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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第2章:サイトタウン編
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【014】届かぬ刃

「ワ、ワコガ、お前確かこの街と反対方向に向かったんじゃ」


「ああ、色々あって帰ってきたらこのありさまでよ。とリあえず、あいつが一番強いってのであってる?」


『何があったらこんなすぐに引き返すことになるんだよ。まあいいか、今はそんなこと聞いてる場合じゃないしな』


「まあ、俺らが把握できてる範囲ではな」


 レインたちが倒した魔将、そしてここに来るまでに見かけたクロトと一緒に倒れていた魔族。クロトと一緒にいたやつのほうが強そうだったたな。そいつよりも強い闘気(けはい)がする。あいつらを避難誘導にまわして正解だったかもな。いたら確実に死んでいただろうし。


「よし、分かった。レイ、お前はセイヤと一緒にいろ。そいつ立つのでも結構限界なんだろ。こいつの相手位、俺一人で十分だ」


 俺は腰から〈祝福の聖剣(ハーピーブレード)〉を取り出した。


「お前一人で我の相手をするだと。笑わせるな」


「そうだ。いくらお前が強くても魔将相手に勝てるわけが...」


「勝てるさ。魔王直属十大魔将第五位〈マゼスチャン・リ・レバインド〉、俺の‘解析鑑定’でここまでわかるんだ。勝敗は決まったも当然だろう」


 ‘解析鑑定’は自分より圧倒的に強いものの解析は出来ない。俺にはマゼスチャンのほぼすべての情報が見えている。つまり、マゼスチャンは俺程度の強さか、俺より弱い程度の力というわけだ。


「なるほど、少しは楽しめそうな相手が来たではないか」


「楽しむ余裕なんてお前にはないと思うけどな。神聖魔法‘聖光斬撃ライオネットクラッシュ’」


 俺の剣はマゼスチャンの首に触れた場所で止まった。半分以上斬れるはずだったが、思ったよりといつの首が硬かった。

 俺はすぐに後ずさりして距離を取った。


「おっかしいな。今ので結構切れると思ったんだけどな」


「神聖魔法では無理だ。そいつは高密度の闇の壁を作り出す」


 マリネが後ろから声をかけてきた。


『高密度の闇か。聖剣と神聖魔法を防ぐには最適かもしれないな。でも感触的に結界は中に入っていないから万能ってわけではないか』


「マリネ、お前もしかしてこいつに吹き飛ばされたのか」


「ああ、ちょっと取り乱しすぎた」


 セイヤが安心そうな表情をしている。よっぽど取り乱していたのだろう。

 マリネは忍びの一族だったはずだが、それでもかわしきれないのか。この冒険班(パーティー)は全員賢者のはずだ。戦える人が少ないとはいえ、賢者が三人死ぬほどの災害は前例がない。


「マリネ、悪いけど避難誘導のほうにまわってくれ。セイヤは動けそうにないからこの場でレイに守らせる。こいつの相手は俺一人のほうが都合がいい」


「だめ。それ聖剣でしょ。さっきも言った闇の壁...」


「それなら大丈夫。闇は俺の味方になる。お前がいると俺が動けなくなるんだ」


「分かった。そのかわり、絶対にあいつを殺せよ」


「ああ」


 マリネはすぐに燃え盛る炎の中に飛び出して行った。

 俺は〈祝福の聖剣(ハーピーブレード)〉を鞘にしまった。


「‘魔法障壁(マジックウォール)’。レイ、絶対にその中から出るなよ。このあたりにまだ避難してない人はいなさそうだな。よし、こい、魔剣〈造闇漆剣(ダーネックブレード)〉」


 俺がそう言うと、俺の陰から魔剣が出てきた。親父からもらった魔剣だ。

 この魔剣の特性は‘闇放出(ダークネスケイム)’、剣からは常に闇が生成されている。闇は普通の人間には猛毒になりうる。そのため、近くに人がいると扱いにくいのだ。

 魔剣桁出た闇が紐のようになって俺の腕に巻き付いてきた。周りに拡散するよりかはマシだろうと思い、俺は何もしなかった。


「さっさ終わらせてやるよ。詠唱魔法、[深淵ヨリ舞イ上ラン、漆黒之闇之恩恵ヲ授カラム‘深淵暗黒極(ボークダークネス)’]」


 俺の攻撃はマゼスチャンにかわされた。いや、正確に言うと、俺の剣先で済櫛首を斬りつけることはできた。しかしほとんどかすめた程度でしかなかった。

 マゼスチャンは防ぐ素振りすら見せずに避けた。

 魔剣はもともと闇から生成されているので闇の壁には一切干渉せず攻撃は届くが、買わされては全く意味がない。だが、これで少しはマゼスチャンの防御が薄くなったのは確かだろう。


「なぜ人間が魔剣を持っている。魔剣は魔族にしか使えぬ代物のはず」


「そんなことどうでもいだろ。俺は昔から闇には耐性があるんでな」


 俺は続けざまに斬りつけようとしたがまたかわされる。俺は絶えずマゼスチャンに剣を振るい続けた。しかし、かする程度ですぐに回復されてしまう。マゼスチャンは空中に逃げていくが、俺は疾風系魔法を駆使してどこまでも追いかけ続けた。

 他の人からは二人の動きについていけず二人の姿がほぼ確認できない。



「あれ、こっちのほうに行ったはずなんだけどな。あ、君たちこのあたりに新人の冒険者を見かけなかったかい?魔族と戦うって言ってこっちのほうに来たと思うんだけど」


 レイは急に話しかけられて少し驚いた。ギルドからの貸し出し武器を持っている。


「ああ、あいつらか。あいつらのほうなら無事に解決したらしいぞ。それよりも今はこっちのほうがヤバい気がするな」


 レイはそういうと、少し上を見上げた。


「えっと、何も見えないのですが」


「その剣はなんだ?ギルドのらしいけど」


「え、ああ、この剣は純聖剣〈封魔剣(チェッダーソード)〉です。この剣は闇を吸収する能力も兼ねもっているらしいです」


『純聖剣か、あいつならどうにかできるかもしれないな』


「ワコガ、純聖剣でどうにかできそうか。ある程度の闇は吸収できるそうだが」


 レイは叫んだ。俺がいる場所が分かっていないようで首を動かしながら叫んでいる。

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