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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第2章:サイトタウン編
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【013】失われ逝く賢者

「セイヤ、そっちは任せたぞ」


「ああ、任せとけ」


 それだけ言ってレイはファービーを間合いの内側にとらえる距離まで一気に詰めた。


「レイがいないのにマゼスチャンに勝てるわけないじゃん」


「カナタ、怖気づいていたら死ぬぞ。死にたくないなら死ぬ気で戦え」


 カナタは頭を抱えておどおどしている。


「そんなこと言ったって、あいつの強さお前も知ってんだろ。なんでそんな真正面からの殴り合いができんだよ。そんなことしても死んじゃうだけだろ」


「こういう時に死ねる覚悟がない奴が賢者を、いや、冒険者を名乗るんじゃねえ」


 セイヤはカナタに怒鳴りつけた。


「お喋りはもういいか?」


 マゼスチャンはカナタの背中に回って言った。


「ゴフッッ、、、グ、、、ア゛、、、」


 カナタは血を噴き出した。カナタの腹部にはマゼスチャンの腕が貫通している。

 マゼスチャンが腕を引き抜くと、カナタは死んだかのように動かず倒れた。


「お前許さない。仲間死なせた」


 マリネが珍しく感情が表に出ている。普段はこれでもかと全てにおいて無関心な表情をしていた。


「マリネ、落ち着け。あの時のことを忘れたのか」


 マリネにはセイヤの叫びが聞こえていないのだろう。マリネの表情はマスクで分かりにくいが、それでもはっきりと口角が上がっているのが分かる。目は大きく見開いている。


「くそ、聞こえてないか。仕方ない、ハクジ、マリネに拘束してくれ。あれ(・・)が暴れると被害が広がるだけだ」


『マリネが暴走すると俺達じゃ止められない。今はこうするほか止める術がない』


「わ、わかった。‘多重拘束(ファインボード)’‘重圧増幅(グラビティ―アップ)’」


 ハクジは‘多重拘束(ファインボード)’でマリネの行動範囲を二、三メートル四方に絞り込み、‘重圧増幅(グラビティ―アップ)’でその範囲内の重力を何倍にも増幅させた。


『これで無理なら俺には止めきれない』


 セイヤはその間にマゼスチャンを間合いの内側にはいる距離まで移動した。


「俺たちの仲間を殺したこと後悔させてやるよ。‘聖光斬撃ライオネットクラッシュ’」


 セイヤの剣はマゼスチャンの首に当たりすらしなかった。

 マゼスチャンは剣と首の間に高密度で大量の闇を集めている。高密度の闇は神聖魔法を防ぐのには最強の盾にすらなりうる。


「なっ」


「指示を出しながら間合いを詰めたことはほめてやろう。それに聖剣に神聖魔法とは考えたものだ。我ら魔族キラーの攻撃だな。まあ、この程度の闇も浄化でき泣いてどのものでは話にならんがな」


 セイヤは殴り飛ばされた。

 その瞬間、マゼスチャンの両腕が宙を舞った。


「警戒してなかったとはいえ我の腕を二本とも斬るとはな。あの拘束からこんなに早く出てくるとは思いもしなかったぞ」


 マゼスチャンの視界の少し下にマリネがいた。ハクジの拘束は一瞬にして破られた。


「詠唱魔法、[大イナル空之彼方之破滅之力ヲ今ココニ‘大気滅殺空刃(エアリアルブレード)’]。仲間の敵、絶対に晴らす」


 マリネの剣はマゼスチャンの首を少し斬りつけた。


「なぜ闇の壁をすり抜ける」


「お前が知る前に殺してやるよ」


 マリネが使っている剣は聖剣ではない。聖剣でなく、神聖魔法でなかったので闇の壁で止まらなかったのだ。マゼスチャンはマリネを蹴り飛ばした。

 マゼスチャンの首の傷と腕は一瞬で修復された。


「あいつらの前に先にお前からだ」


 マゼスチャンはハクジのほうに歩きだした。


「‘重圧増幅(グラビティ―アップ)’」


 ハクジの魔法でマゼスチャンの動きは少し遅くなったが、それでも止まらずに歩いている。


「なるほど、確かにこれはすぐに抜け出せるな」


 マゼスチャンは一気にハクジの前まで距離を詰めた。


「お前の魔法にはスキが多すぎる。よくそれで賢者になれたな」


 マゼスチャンは指でハクジの額に穴をあけた。


「みんな大丈夫か、、、って、遅かったか」


 レイはカナタの死体とマゼスチャンの指が突き刺さっているハクジを見て絶望した。

 クロトを護り切れなかった思いと二人のそばにいてやれなかった思いとでレイは今までないほどに動揺している。


「お前、まさかもうファービーを」


「ああ、倒しよ。すぐにお前も殺してやるよ。俺の仲間をこんな目に合わせやがって、絶対に許さないぞ」


「ああ、そうだな。俺も死にかけた分の恨みは晴らさせてもらうぜ」


 セイヤがふらつきながらも帰ってきた。なんとか衝撃を和らげてダメージは最低限に納めたのだろうが、それでもかなりのダメージを受けている。


「お前、その怪我でまだ戦うつもりか。無理せずに下がっていても...」


「そんなことしたらお前が死ぬだろ。これでもいないよりかはマシだろ」


「戦いたいなら好きにしていいが、絶対に死ぬなよ。これ以上、仲間が死に逝くさまを見たくない」


「死にたくないなら、さっきの新人のほうに行ってるよ」


「あいつらが生きてる可能性なんか考えたくないな」


 レイもセイヤもレインたちはおそらく死んでしまったものだと考えている。自分たちでさえこれだけ苦戦している相手を、新人が倒せるとは考えられないのだろう。


「レインたちなら全員生きてるぞ。ちゃっかり‘魔将殺’の称号ももらってな」


「「「はぁ?」」」


 俺が声をかけるとレイとセイヤ、それにマゼスチャンも反応した。三人とも信じられないといった表情だ。

やっと時系列が揃ってきた。

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