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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第4章:忍びの里編
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【037】忍びの訓練

 とりあえず、俺たちは外に出てみることにした。



「なんだ、この違和感は」


 俺が玄関の戸を開けようとしたのだが、少し妙な力を感じた。今まで感じたことのない不思議な力だった。


「どうした?」


「いや、何でもない」

『‘魔法強制停止(マジックエンド)’』


 ‘魔法強制停止(マジックエンド)’は設置型の魔法や、詠唱型の魔法を発動前に阻害することのできる魔法だ。


 俺が戸を開けると床に電気が流れた。一撃で絶命に至る強さではないし、跳べば簡単にかわせるようなものだった。それも、ずっと続くようなものではなく、数秒で終わるようなものだった。


「なかなかやりよるな」


 扉の前にいたマリネの師範が笑いかけながら言った。


「どうなってんだよ。魔法は消したはずだぞ」


「残念。今設置していたのは魔法ではなく、妖術だ。それにしても、まさか警戒されるとは思わなかったな」


 話す間もなく外に呼び出されたのだ。さすがに警戒してもおかしくはないだろう。今までいなかったのならそれはそれでどうかと思うがな。


「妖術?なんだそれ?」


「妖術というのは魔法と似ているが、少し違う。

 妖術を使うには魔素を妖力に変換させる必要がある。

 そして、その妖力を魔素同様、様々な形式にして技を発動させるのが妖術だ。

 妖力に作り替えることさえ会得できれば誰でもできる簡単なものさ。

 まずはそこから教える」


 要するに、魔素を妖力ってのにして使うってことか。魔素そのものを返還させる発想なんて普通ないだろう。

 もしかすると妖術というのが、妖族が使うと言われている怪しげな術のことなのか。そのせいで妖族が蔑視されてるんじゃないのだろうか。



 それから俺たちは二十日程ずっと妖力を作り出す訓練をさせられた。

 すること自体は単純だ。だが難易度が計り知れないほど難しく感じる。


 まず、魔素を塊ではなく単体で見ろと言われる。そして見つけた魔素一つ一つの内面と外面を入れかえる。それだけで妖力は出来上がる。

 こんなこと一粒ずつやっていくのはできるが、それだと術を使うのに必要な分を集めるのに、夜明け前に始めたとしても発動するまでには一晩はかかるだろう。

 つまり、作業は単体で見つつ、塊単位で複数同時に変換させる必要がある。それも、かなりの速さが必要となる。

 初めに言われたのは十秒以内に妖術を繰り出せるほどになれと言われた。塊単位で一つずづ変換すると、どれだけ調子が良くても、どれだけ簡単な術式であっても発動までに数分はかかる。



 俺たちが妖術を数秒以内に発動できるようになったのは二か月以上たったころだった。

 そんなある日マリネが久しぶりに顔を出した。たまにコツを教えてくれていたが、別件の用が忙しかったらしく最近は顔も出さなかったのだ。


「師範、それにみんな、すぐに戦闘用意を。この街に危機が迫っている」


「どうしたんだ?」


「厄災の行進〈百鬼夜行〉が来る」


「詳しく聞こう」



 百鬼夜行は、妖怪たちが百体以上の束になって行進を起こすことらしい。

 そして、封印されているはずの天才級の妖怪がいたるところで解放されているらしい。封印されている妖怪は全部で五体。他の小物の妖怪たちはその封印されていた妖怪に続くように行進する。さらに、百鬼夜行の行進に入っている妖怪たちは強化されるらしい。

 一体開放するだけでも起こる百鬼夜行が五体放たれたとなると抑え込むのはかなり大変なのだろう。それに百鬼夜行の別称が、厄災の行進だ。苦戦を強いられるのはわかりきったことだろう。

 それに、封印は自然崩壊ではなく、何者かによって破られているらしい。その元凶も倒さなくてはならなそうだ。


「その百鬼夜行ってのはいつここに来るんだよ」


「おそらく明日の夕暮れには着くだろう」


「もう時間がないじゃないか」



 俺たちは一度マリネの家で作戦を立てることにした。


「時間もあまりない。今俺が思いつく限りの作戦を言う」


 俺の考えた作戦はこうだ。


 マリネと師範が住民たちの避難誘導。ただし、避難場所は五つ来る百鬼夜行のうち最も弱い軍団が来る地区に定めることにした。避難誘導が終われば封印を破ったものの探してもらうことにした。見つけたらマリネはレイたちのところへ、師範は常に見張ってもらうことにした。何か動きがあればその都度教えてもらうつもりだ。


 そして、ひな所のある方向にはレイとセイヤ二人を向かわせる。万が一百鬼夜行の強さをはかり違えた場合の保険もかけての二人だ。この二人なら多少強くても一つの軍くらいなら全滅が可能だろうという考えだ。


 そして、その両端からくる軍を俺とモペがそれぞれ一つずつ担当する。俺たちがするのは完全防衛ではなく、避難所の方向に向かわせないことだ。住人たちが全員無事でいられるなら建物への被害は何も考えなくていい。ただし、可能な限り被害は最低限にとどめるようにする。


 残り二つの軍はレイン、ストームとフレア、ウィンディーに分かれて向かってもらうことにした。ここは全滅というよりは安全に被害を抑えてもらう程度でいい。


 そして、ヒエリンには全体が把握できる位置からの指示を出してもらうことにした。他の箇所での戦闘状況で何か大きなことがあればヒエリンが見える限りは全体に伝えてもらう算段だ。できれば何もないことを祈りたいがな。

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