愛されたがり
大事にしたいのに、大事にしたいから、僕は君に尽くしてしまうんだ。過大とも言えるような愛情が溢れて止まない。
君の人生を狂わせるのが僕であるなら、それもいいかなって。ずっと、ずっと、大切にしたいと思っている。
求められるならば、僕が君を満たしてあげよう、心も、体も。寂しくないように抱き締めてあげる。不安にならないように求めてあげる。
誰かに愛されたいと願うなら、君の全てを僕が愛してあげる。わからないことは教えるよ。君の嬉しそうな声も、態度も、僕が創ったんだと思ったら、とても誇らしくなるんだ。そして、嬉しくなる。もっと楽しんで欲しいと、求めてほしいと。君が求めるものを与えられるのは、僕しかいないと錯覚するくらい。
たくさん、たくさん、愛してあげる。
だから、僕のことを愛して。好きになって。もっと求めて。僕という個人を、僕という存在を。受容して欲しい。需要して欲しいんだ。
性はとても素直に互いを求める行為。本能のままに、欲望のままに、満たされた気分になる。
しかし、性欲は虚像にも等しい。
まるで麻薬、飼い慣らされたスモーカー、次を求めてしまうのだ。永遠に満たされることのない、満ち足りることのない。
それでも違えようのない、愛を満たす行為。それにすぎない。
僕は知りながら君に与える。なにも知らない君に愛を与える。僕が求めるから。満ちることがないと知りながら、欲する僕を、醜くも辞めることのできない僕の欲望を。
共に与え合おう。求め合おう。一緒なら、永遠に続けることができるから。
互いに依存し合うことで僕たちの愛は完成する。他の誰でもない。僕が君の大切な人。
だから、僕は君を愛し続けるよ。
『愛されたがり』
───またの名を、共依存。
「誰でもいい。ただ私は私を愛してくれる人が欲しかった。貴方がそこにいた。ただ、それだけ」
君の心の声が。聞こえてくるはずのない声が。
「私はただ、側に居てくれる人が欲しい。それが貴方でも、別の人でも。私は、構わない」
運命を分ける。
僕はまた、涙を流す。悲しいとか、悔しいとか、そういう意味ではなく。
苦しいけれど、もう君は“僕”のことを見てくれないんだね。
「さようなら、ありがとう」
愛されたがりな君は、君は。どうしていつも僕の前から姿を消すのだろう。
僕はずっと“君”を求めているのに。
愛されたがりな君を満たすのは、僕だ。そんな僕は依りすがるように、君の姿を探しに行く。寂しがりな君の姿を、僕は、見つける。
「好きだよ」
心が泣いている、君の姿に。僕はこの欲望をぶらさげて、引き寄せられる。