第204話 『シュガア編:エピローグ』
※一番最後のところで大事なセリフを入れ忘れてました…追加しました。
『もう行くんだな? レイくん』
『ええ。メロンだっているし、あんまり長いと仲間たちも心配すると思うから』
『そうか……』
『どうかしたの、シュガア?』
『いや一つ……君に言おうかどうか、迷っていたことがあってな……』
『……言って』
『俺も言いたいのは山々なんだが、これは君の今後の人生を左右するかもと……』
『いいから言って!』
『な……』
『あんたの言うことなら聞きたいし、あたし信じたいの!』
――――ある町にある、バーのカウンター席。
営業していた頃は当然に客が座っていた側の席で、マスターである老いた男、シュガアは酒を飲んでいた。
レイと、メロン。
偶然に出会った二人の少女と一緒に飲む酒は、今までに感じたこともないほどに美味だった。
「……何をやってるんだ、俺は……また夜になってしまったじゃないか……」
ずーっと飲んでいる。あの二人と別れた後も。
世界が崩壊し、このバーの営業もクソもなくなってしまってから、一番高級で美味な酒は封印していた。
でも、彼女らと一緒なら、飲めた。飲む勇気がようやく出た。
「いつまでも、こんな所にいても……しょうがないんだ。自分で決めたことだろう……!」
ゴトン、と酒のボトルをカウンターに置く。
「レイくんだって『勇気』のある決断をしていたじゃないか……誰でもなく、この俺の助言で……!」
◇ ◇ ◇
店の中から出入口の所まで、シュガアはわざと酒をぶち撒けながら歩いてきた。
自分は店の外に出て、ボトルの中身がなくなるまで店の中に酒を垂れ流し続ける。
「世話になったよ。ここは、紛れもなく俺の家」
そうは言いながらも、シュガアはサスペンダーを整えて、ポケットからマッチ箱を取り出す。
棒に火をつけ、
「だが……お別れだ」
店内へ投げ込む。
大火が、一瞬にして広がる。夜闇を切り裂くほどに、それは煌めく。
背を向けてシュガアが歩き出す。
大量の酒に引火したのだろう、店から爆発が。さらに勢いを増して炎上し、周囲のスケルトンたちが群がっていく。
後ろでスケルトンたちが炎に突っ込んで焼け死んでいく中、シュガアはひたすらに歩き続ける――
『レイくん。君の想い人は……『魔導鬼』について否定はしなかったのだろう』
『……!』
『メロンくんもそうだね。君はまだよく知らないかもしれないが、彼女は素晴らしい人間だ』
『…………』
『その、グループの他の仲間たちも……きっと良い人たちだ。話してみると良い。隠していることを』
レイは驚いている様子だった。シュガアは、やはり出過ぎた真似をしたか……と後悔しかけた。
だが彼女は拳を握りしめ、こう言うのだった。
『言うわ! あたし!』
あの時の嬉しさがまた込み上げてきて、シュガアは一人で微笑んでしまう。
だがその数瞬後には、眉間に皺が寄っていた。
(俺も、再び行くんだ――『世界の果て』へ。覚悟を決めたよ)




