幕間 『十三人の傭兵団』
ちょっとまだ決まっていないのですが、もしかすると五章はここから先、部分的に、今までと違う視点?で描く可能性もあります。
今後もし変な感じになっても許してください。
落ち葉や雑草が、軽快に連鎖して踏みしめられていく音。
深夜のバーク大森林に木霊していく。
「ふむ……」
漂白されたような白い髪に、白い上着。機械の右手。黒いアタッシュケース。
『カラス』――彼は火が消された焚き火の跡を、通り過ぎた。
眉間に鎌が刺さった死体。
喉にナイフが突き立てられた死体。
喉を裂かれた死体。
歩きながら見下ろした彼らの表情は、惨たらしく殺されたとは思えないほどに『普通』だった。
苦悶や苦痛が感じ取れない。要は、あまりにもスマートに殺された。気づいた時には殺されていた。そんなところだろうか。
こんなものを見させられて『カラス』が感じることは――
「確かに、見事であるな」
こけた頬を裂くように、彼の口角は少しだけ上がった。
独り言のように見えるだろう。しかし違う。彼は一人ではなかった。
気配を感じる。
十三人、彼の周りを囲んでいるのがわかる。
「だが残念……我輩には通用しない、姿を現すが良い。契約は成立だ」
「…………」
完全に『カラス』にバレていると悟り、黒い服の者が一人、茂みから現れる。
フードで顔を隠しているものの、『カラス』と相対した。
「しっかりと実力を見せてくれたな……『十三人の傭兵団』よ」
「…………」
「噂には聞いたことがあったが、まさかこのような荒廃した世界でもまだ同様の稼業を続けていたとは。感心する」
「…………」
「……本当に『十三人』で全員か?」
「…………」
「まぁ良い」
『十三人の傭兵団』という妙な名前が、ただのチーム名という可能性もある。しかし今の気配の数としては恐らく本当に十三人だ。
――『カラス』が彼らと契約したかったことは、もちろん、今までの繰り返し。
だが『エドワーズ作業場』も『エムナス・ファトマ』も、ことごとく返り討ちにされてしまったことから『カラス』は疑心暗鬼になっていた。
法外な報酬を提示された『十三人の傭兵団』はどうにか契約したいと言ってきた。ならばと『カラス』は、
『実力を見せてもらおう』
と条件を出し――あの三人の生存者の殺戮へと話は繋がった。
彼らは完全にとばっちりだったわけだが、殺すのに手頃だったから仕方が無い。
『カラス』は鷹揚に頷き、
「流石の我輩も満足がいった。お主らは真に戦闘のプロ集団と見える」
「…………」
「では、頼んだぞ?」
今、相対していた傭兵と正面からすれ違い、背中越しに――忠告をする。
「ホープ・トーレスは簡単なターゲットではない。侮ると、足元をすくわれるだろう」
「…………」
「共に世界を救おう。『十三人の傭兵団』よ」
依頼するのは『赤い目』を持つホープの生け捕り。
邪魔をしてくるホープの仲間たちは、容赦なく殺して良し。
――こうして、ホープたち生存者グループの死闘が始まっていくのだった。




