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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第4章:忍びの里編
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【036】十人の行き先

 そんなこんなで俺たちは国王にもらった装備を身にまとい街を出た。


「あ、これからどこ行くか決めてなかった」


 俺は我に返って呟いた。

 何も考えずに、キリがいいからと出てきたが、行先もなくただ歩き回るのもおもしろくない。かと言って、また街に戻るのも違う気がする。


「え、考えてなかったのかよ」


「まあ、どうせすぐ決まると思ってたから」


「そんなもん地図もなしにどうやって決めるんだよ」


「あ、、、」


 最後の俺の一言で場の空気が凍り付いた。

 確かにそうだ。行く先も行く方向もわからないまま進んでもどこにつくか分かったものじゃない。


「どこに行くか決めてないなら行きたいところがあるんだけどいいかな?」


 マリネの一言でみんな胸をなで下ろしてマリネのほうを見た。


「少し実家のほうに顔出そうと思っただけなんだけどいいかな?少し変なところにあるんだけど」


「いいじゃん」「行こうぜ」


 レインとフレアはかなり乗り気だ。


「マリネ、いいのか?」


「うん、大丈夫」


「それはお前の正体を明かすってことか?」


「元から明かすつもりだったし問題ないだろう」


 レイとセイヤが何かおかしな質問をしている。マリネの表情は普段からほとんどが隠されていてちゃんとした顔を見たことがない。


「驚かずに聞いてほしいんだけど、我は妖族なんだ」


 妖族には全身のどこかに一族を表す痣が生まれつきある。

 マリネの場合は両頬に黒い痣があった。

 マリネの素顔を見るのは初めてだ。食事の時もずっと頬は隠されていた。何か信仰的なものかと思っていたが、種族を隠すためだったのか。

 でも、解析鑑定で俺は知ってたんだよな。そしてレイとセイヤは反応から知っていたであろう。ヒエリンは風呂に一緒に行っていたから知っていたと思う。

 他の五人は目を見開いて開いた口が塞がっていない。本当に知らなかった反応だ。


「実家ってことは妖界行くのか?」


「ワコガは驚かないんだな。この二人なんか腰を抜かして驚いていたというのに」


「ま、まあ、マゼスチャンを鑑定したときに一緒に見えちゃっててよ。その時は聞けるような雰囲気じゃなかったし、また聞こうと思ってたくらいだったから」


「なるほど。そういうことか。確かにこれから行くのは妖界だぞ」


 妖界は人間界よりも闇が濃い空間だ。普通の人間でも行けなくはないが、長期滞在はするべきではないとされている。だが、俺らは全員闇にはかなり耐性をつけているから、そこまで問題ではない。


「じゃあ、行ってみるか。マリネの故郷、妖界へ」



 妖界につくまで色々あった。ミヤやら〈 (くうはく)〉やらに足止めはくらったが、特に大きな問題なく妖界の前までついた。


「こっから先が妖界になる。我の故郷もこの先すぐだ」


「ようやく着いたな」


「うん。あと少しだ」



 俺たちは妖界に入ってすぐの山を越えて洞穴のようなトンネルを通ってマリネの故郷についた。

 建物は基本木造だ。藁の家も所々に見える。


「ここが我の家だ。上がってくれ」


 マリネに案内されるまま俺たちは家に上がらせてもらった。


「おねぇちゃんだー。ママー、おねぇちゃんが帰ってきたよ」


「シズヱ、あまり大きな声出さないの。お帰りマリネ。えっと、そちらの方々は?」


「みんな旅仲間だよ。母さんも元気そうでよかった」


「あらそうなの。どうぞ、ゆっくりしていってね」


 俺たちは有無を言わさずに家中を案内されて和室で待たされた。

 マリネは親御さんらと別室で話してて、なぜか妹のシズヱちゃんが俺たちといる。


「シズヱちゃんは将来したいこととかあるの?」


「ん~っとね、ギルドのお偉いさんになりたい!」


「そっか、頑張れよ」


「うん!」



 そんなことしか話すことがなく静かな時間が過ぎた。


「みんな待たせたな」


「おねぇちゃん」


 マリネは普段隠してる素顔を何一つ隠さず部屋に入ってきた。襖を開けたとたんにシズヱちゃんはマリネに抱き着いた。


「明日から我の師範がみんなにも稽古をつけてくれるそうだ。みんなも来るか?」


 襖とは反対の方からマリネの声がした。

 シズヱちゃんが抱きついていたマリネは藁人形になった。


「俺らが行ってもいいのか?」


「問題ない」


 不意に天井から声がした。見てみると天井に男が一人張り付いていた。見た目の年齢は五十代といったところだろうか。

 誰にも気配を察知されず、ずっと張り付いていたらしい。


 俺たちが天井を見て唖然としていると、男は降りてきた。


「師範、もう少しまともな登場はできないのですか?」


「忍びとしてはかなりまともな方だぞ」


「この世界に忍びなんて数えるほどしかいないと思いますが」


「それはそうかもな」


 男は高らかに笑い出した。


「えっと、これが我の師範だ。昔から我に稽古をつけてくれていた。腕は我が保証する」


 マリネが気まずそうに紹介してくれた。

 確かにずっと闘気(けはい)が全く感じられない。そういえば、マリネの闘気(けはい)も感じずらくなっている。何かやっているのか。


「マリネ、さっきからお前の闘気(けはい)が感じずらいのは何かあるのか?」


「それはワシから説明してやろう。表に出ろ」


 マリネの師範はそう言って姿を消した。マリネも追うようにして、姿を消してしまった。おそらく家の前にでも移動したのだろう。

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