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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第1章:帰還編
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【002】小さな約束、大きな未来

〈〉:固有名

 俺が目を覚ましたのは夜も更けた木々の隙間から満天の星空が見えるほどに天気が良い。冒険班(パーティー)は火を取り囲むようにして仮眠をとっていて、一人ずつ交代で見張りをしているらしい。俺が目覚めた時には俺がきたときに防戦していた守護者(タンカー)が起きていた。


「あ、起きた?君すごいね、一人で竜を討伐してしまうなんて。早くギルドに報告したほうがいいんじゃない?」


「いや、俺はあまり目立ちたくないんだけどな、、、よし、」


 俺は指を鳴らした。魔法を完全に無詠唱化するには魔法陣を展開するか、魔法の状態を鮮明にイメージする必要がある。戦闘中は基本的に魔法陣を展開するほうが簡単にできる。鮮明なイメージはより正確にコントロールができるが、発動までに多少時間がかかるので急ぎでない場合はこちらのほうを使うことが多い。そもそも無詠唱にすること自体出来る冒険者は少ない。


 俺は何の躊躇いもなく竜を燃やした。その熱と強い光で冒険班(パーティー)メンバー全員が目を覚ました。全員竜が燃えているのを見て驚愕している。


「何してんだよ、早く消せよ」


「でもそんな大量の水は、俺達の力だけじゃどうしようもないぞ」


 口々に火を消そうと模索する会話が聞こえる。気持ち程度の清水系魔法を使っているようだが顔は真剣だ。俺が燃やすのに使ったのは‘紅獄炎(バイレンヤ—)’と‘碧色炎(グレインブー)’を結合させた結合魔法‘獄炎碧炎(バーニング―ブ)’だ。‘碧色炎(グレインブー)’は火炎系魔法の中で最も温度が高い魔法の一つだ。結局消せずに竜は灰になってしまった。


 冒険班(パーティー)メンバーから殺気を感じる。闘気(けはい)を探る感じ全員を相手しても大丈夫そうだ。だが、負の感情を抱くものはそれに見合った力を得る場合がある。相手がどんなスキルを持っているのかわからない状態で相手をするのはよくない。それも知恵がある程度あるやつは警戒すべきだ。

 冒険班(パーティー)メンバーの表情が固まった。同時に背後から強い闘気(けはい)を感じた。俺も背筋が凍りかけた。振り返ってみると守護者(タンカー)の男がいた。こいつ闘気(けはい)を隠せるほどの実力者か。この冒険班(パーティー)メンバー全員がそれほどの実力があるのなら俺一人で互角かそれ以上だ。でもこのタンカーを倒すのには一苦労しそうだ。


「君が噂の学園トップの個人冒険者か」


 闘気(けはい)を抑えて守護者(タンカー)の男は俺に声をかけてきた。


「だったらなんだ、俺は冒険班(パーティー)に加入するつもりはないぞ」


 俺は周囲を警戒しながら返事をした。守護者(タンカー)の男は鼻で笑った。


「確かに君が冒険班(パーティー)に入ってくれると百人力なんだけど、やっぱり無理か。噂通りの人で良かったよ。なんか安心したよ」


 確かにギルド会館で冒険者登録した後その場にいたほとんどの冒険班(パーティー)から声はかけられたが、全部断った。まさかそんな噂になっていたとはな。


冒険班(パーティー)組むと自分のステータスアップにならないだろ。俺はさらなる高みを目指して冒険者になったんだ。最終的には冒険班(パーティー)を組むつもりだが、まだその時じゃない」


 それを聞いた冒険班(パーティー)メンバーは驚いたような表情を浮かべた。確かに他人に冒険班(パーティー)を組むことを話したのは今回が初めてだ。冒険班(パーティー)に絶対的加入しない印象を持っているのならそんな反応になるのだろう。人間予想外のことには対応できないものだしな。


「そっか、そう言えばまだ自己紹介してなかったね。僕はレイ、レイ・ミカサだ。一応この冒険班(パーティー)共戦の仲(レイインフィニティ―)〉のリーダーで守護者(タンカー)をしている」


 自己紹介か。確かにしておいたほうがいいのか。まあ、俺はあまりする意味ないだろうけど一応しとくか。


「ワコガ・リューだ。俺に弓引くやつは問答無用で殺しにかかるからな」


 その後〈共戦の仲(レイインフィニティ―)〉のメンバーも自己紹介をした。


 自己紹介が一通り終わると俺はレイと二人で話をした。その間他のメンバーは周囲の魔物の討伐に行った。


「ワコガ、お前何がしたいんだ?冒険班(パーティー)を組むにはもう十分すぎるぐらいの力はあるだろ?」


「確かに普通の考え方ならそうなのかもな。でも、俺の理想にはまだまだ全然届かない。俺は魔族を殲滅する」


 レイは驚きが隠せないほどに表情が固まった。


「ゑ、でも今の魔王は過去に勇者を二人殺してるんだぞ。今の勇者もこの前戦って何とか生き延びたものの深手を負ってもう戦えるような体じゃないんだぞ。魔族の殲滅にはまず魔王を倒さないといけないんだぞ」


「知ってるよ。でも、俺の原動力は魔族を撃つことなんだ。そのために今こうして冒険者になったんだ。それに、今の勇者も、魔王に負けた過去の勇者もみんな実力不足の穴埋めで入ったに過ぎない。勇者ってのは本来、称号の進化の先にあるものなんだ。だが、世界は勇者がいないことを強く嫌がる。人間と魔族の間に大きな差ができてしまうからな。真なる勇者は魔王を撃つほどの力を得る、って伝説もある。俺は真なる勇者になって見せる」


 初めてだ、俺が自分の夢を人に話したのは。まあ、勇者になるとかは子供の戯けごとにしか聞こえないだろうけど、俺は勇者になるためにここまできたってのは本当のことだ。それを笑われるのが怖くて今まで話してこなかったが、レイにはなぜかすんなりと言えた。


「やっぱ天才の考えることは違うな。俺にはそんなこと無理だよ」


 レイは感動したような口調で答えた。そのおかげか少し勇気をもらえた気がした。


「俺は絶対に勇者になってまたお前に会いに来るからな。その時は、一緒に戦おうぜ」


「うん、待ってるよ」


 レイと俺は笑いながら拳を合わせて、俺は一人で旅に出た。

新出用語

・ギルド:冒険者や冒険班(パーティー)の総括を担う。

・魔族:人間と犬猿の仲で数千年以上争いが絶えず続いている。

・勇者

 ・名前だけの勇者:その代の勇者が死んだときに世界が認めたものが勇者になる。

 ・真なる勇者:その代の勇者が死んだとき、条件を満たした者がなる勇者。

・魔王:魔族を統括する王。

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