔族かなんてどうでもいい。ただ、なんで勇者の一族と結婚したんだよ」


「少し違うよ。

 勇者の一族は私。

 あなたの父親と(あなたの)兄さんの父親は別の人よ。

 女は勇者にはなれないらしいの。

 だから(あなたの)兄さんが勇者になったときに覚悟を決めたの。

 勇者は私の手で終わらせるって」


 無茶苦茶だが筋は通っている。自分がなれなかった勇者を息子が引き継いだなら憎むのはわからなくもない。でも、だからって人を襲い、殺していい理由にはならない。


“ネイムド〈ワコガ・リュー〉より、高密度のエネルギーを検出。スキル‘天羽’がスキル‘天翼’に進化しました。続けて、人間体と魔族体の変更が自由に可能になりました”


「俺は二度も覚醒した。お前は俺に勝てない」


 俺は‘天翼’を使ってみた。すると、俺の背中から天使のような白い羽が生えた。

 落下速度低下のスキルから滞空,上昇のスキルに変化したのだろう。


「別に勝つ必要はないの。私が死んでもあんたをミチズレにすれば済むだけのことよ」


「できるものならしてみろよ」


「いいわよ。邪魔なものがない上で決着をつけましょ。おいで、私の魔剣〈聖光封剣(アンチライトブレード)〉」


「その魔剣、どこかで見た気が、、、」


「思い出した?あなたが作ってくれた魔剣よ。そしてこの剣で、マイトを追い詰めた。そのあとは魔王様の闇に飲み込まれてたけどね」


 マージュは笑いながら言った。


「全部思い出したよ。俺が学園に入学する前の七歳までの記憶すべてをな」


 俺はスキル‘無限圧迫’を使った。簡単に言うと、相手に重圧をかけて戦意を少しでも減らすことができる技だ。


『なんでこんなこと忘れてたんだよ。全部知ってたはずだ。俺はマージュ(こいつ)に唆されて魔族の側に連れていかされそうにもなったし、それに何よりも、俺の憧れの兄貴のことを』


「もう思い出に浸る時間は十分?」


「それはこっちのセリフだ」


 俺はマージュの耳元で囁き、首を斬った。


「さよなら、親母(かあさん)


 マージュの斬られた体がすべて高濃度の闇になって俺を覆った。俺はその読みをすべて吸収した。マリネでもこの闇だと保って一分だろう。

 しかし、今の俺は魔族と近い魔族体(デーモンフォーム)だ。闇を吸収すればその分強くなれる。強く多すぎなければ死ぬことはない。だが、俺よりも弱い者の闇だ。死ぬことはない。

 闇をすべて吸収した俺は地面に降り、魔族体(デーモンフォーム)を解除してレイたちのいる避難所の方へ向かった。



「ワコガ、大丈夫か?」


 レイが俺に駆け寄ってきてくれた。立つのですら限界だった俺を支えてくれた。


「ああ、ちゃんと約束果たしたよ、レイ兄」


 レイは俺の方を見ると微笑んだ。

 マリネとセイヤも駆け寄ってきた。


「もう一人で無茶すんなよ」


「心配したぞ」


「悪かったよ。セイヤっち、マリ姉」


 二人とも微笑んだ。三人とも俺が記憶を取り戻したこと察したようだ。


「懐かしい呼び名だな」


「いつの呼び方だよ。呼び捨てでいいって言ったろ」


「呼びたきゃ好きにしろ」


「分かったよ。レイ兄、マリ姉、セイヤ」


 セイヤ以外の三人が笑った。


「もー、わかったよ、好きに呼べよ」


「分かったよ、セイヤ」


「お前な」


「セイヤっち、もしかして嫉妬でもした?」


「からかってんじゃねえよ」



 色々あったが、町には被害を出すことなく終わらせることができた。でも、完全勝利にはならなかった。一人、この戦いにおいて命を落としてしまった。




 翌日からしばらくの間、俺たちは町にいさせてもらうことにした。体力の回復もそうだが、セイヤを元に戻すべく特訓の日々が続いた。なぜかメニューは俺が決める羽目になった。

 数日経ってセイヤの調子もよくなってきた。


「レイ兄、あと任せていいか?」


「どうかしたのか?」


「明日には神界に行こうと思ってな。神々のいる場所だ。他の魔将が強化されているのなら、俺が勇者として最強位になっておくべきだと思うんだ」


「そういうことか。わかった。行ってこい」


「悪いな。俺の帰りが遅かったら先にどこか行っといてくれて構わないからな」


 そう言って俺は寝床を貸してくれたマリネの親と町長に挨拶に行った。


第4章完結!次回から【第5章:神宮編】スタート!



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 追記

5章の話数はかなり少なくなることが予想されます。

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