第115話 『橋の上の出会い』
言いにくいお話なんですが……三章で一旦……一旦完結としてしまうかもしれません…
その方がまだ読まれるかなって…(最悪な期待ですけど完結ブースト的な…)
もしそうなってしまってもまぁキリが悪くないところで切りますし、あくまで『一旦』です。
必ずや、すぐに続きを書きます。
と言ってもまだ中断すると決めてはいないですし、三章が盛り上がるのもここからですので……!
「追い詰められたぁ!」
「助けてー!」
夜が明けてすっかり太陽が昇ったバーク大森林の、とある谷に架かった橋の上。
深い谷底には川が流れているようだ。
手前の道から廃車がいくつか散見されていたが、この橋の上は特に廃車だらけで。
真ん中にある廃車の屋根に、二人ほどの生存者が乗って叫んでいる。スケルトンや狂人に囲まれているのだ。
「ク、クソ! 弾切れだ!」
そしてもう一人、車の上に避難もできず腰を抜かし、今まさにスケルトンに食われそうになっている生存者も。
「ア"ゥアア!」
「うあああ!」
男の生存者は、迫りくる紫の歯に何の抵抗もできず、
「あっ!?」
スケルトンの顔面を貫通して飛び出してきた刃に、唖然とする。
「――命令が出たからなァ。助けてやるよ」
刀をスケルトンから引っこ抜いた吸血鬼、ナイトがそう言った。
◇ ◇ ◇
「おい、青髪ィ! この男は向こう側に行きてェそうだ、援護しながら来い!」
「……わかった」
やる気の出ないホープに指示しながら、寄ってきたスケルトンや狂人を刀の一振りで蹴散らすナイト。
相変わらず、豪快なことだ。あれが見た目だけでなければ良いが。
ホープはマチェテを抜き、今しがたナイトが救った生存者――小太りの中年男――の元へ駆け寄ろうとする。
が、
「コ"ォォ!」
「ォア"ア"ッ!」
あちこちにある廃車の裏から、次々と死者どもが現れ、わらわらと寄ってくる。
だからホープは車の屋根に登り、
「どうしておれが、こんなこと……!」
一列に並んだ廃車の上を、ピョンピョンと跳んで移動していく。
――今回も、ニックの号令のせいでこうなった。
横倒しの廃車の上から助けを求める生存者を見つけた瞬間、あの男はホープとナイトをぶん投げて、戦わせ始めたのだ。
「カ"ァ!」
「最低の気分だっ!」
「ウカ"ッ」
下からホープの足を掴もうとしてきた狂人の顔面に、蹴りを入れる。
直後、小太りの生存者と合流。
「お、おいあんた、銃持ってねぇか!?」
「持ってたら使うよ……」
男の質問に呆れそうになりながらも答えるホープは、
「ク"ワ"ァァ!」
「っ!」
寄ってきた狂人の胸に飛び蹴りをかます。狂人は後ろ向きにたたらを踏んで、谷底へと落ちていった。
近くの敵の始末を終えたところで、横をチラ見する。
「くらいやがれェ!」
ナイトが走る勢いそのまま、ある廃車の先端を蹴り上げる。
いわゆるサマーソルトキック。ナイトがバック宙状態になるのと同時に、廃車が豪速でひっくり返り、
「コ"ァァ」
「ゥホ"ォオ"」
「フ"カ"ッ」
助けを求めていた生存者たちを囲んでいた死者どもを、まとめてぶっ潰した。
華麗に着地を決めたナイトがまた駆け出し、
「うおォォォ――――!!」
まだ残っているスケルトンや狂人を、走りながらの乱れ斬りでバタバタと掃除していく。
――あれは次元が違うな。そう思ってホープも走り出そうとすると、
「おおっ、お前ら朗報だ! シリウスが来たぞ!」
隣にいる小太りが、行きたがっていた方向を見て手を振っている。
それを聞いた、たった今ナイトに助けられた二人も、
「勝ち確だな!」
「やったー!」
どいつもこいつも、ホープやナイトに助けられるより喜んでいる。
向こう側から、一人の男が走ってくるのを見て。
「遅れてすまん! 俺が、今助けるからな!」
ずいぶん細身な黒髪の若者が、橋へと真っ直ぐに走ってくる。
しかし――
橋へ侵入するためには、50体ほどの分厚い死者たちの壁を突破しなければならないのだが。
「生身の人間じゃァ無茶だ! 俺と青髪がどうにかする、そこで待てェ!」
ホープだって生身の人間だが。そうツッコもうとしたら、
「いいや、不要だ!」
シリウスとか呼ばれた若者は、両方の拳にメリケンサックを装着。
ググッと力を入れた右拳を突き出しながら、群がるスケルトンや狂人たちの中へ突撃。
「死んだか……?」
死者が多すぎて目を凝らしても状況が見えず、ホープが呟く。
その直後。
「おらぁぁぁぁッ!!」
両方の拳槌を叩きつけるように回転しながら、スケルトンたちを蹴散らしたシリウスが姿を現す。
その後も、あの細身からは考えられないような強烈なストレート、アッパー、ハイキックなどを決めまくる。
最終的にほとんどスケルトンたちを全滅させてしまった。
ナイトが目を見張るほどの戦闘力の高さで、一件落着。
そうホープが思ったのに、シリウスは走るスピードを落とさず、
「どうして武器を納めない!? お前も敵なんだな!」
「はァ!?」
殺人級のその拳を、存分にナイトに振るっていってしまった。
どうやら彼は、感情が昂りやすいようだ。
驚きながらも咄嗟に、ナイトは刀でメリケンサックを防御。
防御はしたものの、
「ぐォ!?」
流れるように飛んでくるシリウスの回し蹴り。
しなるようにガードをすり抜けてくる攻撃を躱しきれなかったようで、ナイトの横顔にヒット。
「ニードヘル直伝の格闘術なんだよ、ナメてもらっちゃ困るぞ!」
自信満々に、どこか楽しそうに、シリウスが言い放つ。
「くそォっ……!」
ナイトは逆に爽やかさの欠片も無い、苦虫を噛み潰したような表情。
ホープは知らない話だが――またしても人間に圧倒されそうになったナイトは歯噛みし、怒りに任せ反撃しようとするも、
「そこまでだ!」
野太く、力強く、ニックの声が橋の上に響いた。
存在感のある号令に、橋の上の誰もが動きを止め、振り返った。
「なかなかやるじゃねえか、シリウスとやら……だが聞き捨てならねえ台詞があったな」
ニックはゆっくりとシリウスに近づいていく。
「俺たちは敵じゃねえ。どうやらてめえ、プレストンのとこの関係者のようだが」
ホープもナイトも、先程からシリウスやニックが何を言ってるのか見当もつかない。
「あんたは、まさか……ニック・スタムフォード……っ!?」
「ここから先を案内しろ、シリウス。その方が手っ取り早い」
若者たちに比べ、『P.I.G.E.O.N.S.』隊長という有名人であるニックは、顔さえ見せれば話が通じたりもする。
セコい。




