【023】予想外の成長
「まだ終わってないだろ」
レイは不機嫌そうに言った。どちらかが倒れるまでやると日が暮れてしまう。
他の奴らも特訓させるためにに実力がある程度明確にする必要がある。
「一通り全員終わってからな。時間もないし」
「分かったよ。さっさと終わらせろよ」
レイはむしゃくしゃした表情でみんなのところに戻って行った。
「次はだれがする?それともみんなまとめてするか?」
「じゃあたのもっかな」
そう言ってセイヤは間合いを詰めてきた。俺は後ろに跳んでよけようとした。
「逃がさない」
俺の後ろにマリネがいた。上位の賢者二人相手か。訓練でも戦いたくない組み合わせだな。
「お前ら二人でやるか。面白そうじゃん」
俺はセイヤの頭上を通ってセイヤをよけた。
「なんで上によけた」
マリネが空中にいる間にマリネが近づいいてきた。
俺はマリネが振るった剣を祝福の聖剣で弾いた。
「その剣、聖剣じゃないな。かといって普通の剣でもない」
「そうだよ。この剣は我が家系に伝わる伝説の秘宝、そう簡単に傷つけられないよ」
別に壊そうと思っているわけではないが、力量差はかなり明確なはずなのに俺にしびれが伝わってきた。学園時代はそんなことなかったから、幼少期に親父に鍛えられてた頃以来だな。力量差を覆すほどの強度な剣。
「まさかそれ...」
「訓練に集中しようよ」
訓練も何もまだ何するかの内容を決めるために遊んでるだけなんだけどな。みんな的にはこれが訓練だと思ってるのか。ならもうちょっと遊んでみるか。
俺はマリネの振るった剣を余裕でかわした。
「じゃあ終わらせるか」
俺は剣先がマリネの首に触れないぎりぎりのところまで近づけた。
「はい、俺の勝ち。油断した?」
「いや、少しくらい加減してよ」
「もともと今の実力が知りかっただけで白黒つけたいわけじゃなかったんけどな」
俺はそう言って剣を二本とも鞘にしまった。
昔から剣は一本しか使ってこなかった。二本使う練習もしておいたほうがいいのかもしれないな。それに、あの体がきしむような痛みはもうしたくない。
封魔剣と造闇漆剣を同時に使うとなぜか全身がきしむような痛みがする。あれだけはどうにかしないといけないな。
「よし、お前らの実力は大体わかった。マリネとセイヤはあの沼の上を走ってこい。二人とも動きが鈍くなりやすい。あとついでに持久力もつくしいいだろ。レイはあとで俺と模擬戦な」
マリネとセイヤは沼のあるほうへ歩いて行った。レイは動かずに待っている。
「あとは五人か。まとめて終わらせるか。全員でかかって来い」
俺はそう言って封魔剣を取り出した。
レインたちは顔を見合わせて黙ってうなずいた。
「いくぞ」
「「「おう!」」」
レインの掛け声と同時に、レイン、フレア、ウィンディー、ストームが俺の四方から斬りかかってきた。
俺は上に跳んでよけようとした。
「‘魔法障壁’。逃がさないよ」
俺はヒエリンが張った‘魔法障壁’にぶつかって地面にそのまま落ちてしまった。
「やるじゃん。でも、、、」
俺は‘魔法障壁’を打ち壊して上に跳んだ。
「もうちょっと遅くてもよかったなじゃないか。焦りすぎもよくないぞ」
俺はそのままヒエリンに距離を詰めた。
「はい、もう終わりかな」
俺は剣をしまった。
「ヒエリン、お前は近接が苦手なら接近されるな。魔力を終通させる練習でもするか。とりあえず自分で行使できる限界まで魔力をその杖に流し込んでみろ」
ヒエリンは目を閉じて身の丈ほどの両手で持って魔力を流し込んだ。
少ししてヒエリンは目を開けた。杖を掲げるようにしてため込んだ魔力で火球を作った。ヒエリンも含めてその場にいた全人が驚いた。
「ワコガ君、これどうしたいい?」
上に打ち上げても空中で出爆発したらこの前の比にならない火災が起こるだろう。
「全員下がって。ヒエリン、ちょっと苦しいかもしれないけど我慢してくれ。すぐに治してやるから」
「下がるってどれくらい」
レインは下がりながら聞いてきた。できることなら俺が見えなくなるくらいまでと言いたいが、そこまで離れられると訓練できないからな。
「自分が安全だと思う場所まで下がっとけ。来い、魔剣〈造闇漆剣〉」
全員一気に下がった。ヒエリンは顔を隠すように丸まった。
俺はダークネスブレードから出てくる闇をすべてヒエリンが作り出した火球に混ぜ込んだ。
「ヒエリン、好きなタイミングで俺に向かって放て。あと放ったらすぐに離れろよ」
ヒエリンは片目で俺のほうを覗き込むようにして放った。
闇の混ざった火球は俺のほうに向かって真っすぐに飛んできた。
「上出来だ。闇なる捕食」
闇なる捕食は対象物が暗黒属性を含んでいる場合に取り込むことができる捕食系スキルだ。闇を混ぜ込むことで物理的に暗黒属性を付与させたのだ。
「‘聖なる吸収’。ヒエリン大丈夫か」
俺は造闇漆剣をしまってヒエリンに近寄って行った。
「う、うん。なんとか」
ヒエリンは少し苦しそうに返事した。
人間は直接闇を浴びると危険ってこういうことなのか。確かに少し近くを通っただけでこの症状が出るなら仕納得だ。いや、俺が異常すぎるのか。
「悪かったな。気分がよくなったら声をかけてくれ。それまでは休んでろ」
「ごめんね。ありがとう」
「無理だけはするなよ」
俺はそう言って立ち上がった。
「お前ら下がりすぎだろ。さっそと戻って来い。もう終わったぞ」
レインたちがかなり遠くまで逃げていたので俺は呼び戻した。