黒い扉
レッドが黒い扉を開けるとそこはーー。
「船?」
見渡す限りの海と木造の大きな船の上にオレはいた。
「よぉ、やっと来たなぁ。ヘイヘの野郎長話が過ぎんじゃなねぇのか?」
前方から上半身裸の上に黒いコートを着、髭が長い男性が歩いてくる。
「貴方は……誰ですか?」
「オレか?……すぐ答えたらつまらねぇからな。ちょっとしたゲームをしてそれに勝ったらオレの名前とスキルを与えてやるよ。」
ニカッと笑うとその長い髭を整え、近くにあった拳銃を持つ。
「なに、そんなに身構えなくていいさ。これから始まるのはロシアンルーレットって言うヤツだ。」
レッドは聞きなれない言葉に首を傾げる。
「まぁ……早い話がーー。」
男は頭へと拳銃を向けると躊躇なく引き金を引く。
「へへ。こうやって頭に拳銃をぶっぱなすのさ。弾は1つしか入ってないからな。6分の1の確率で死ぬ。」
男が大袈裟に手を広げ、説明する。
「まぁ……死んだらその時だ。」
目が怪しく輝き、レッドの本能がこの人はヤバいと警鐘を鳴らす。
しかし……ここで引いたらスキルが使えなくなる可能性すらある。
「……やりましょう。」
「おお!いいねぇ!!オレはそーゆー人好きだぜ。」
男はヘラヘラと笑い、拳銃をレッドへ投げ渡す。
「さぁ……引けよ。」
レッドは躊躇なく頭へと拳銃を向け、引き金を引く。
「ひゅー!やるねぇ!いいねいいね!」
男はこちらへと拳銃を渡せと目で合図を送る。
「ほら。」
レッドが投げるとその拳銃を掴み取りすぐさま頭へと拳銃を持っていき、引く。
「その拳銃は5発装填出来るからな。後2発だ。」
「…………。」
次の男が引く番では2分の1。
その次レッドに回ってくるような事があったら……レッドは死ぬ。
「ここで下りるとかいうなよ?それこそつまんねぇからな。」
レッドは拳銃を男へと投げる。
「……いいね!最高だ!」
男は高揚した表情で拳銃を頭へと持っていき引き金を引く。
「ほら、次はお前の番だ。」
弾は出なかった。
つまり次で……死ぬ。
「…………。」
「怖くなったか?怖気付いたか?こんなこと辞めとけばとか思ったか?……実につまんねぇな。」
男は拳銃をレッドの目の前に置く。
「絶望してるとこ悪いがオレとはウマが合わなかったって事でな。帰れ。」
「…………。」
男は体を回転させてつまらなそうに歩く。
「あーあ、つまんーー。」
男は微小な音を耳で拾った。
すぐさまレッドを見る。
「それは間違いだ。」
そしてレッドは引き金を引いた。
乾いた音が鳴り響いた。
「お前、なんで引き金を引けた?」
「え?なんでって……?」
「オレが弾を入れてない事に気がついていたのか?」
「その可能性は少し……予想はしたけど……ここで引き金を引かないとダメだって思ったんだよ。」
「そうか……その覚悟見させてもらったぜ。力を貸すよ。」
男はくるりと回転し歩く。
「貴方の名前は?」
「あー……約束だっけか。エドワードティーチ。〈黒髭〉だ。