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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第3章:王都第一学園編
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【030】授業の終わりに

「魔術師になるんだし、こんなことする必要ないだろ」


 端のほうで一人の男の子がペアの子にそんなことを言っていた。


「そんなことないよ。魔術師だって少しは剣が使えないと困るよ」


 ヒエリンが声をかけに行った。魔術師希望の子には魔術師が当たったほうがいいのかもしれない。


「いつ困るんだよ。魔術師が剣を持つわけないだろ」


「確かに剣士みたいに大きな剣は持たないけど、小刀くらいならみんな持ってるよ」


 ヒエリンはローブで隠れていて見えない腰の背面から小刀を取り出して見せた。


「どうせ使わないのに持ってる意味ないだろ。なんでもってんだよ」


「確かにあまり使わないけど使うこともあるよ。使えるようにしておかないともしもの時に困るよ」


「もしものときってなんだよ。どうせ使わないんだろ」


「使うよ。もし急に相手が接近してきたらどうする?」


「そんなの魔法でぶっ飛ばしてやるよ」


「それができる相手ならいいね。でも私たちが使う魔法は中近距離型ばっかりなんだ。相手の動きが早かったらかわすことしかできないこともあるんだよ。そうなったら近距離で攻撃できる剣が使えないといけないでしょ」


 男の子たちは何も言い返さなくなった。

 ヒエリンも小刀をしまった。


「とはいっても剣士みたいに正確性は追及しなくてもいいよ。形だけでも出来ていれば十分だからね」


 ヒエリンはそれだけ言って他のところに行ってしまった。

 男の子は何も言えず動かなくなってしまった。

 行ってることは何一つ間違ってないのだから、最後まで見届けてやれよ。

 俺はそう思いながら男の子たちのほうへ行って声をかけた。


「君たちはどうして魔術師になりたいと思ったの?」


「だっけ剣士だったら負けたら死ぬじゃん。魔術師は後ろの方で見てるから仲間が負けても逃げられると思ったから」


 冒険者が逃げ出すのは周囲に人が住んでおらず、影響が出ないことが確定してるときだけだ。

 冒険者は死力を尽くして市民を守るのが仕事だ。死ぬのを恐れずにできる仕事ではない。

 しかし、まだ四年生だ。そんなこと知っているわけがない。


「そっか。でも、魔術師だからって逃げちゃいけないときもあるんだよ。俺の知り合いだってそれを知ってから魔術師なんかやめて剣士になったやつもいたくらいだ」


 当然嘘だ。俺の知り合いにそんなことした奴なんか一人もいない。

 少しでも練習する気になれば俺はそれでいい。嘘も方便とはよく言ったものだ。


「いやだよ。僕死にたくないよ」


 半泣きで震えた声で言った。まだ十歳程度の少年には死してなお名を残している冒険者の話からした方がいいのだろうか。


「死ぬのが嫌なら鍛えるしかないよ。しっかりと鍛えぬけば、死んでも称賛される。訓練で厳かにしていたら、生きていても称えられなくなってしまうよ」


「死んだら何も残らないよ。死んだら何もかも全部なくなっちゃうんだ」


 男の子は涙を流しながら大声で言った。


「君は勇者サイクのことを知っているかな?」


「知ってるよ。一人で魔王を倒したすごい人なんでしょ。それくらいみんな知ってるよ」


「そう、初めて一人で魔王を倒した。それは事実として残されている。でも、それももう何千年以上も前の話なんだよ。それでもみんな知ってるでしょ。すごいことをした人は、その分後世に名前が残るんだ。君も頑張れば、サイクみたいに色々な人に名前を覚えられ続けるかもしれないんだよ」


「そんなの僕には無理だよ」


「無理じゃない。魔術師でも名前が残っている人は何人もいる。君もその一人になれるチャンスがあるんだよ。今からでも遅くなはい。いや、むしろ早いくらいだ。少し、頑張ってみようよ」


 男の子は黙り込んでしまった。

 少ししてから首を縦に振って頷いた。


「頑張ってみる」


 泣きすぎて声が出なかったのだろう。掠れっきた声で返事をした。


 俺は、その後は付きっ切りでその子に剣の正しい使い方を教えた。

 たまに周りを見渡していたが、他のみんながちゃんと教えて回っていた。

 ヒエリンも学生時代も基礎はしっかりとできていたから問題なさそうだ。

 教え方も十人十色だ。レイの教え方は基本に忠実だが守護者(タンカー)向けだったりした。特に問題があるわけではないが、動作が少し大きくなりがちだ。



 しばらくすると学園長が戻ってきた。


「みんなもうすぐ授業も終わる。集合してくれ」


 学生たちは木刀を片付けて集合した。


「みんな授業はしっかりできたかな?」


「楽しかった」「すごかった」「面白かった」


 などなど、学生たちは口々言って誰が何を言っているのかわからないほどだった。


「とりあえず有意義だったようで何よりだ。みんなも急に言ったのにありがとうね」


「俺はあいつがちゃんとやれてるようで安心しましたよ」


「ふふ、またそのことかね。それじゃあ、今日の授業はこれで...」


「全員伏せろ!」


 レイが急に大声を出して学生たちの頭上に跳び上がった。

 学生たちは一目散に頭を隠すようにして蹲った。


「‘巨大障壁(ビーストウォール)’」


 レイは上空から飛んできていた運距離攻撃魔法を防いだ。

 他のメンバーは誰も気付いていなかった。レイは俺が攻撃の魔力を察知するよりも先に気付き、そして行動した。

作者コロナ感染のためしばらく投稿できません。

治り次第続きを書いていきますので、しばらくお待ちいただけると幸いです。

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