プロローグ
「レッド!俺本当はこんな事するつもりじゃっ!!」
女神から認められた勇者はオレの前で情けなく泣き散らかす。
「いいんだ!これはお前の、セツが正解だ!」
「でもどうしたら!」
オレは目の前に転がる人間だったモノを見つめる。
「…………ここは、オレがこの死体を持って出頭する。勇者のセツにはまだまだこれから先やる事があるだろ!?だったらここはセツの為にオレが!」
「でも!!」
「いいんだ!」
泣きはらすセツの手を払い死体を抱える。
「これで……いいんだ。」
オレの目から望まない雫が流れ落ちる。
「これが人類貢献の為の……オレに出来る1つだ。」
その後ろ姿はどうしようもなく寂しそうで、今にも死にそうだった。
「囚人番号1032!こっちへ来い!」
オレが監獄へ入ってから1週間。
文字通り地獄の日々だった。
法律的にはオレは殺人罪。
やがて死刑になるだろう。
それまでには使い潰してやろうという意気を看守から感じられる。
「さっさと来い!」
背中をムチで叩かれたが傷に傷を重ねて痛みは脳内麻薬で軽減されている。
「今日はお前に焼印を入れるんだ!時間が勿体ない!この殺人者め!」
やけくその様に看守が背中をムチで叩くが、一向に反応しないオレに飽きたのか顎で着いてこいと合図する。
ああ、これで本当に囚人へと成り下がるのか。
そう思うと自然と足は重くなる。
「ここだ!入れ!」
看守はドアを開けオレを蹴り飛ばし部屋の中に入れる。
「ここに座れ!」
部屋にはひとつの椅子と焼印を入れるための道具がある。
「……。」
黙ってオレは座ると看守は焼印のハンコの様なものを持ち上げ、右腕に押し付けようとしてくる。
ああ、裏に……1032と書いてある。
とどうでも良い事を考えながら今日立派な囚人へと成り下がった。