【011】魔将の末端の強さ
ドカーーンーーー
二人の動きは速すぎて誰の目にも追えなかった。
だが、防壁門の辺りから衝撃音が聞こえてきた。
四人は一目散に音のした方へ走り出した。
「レイン、大丈夫か」
周囲は炎は黒煙や土煙であまり周囲を見渡せない。うっすらと人影が見えた。四人は人影の見えるほうへ近寄ってみた。はっきりと様子が見えた時、四人は一瞬動けなくなった。
レインの剣はクレイの釘を半分程度まで斬っていたが、左腕は見てわかるほどに大怪我を負っている。肩が後ろに曲がり、腕にはヒビが入っていて、血が流れだしている。そんな左手でクレアの右手を掴んでる。
「詠唱魔法、[深淵之業火ヨ、我ガ身ニ宿ラム‘究極轟業火’]。みんなも動け。レインが作ったこのチャンスを逃すな」
フレアが黒炎をまとった剣でレインの剣の反対側からクレアの首に斬りかかった。だが、首の皮程しか切れてない。
「ヒエリンさんは僕らに強化魔法を。僕とストーム君の二人で仕留め切って見せるよ」
「任せて。詠唱魔法、[我望ム者ニ大イナル力之加護アラム‘無限超化’]」
ヒエリンの強化魔法のおかげか、二人の剣が気持ちばかり進んだ。
「ストーム君は僕の攻撃があいつに当たったらフレア君の剣を推すようにしてほしい。僕が剣を一直線に並べる。任せたよ」
「任せとけ。多少ズレててもどうにかしてやる」
「うん、いくよ。詠唱魔法、[大イナル大地ヨリ吹キ荒レル風ヨ、我ニ分ケタモウ‘暴風疾風’]」
ウィンディーの剣はレインとフレアの間に突き刺さって、クレアの首を剣先が少し飛び出すほど貫通した。
「詠唱魔法、[雄大ナル大地之激震ヨ我ガ身ニ宿ラム‘激震絶壁’]」
ストームの剣は三人の剣を押し出し、クレアの首を完全に切り落とした。
“魔族の絶命を確認。ネイムド〈レイン・サメ〉〈フレア・エン〉〈ウィンディー・フウ〉〈ストーム・ガン〉〈ヒエリン・カイ〉が称号‘魔族殺’‘魔将殺’を獲得。各種ステータスが上昇しました。”
レインはもちろん、大技を使ったフレア、ウィンディー、ストームも倒れた。レインは意識がもうろうとしているが、他の三人は疲労で立てないような感じだ。
フレアは火炎系魔法最上級魔法‘究極轟業火’を、ウィンディーは疾風系魔脳最上級魔法‘暴風疾風’を、ストームは大地系魔法最上級魔法‘激震絶壁’を使った。
しかもそれをある程度の時間、発動状態を維持していた。
魔法は維持するだけでも魔力や体力を消耗する。大技であればあるほどその消費量は多い。
「みんな大丈夫?」
ヒエリンがみんなの元に駆け寄って心配そうに声をかけた。
「俺達の心配よりもレインに回復魔法を使ってやれ。そいつが一番疲れてるはずだ」
「う、うん。回復魔法‘超回復’」
ストームに言われ、ヒエリンはすぐにレインに回復魔法を使った。
「お前も魔法使いすぎだ。回復魔法‘簡易回復’」
フレアがヒエリンに下位の回復魔法を使った。
「お前ら全員がヤバいんだろ。お前らも避難所に行って休んどけ」
四人はその声に驚いた。
「ワ、ワコガ、、、お前、帰るんじゃ、、なかったのか、?」
レインがもうろうとしながらも聞いてきた。
「そんなことより、お前らの回復だ。詠唱魔法、[完全ナル回復ヲコノ者ドモニ与エム‘無限回復’]」
俺の魔法で五人の魔力やけがを回復させた。
「ワコガ、もう戻ってくるって何があったんだよ」
「それより、お前ら五人がかりで倒したこの魔族は何だ?」
こいつらに行っても、どうしようもないので俺は話をすり変え続けた。
「魔王直属十大魔将とか言ってたっけな」
「他の二体はこいつよりも強そうな感じだったよな」
「おい、こいつよりも強いのが二体も来ているのか?」
「早くいかないと、賢者の皆さんが」
ヒエリンが戻ろうとした。
「待て、お前らは避難誘導に回れ。俺一人で行く。お前らがいても足手まといにしかならない」
俺は断言した。正直今倒した魔族をどれだけ解析しても、魔王直属の配下になれるほどの強さを感じない。
「足手まといって、そんなこと...」
「そんなことしかないね。賢者から離れ場所で戦わされてるのが何よりの証拠だ。他の二体が強すぎるからお前らを巻き込ませないための...」
「違うよ。離れたのはレイン君がこいつと正面衝突してここまで飛ばしたからだよ」
全員の様子を見る感じ嘘ではないようだ。
「だとしてもだ。お前らの肉体は一度限界を超えた。アドレナリンで動くような奴らは戦場にはいらない。自分の限界をしっかりと把握しろ。動けるからじゃない、限界が近くないから戦場に行くんだ。冒険者が死んだら市民を守る人が減るだけだ。それをよく考えて動け」
「お前も俺らと同期だろ。なんでそんな上からものを話すんだよ。俺たちは‘魔将殺’の称号を持ってるんだぞ」
「‘魔将殺’か、それでも冒険者なんだろ。一応言っとくぞ。俺は‘賢者’を超えた称号を持っているからな。お前らとは格が違うんだよ」
俺はヒエリンが行こうとした方向に行った。
五人には俺が動き出す素振りすら見えていなかった。
〈ワコガ・リュー〉戻ってきた。と思ったら次回はいないところから書き始めないと、、、。




