脱獄前日
「……出てこれたようで良かったです。」
レイはそれだけ言うと微笑んだ。
「それはそうとしてこれからどうするんだ?」
合流したのであろう、ミズキとソウジがレイへと問いかける。
「そりゃあ……普段の行いが悪い看守には痛い目に合ってもらわないとですかね。」
レイが怪しく笑うとソウジも笑う。
「俺がスキルを持っていればな……。今は剣すらもない。」
「武力の方は大丈夫でしょう。私もいますし、ルウトさんやミズキさんも結構強いでしょう?」
ミズキはちょっと困ったように笑う。
「そう言えばオリバーとレッドのスキルは何なんだ?」
この世界には1人1つ「スキル」というものを多くの人が発現する。
稀に発現しない人がいるが……その人たちは社会の弱者として奴隷に堕ちるか、自らの腕っぷしを信じて魔物を狩るかの二択しか道は無い。
「俺は〈火の使い手〉なんてことのないスキルだ。」
オリバーは肩を落として首を振る。
「オレも似たようなものだ。〈水の使い手〉。オリバーと系統は同じ。多くの人が発現するスキルだな。」
「なるほど……。それなら主力は私とルウトさん、ミズキさんがアタッカー兼サポーター。ソウジさんは剣を取り戻したら合流という感じですかね。」
「うん、それでいいと思うよ。」
ここいいる人は皆、監獄から本気で抜け出したいと思う人たちなのだろう。
「ただ、看守長をどうにかしないとですね。」
「ああ……。アレは結構厄介だね。でも俺も伊達に毎日散歩と称して歩き回ってないよ?」
ソウジはニヤリと笑うと次のように提案した。
「アレは〈倒したもん勝ち〉だ。」
ソウジの目に怪しい光が宿る。
「ええ、わかりました。それでいいですよねルウトさんとミズキさんも。」
2人は頷く。
ハッキリとレイは明言しないが、オリバーを残して脱獄出来なかったのだろう。
相方が脱獄したとあれば残された1人が罰則を受ける可能性があるからだ。
だが、オリバーの意思決定がされた今その心配は無くなった。
「じゃあ……。実行は早い方がいいだろうね。時間が経つとどうしても心配になったり……決心が揺らぐこともあり得るから。」
「……ええ。では明日、決行します。逃げる準備はできているのでね。」
これから先、逃亡生活となる。
どんな未来が待ち受けているのか想像すらも出来ないが……セツを殺す事が出来れば人間サイドは手を出せないだろう。
いざとなったら魔王領へと逃げる必要があるかもしれないが……今の生活よりはマシだと思うレッドであった。