旅の初め
「その右腕まだあったのか。」
ソウジはレッドとオリバーの右腕を掴むとミズキとルウトを呼ぶ。
「その囚人番号には魔法がかけられていてな。消えない魔法と追跡魔法だ。つまり……厄介だな。」
監獄の看守長をソウジが殺した事で看守が全員萎縮し、目の前でこうして話していても攻撃をしてこない。
「これ、解除頼むよ。」
「「了解。」」
最初にルウトが焼印に触る。
「〈キュア〉」
見た目は何も変わらないが毒素が抜けるような感覚がする。
「〈久遠の歌〉」
ミズキがスキルを発動させると綺麗に焼印が無くなる。
オリバーも同様に無くなった様だ。
「それでソウジはこれからどうするのですか?」
「ああ、俺は目的があるからね。レイはどうするの?」
「私たちは曲がりなりにも脱獄犯。ならば身を隠せる場所へと移動するのが良いでしょう。」
「当初の予定通り魔王領に?」
「ええ、そうなりますね。」
レイは頷き、ソウジの目を見る。
「ソウジさんの目的は魔王領にあるのですか?」
「それがどうもわかんないんだよ。1つは分かってることは勇者の背後にいる存在……いわゆる女神を殺したい。」
ソウジのその発言にミズキとルウト以外驚く。
「女神を……ですか。神殺しをすると?」
「ああ、それが1つ目標だけど……他にもドラゴンの鱗が欲しかったりするんだ。」
神殺しをすると言うソウジの言葉後にドラゴンが出てきても感覚が麻痺し、それほど驚かなかった。
「ドラゴン……。それは私にも分かりませんね。文献では『いる』と書かれてはいましたが……。どこかまでは。」
「わかってる。だから情報を集めながら……とりあえず人間領での暮らしになると思うよ。」
「それなら……お金を稼ぐためにギルドを……個人的なギルドを立ち上げましょう。ギルドの制約によって信頼関係が生まれると言うものです。」
レイは微笑む。
「うん、いい考えだと思う。でも活動はどうするの?」
「私達の目的は一致してるでしょう?『勇者の始末』……なら裏では暗殺者ギルド『ノクターン』、表は傭兵ギルド『クレセント』でどうでしょう。」
「異議なし!」
ソウジはいたく気に入ったようだ。
オレを含め他の人も頷く。
「ではここから私達は魔王領へと。ソウジさんは人間領で活動をします。また会いましょう。」
ソウジとレイは握手を交わし、歩いていく。
ソウジの方にはルウトとミズキが。
レイの方にはレッドとオリバーが着いて行く。
ソウジと別れて1週間後……オレ達は監獄の追っ手と出来るだけ戦闘を避け、逃げながら魔王領へと入る事に成功した。
ここからは人間領の追っ手は来れない。
オレ達の様な一般市民は大丈夫だが、皇帝の息がかかった者は瞬時にバレ、殺されてしまう。
「では一旦魔王城へと向かいます。」
魔王と協力をし、勇者を倒すことが出来れば万々歳。
だが世の中そこまで甘くない事をレッド達は知る事になるのだった。