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ホープ・トゥ・コミット・スーサイド  作者: 通りすがりの医師
第四章 障害に次ぐ障害
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第168話 『シュガア編:前代未聞』



 ホープたちが、とある荒廃した町の、とある荒廃したショッピングモールに向かっているのと同時刻――


 偶然にも同じ町の、また別の場所で事件は起きていた。



「明かりが! ……って何ですかコレは〜っ!?」


「……してやられてしまったな」



 真っ暗だった巨大な地下空間が、突如眩しいライトの光で満たされる。

 白髪頭に白髭の中年男――シュガアは、メロンという名の少女と一緒に捕まっていた。


 天井からぶら下がったロープのようなものに、二人揃って腹を縛られ、空中に吊られているのだ。

 下には、



「う、うわ〜っ! 下見ちゃいました〜!!」


「……!」


「「「カ"アァァア」」」

「「「ゥホ"ォォアァ」」」



 大量に敷き詰められたスケルトンたちが、大口を開けて、手を伸ばして待っていた。

 吊られている高さは、スケルトンが手を伸ばしても届かない高さではあるが……



「無様だね、オッサン! 暴れたらロープが切れて終わり! そしてあの魔導鬼の女の子がポーラに勝てなければ……」


「おわ〜!?」

「っ!」



 天井付近で制御盤のような物を操作する、青髪のイケメン男。

 ガクン、とロープが一段階、下に降りた。



「僕はこのロープを一気に降ろす! 君たちはスケルトンたちの餌さ! ……あと、長引く戦いは『美しくない』からね、時間経過でどんどん降ろしていく!」


「君、やめないか!」

「レイ〜っ!?」



 楽しげにレバーを操作するイケメンにシュガアが怒鳴る一方、メロンは仲間の少女の名を呼ぶ。


 『レイ』と呼ばれた少女は、たった今ライトアップされた特製の『リング』に立っていた。

 金網に囲まれた、二人の女性。



「ウフフ、どう? 今の気分は? 『美しい』でしょう、このリング……」


「気分? ……最悪よ!」


「全く『美しくない』わね、あなた」



 ポーラと呼ばれた美女は、長く伸ばした赤毛の髪を振り乱し、楽しげにレイに問う。

 だが、レイの態度はその真逆。



「仮面も、服も、あと杖も! 返してよ!! どうしてあたしがこんな格好で戦わなきゃいけないの!?」


「決まってるわ、どちらが『美しい』のか競い合うためよ……何、肌を出すことがそんなに恥ずかしい?」


「当たり前でしょ!?」


「別に良いけれどそれは『美しくない』し、勝負には勝てないし、おまけにお友達もスケルトンに食べられてしまうわよ?」


「……っ!」



 ――女性は二人とも、ブラジャーとパンツのみの、完全なる下着姿。

 さらにそれぞれ片方ずつに、黒く硬い、妙な『篭手』のような武具を装備している。


 ポーラは普通の人間で、その美しく引き締まったボディーラインや白い肌を堂々と、惜しげもなく晒している。


 しかしレイは魔導鬼。顔も体も、普段から隠したがっている真っ赤な肌が、晒されているのだ。

 シュガアとメロンはもちろん、天井付近の『観客席』から大勢の他人に見られている。



「レディース・アンド・ジェントルメン!! この荒廃した世界に、花は一輪で充分!! 『パワー』とは『美しさ』! 『スピード』とは『美しさ』! 『タフネス』とは『美しさ』! 『強さ』すなわち『美しさ』である! 勝者こそが『美しい』! 誰もが待ち望んだ二人の女性の、熾烈を極める『美しさ』を賭けた戦いが……今始まる!!!」


「「「うおおおお!!!」」」

「「「ポーラ様ぁぁぁ!!!」」」


「「「ア"ア"ァアァ"ァア"」」」



 青髪のイケメンがマイクに向かって叫び、開戦のゴングが鳴れば、観客席の人間たちが歓声を上げる。

 リングの周囲のスケルトンたちが、満たされることのない空腹を訴え続ける。


 金網がリングを囲んでいるため、レイが直ちにスケルトンに食われることはないが――



「何という、ことだ……!」



 誰が死んでもおかしくない、前代未聞の状況。

 どうしてこんなことになってしまったのかと、シュガアには歯を食いしばることしかできない――



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