表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホープ・トゥ・コミット・スーサイド  作者: 通りすがりの医師
第三章 『P.I.G.E.O.N.S.』問題
119/239

第109話 『同志たち』



 ――ナイト、そしてホープは『遠征』に行くことになったらしい。

 いったい何の『遠征』なのかは見当もつかないが、どうやらレイはまたも置いてけぼりのようだ。


 だがその前に、


「ちょっと待ってナイト!」


「ん?」


 ニックたちを追いかけようとするナイト(傷だらけだが本人が治療を拒否)の肩を掴み、その足を止めさせる。

 だって、まだ聞いていない。


「自分で言っといて忘れないでくれる!? 『あたしの魔法についての疑問がある』って、あんた熊倒す前に言ってたわよね!」


「……あァ、すっかり忘れてた」


 悪びれもせず言うナイトに多少腹が立ち、


「バカ!」


「いでェ!」


 その頭に拳骨を食らわせた。

 エドワーズ作業場で出会った頃から、ナイトにはこういうところがある――クソ真面目なくせに、レイの扱いに関しては雑なことが多いのだ。


「悪かった、悪かったよ……そういやァてめェ、一緒に来なくていいのか?」


 頭を擦りながら、ナイトは純粋に聞いてくる。

 レイはついつい俯きながら、


「あたしは呼ばれてないじゃない。呼ばれたとしても、()()()とは一緒にいれないし」


「……そうかよ」


 呆れた、という感情を隠すことなく顔に出したナイトは、遂にレイへの『疑問』を吐く。



「てめェの唯一使える魔法……ありゃァ、本当に『味方のサポート』しかできねェのか?」



 俯いていた仮面の顔を、レイは弾かれたように前へ向けるのだった。


 ――数分後、ナイトは他の仲間たちと共に旅立っていった。



◇ ◇ ◇



「あ、あ……」


 男が、倒れている女を抱えた。


 それはウェーブがかった金髪を持つ、少しだけ幸薄そうな顔をして――すっかり体が冷たくなってしまった美少女。


「アリス……! 我が同志……っ!!」


「そんな……!」

「嘘だろ!?」

「どうしてこんな目に!」


 何者かに喉を切られて息絶えている彼女の名は、アリス。

 それを抱える男、そしてその後ろで見ている10人以上の人間たちは、彼女の『同志』である。


「お、おいシリウス! アリスの奴は……ほ、本当に死んじまってんのか!?」


 驚愕している同志の一人が、アリスを抱えているリーダー格の男――シリウスに訴える。

 シリウスは当然怒り、


「見ればわかんだろ、とっくに逝ってるよ……!」


「待ってシリウス! そこの岩に、赤い文字が見える気がする!」


「何!?」


 最近同志入りしたばかりのアリスの死に、冷静さを失いかけるシリウス。

 掛けられた声に、彼はすぐ横を見る。


「本当だ、『ホープ・ト』……血で書かれてる、犯人の名前みたいだが……」


「アリスの指に血が付いてる! 死の間際に残したってわけだ」

「力尽きて途中までしか書けなかったのね……」


 頑張り屋なアリスを称賛する同志の面々。

 シリウスも涙目になる。当然彼女を凄いとは思うのだが、何よりも、



「どうして……生き抜こうと必死なだけの俺たちが、こんな目に……?」



 ――ついて行ってはいけない男に拾われ、献上品を模索する日々を奴隷のように生きる、俺たちがなぜこんな目に。

 黒髪をぐしゃぐしゃと掻き乱しながら、シリウスは自分たちの運命を悲しんだ。



「ブタ! キツネ! ……アリスを殺した犯人がこの辺にいるかもしれない。お前らはそっちへ! あとの奴らは俺について来い、もう少し先で別れる」


「おう……許せねぇもんな」

「またなシリウス。俺らはこっち行くぜ」



 シリウスから指示を出された二人組が、同志殺しの犯人探し……そして献上品を得るために道を外れる。


 太っちょな体格で何も考えていなさそうな顔をしている男が、『ブタ』。


 ヒョロヒョロな体格でズル賢そうな顔をしている男が、『キツネ』である。


 そのまんまなニックネームだが二人とも気に入っているし、同志たちから好かれている二人だ。



「アリスや、今まで死んでいった同志たちのため――すぐにこの生活から脱却してやるんだ!」


「「「おお!」」」



 今シリウスが拳を掲げて叫んだこと。

 それが、彼らを『同志』として一体化させている信念であった。



「『ホープ・ト』……か。途中まででも充分。覚えておくぞ、アリス……!」



 彼らの結束は、とても固い。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ