【034】魔将招集
魔界の中心部にある魔王城。魔王城の最上階にある〔魔王ノ間〕に集められた五人の魔将たち。びょくざには魔王サイオクが座っている。
「よくぞ集まったな」
サイオクの一言で、集められた魔将たちは跪いた。
「急な招集とは何かございましたか?」
魔将五位のマージュが最初に口を開いた。
「残りの魔将はお前ら五人のみだ。そして、もう増やすつもりはない。いや、増やせる奴がいない。よって、お前らに我の闇の一部を分け与えて強化してやる」
魔族の場合、自分よりも強い魔族から闇を与えられることでもステータス類を強化することができる。ただし、与えてもらった魔族以上の強さになることはない。
サイオクの発言に対してその場にいた全員が言葉を失った。
「善は急げだ。さっさと始めるぞ」
「お待ちください」
「どうした?アゼシャン」
「我らに対し、一度で全員に闇をお与えいただくのは大丈夫なのでしょうか?そこらの雑魚どもでしたらまだしも、我らは魔将の座をいただいたもの。魔王様にも負担がかかると思うのですが」
魔将一位のアゼシャンにはその場の魔将の力がすべてわかる。その合計量に対して強化に必要な闇の量を考えるとかなりの量が必要であることを察したのだろう。
「貴様らに新たな力を与えることが目的だ。それさえ満たせれば後は貴様らが死なないように努力しとくだけの話だ」
「魔王様ができるとおっしゃるならできるのでしょう。それに、魔王様の言動の邪魔はしてはなりませんぞ。アゼシャン殿も魔王様をもっと崇めませんと」
魔王に一番といっていいほどの忠誠心を持っている魔将二位のヰレアが言った。
「二人とも、魔王様の前だ。私語は慎め」
魔将三位のハクセンの一言で二人は黙り込んだ。実績が少ないので三位の座にいるが、一年後には二位、もしかすると一位になる可能性を秘めている。
「お喋りはもういいのか?」
「一つだけ、よろしいでしょうか?」
他の四人が黙り込んでいたが、一人だけ口を開いた。魔将四位のレイジーだ。何を考えているのかもわからなければ、言動がおかしいところが多い。いや、一番魔族らしい魔族だと言われれればそれまでだ。
「レイジーか。また変なこと考えているんじゃないだろうな」
「まさか、精霊界への侵略を認めてほしいだけですよ。聖光への耐性はちゃんとできましたので」
半笑いで言った一言で、その場の空気を一瞬にして凍てつかせた。理解が追い付かな過ぎて誰も口が開けなくなった。
魔族の弱点の一つ、弱体化の原因、最悪死すらももたらす聖光に対して耐性をつけたのだという。半魔とかなら理解されても、レイジーは先祖百代遡っても純粋な魔族しかいない。
「どんな変なことをいうかと思えば、想像以上のことを言ってくれるじゃないか。いいぞ、お前の好きなようにしろ」
サイオクも少し混乱しつつも冷静に答えた。
「ありがとうございます」
「さて、まだ話したりないものはいるか」
誰も返事しなくなった。
「ないならさっさと終わらせるか」
サイオクは五人に向かって手をかざした。
サイオクの手から出てきた闇は五人に取り込まれるように入っていった。見る見るうちにそれぞれのステータスが上がっていく。
「まあ、こんなものでいいだろう。お前らも新たな能力を手に入れられたようだな」
「用も終わったみたいなんで、ゆっくり精霊界に行ってきます」
レイジーが一人出口に向かって歩き出した。
「ああ、気をつけろよ」
「はい」
「よろしいのですか?あのように好き勝手させて」
「問題ないだろう。それに、今あいつが手に入れた能力は成長させれば、我すら倒しかねない可能性を秘めているからな」
「まさか、魔王様が負けるようなことはないでしょう」
レイジーが出ていくとアゼシャンとヰレアがサイオクと話しだした。
「私も隠れた里を見つけたので行ってまいります」
「マージュ、お前はほかの四人に比べると劣るところが多い。ただでさえ六位だったころ、五位には一度も勝てなかったんだろ」
「あ、はい。ですが...」
「安心しろこの二人を吸収しろ。近くに置いておく意味もなくなったしな」
サイオクの横に立っていた二体の魔族の顔が急に青ざめた。
サイオクは何のためらいもなく体もろとも闇にしてマージュに流し込んだ。マージュのステータスはほかの魔将たちに後れを取らない程度に上昇した。
「全員どこかに行ったか」
「遅かったな」
玉座の横にある細い通路からフードを深くかぶった男がいた。
「あいつらからのところにいるんだから仕方ないだろ」
「そうだな。潜入とはいえ、本気になりすぎだろ。我を裏切るつもりじゃないだろうな」
「当たり前だろ。あいつらはいつかここに来る。さらに力をつけてな。気をつけろよ」
「まあいい、お前こそ疑われるなよ」
「ああ。じゃ、俺はそろそろ戻るぞ。早く戻らないと怪しまれるしな」
それだけ言ってフードを被った男はどこかへ行ってしまった。
『やはりあいつらはここまで来るつもりだったのか。本気で我を殺す気のようだな。少しばかり保険をかけておくか』
サイオクは常に考えている。戦いのときも、寝ている時でさえも常に何かを考えている。常に考えることで、思考回路の高速化につながる。考えが早いと戦闘での立ち回りで優位に立てることが多くなる。前世から、転生する間も、ひと時も忘れることなく常に考えていたらしい。
第3章完結!次回からは【第4章:忍びの里編】スタート!
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追記
第四章以降は投稿時間を予約投稿ではなく、書けた時点で登校するので投稿期間が今まで以上にばらつきが生じると思います。