二色 このクラス替えの世界で
クラス替え、ある者は新たな出会いを期待し、またある者は別れを悲しむ行事。
今年は斗弥と一緒でよかった。
「今年も迷惑かけるかもしれないがよろしくな、斗弥」
「おう、別に気にしねーよ」
斗弥は俺の目について何か触れてきたことはあまりない。一度不思議に思い、斗弥になぜ俺に構うのか聞いてみても曖昧な返事だった。
無駄な心配をせずに俺といてくれる。そんな斗弥を俺はありがたく思う。
前回のクラスであまりいい記憶がない俺は今年は誰か優しい人がいればいいなと思いながらドアを開け斗弥と一緒に教室に入る。既に半分程度は教室に居て、何人かがこちらに視線を向けてきた。何人かはヒソヒソ声で(と言ってもこちらが聞こえてしまうほどの大きさで)「おい、あいつって…」「そうそう、目が…」などと言ってきたのが聞こえた。
(言われ慣れてるけどやっぱり少し気になるな)
そう思いながら出席番号順に振り当てられた自分の席に座りカバンを置く。斗弥とは離れてしまったのでスマホをみていらさっき聞いたばっかりの声で名前を呼ばれた
「和樹君」
そこにはニッコリと輝かしい笑顔でこちらを見ている津雪さんが居た。
「……なに?」
唐突に声を掛けられ困惑する。
「さっきはありがとうね、あとよろしくね」
周りからは奇異の目線を向けられる、それもそうだ、聖女と言われるほどの子が初日にさっき知り合った程度の人間と会話をしているのだから。それになぜ名前で呼んでくるのかが不思議だ。まあ彼女の性格の良さや律儀さを考えればおかしくはないと自己解決する
「別に気にしなくていいよ、よろしくな」
「じゃ、そろそろ時間だから戻るね」
そう言い彼女が席に戻るのと同時にスーツを凛々しい顔の女性がドアを開け入ってきた。多分今年の担任だろう
「全員体育館に行けー」
そう言われると生徒たちはそれぞれ教室から出て行く。俺も斗弥と一緒に教室をでた
始業式を終え、教室で待っていると先ほどの先生が入ってきた
「私が今日からこのクラスの担任になる森谷 明子だ、よろしく。早速だがみんな自己紹介をしてくれ、じゃあ出席番号一番から」……
自己紹介を無事に終え他の授業も最初の説明程度でなんやかんやですぐに1日が終了した
………ふぅ、すぐに終わったとはいえ流石に久しぶりの学校は疲れたな
「おい斗弥、帰ろ……って寝てるし」
帰ろうと思ったら斗弥は寝ていた、もう誰もいない教室で一人置いて行くのも酷なので起こすことにする。
「おい起きろ、帰るぞ」
「転生したのにチートないってマジぃ?」
「ここは異世界じゃねーよ、起きろ」
まだ寝てやがる。てかなんの夢見てんだ
そうこうしているうちにドアが開く音が聞こえた。
「まずい!先生がきた…あれ?津雪さん?」
「あれ?和樹君、こんな時間だよ?帰らないの?」
先生かと思ったら首を傾げこちらを大きな瞳で不思議そうに見てくる津雪さんがいた
「津雪さんこそこんな時間まで何してたの?」
「私はちょっと…ね…」
そう言う彼女の手の中には収まりきらない量の紙が握られていた。ははーん、ラブレターか
「あー、津雪さんモテるもんね」
「 別に私は好きな人と付き合えればそれでいいのにな。それに、単に告白してるだけって感じなのが多いし」
確かに逆にここまで告白されるとハードルが低いという風潮はできてしまうだろう
「へー好きな人いるんだ、意外だな」
「なんで意外?」
「いや、ここまで告白されると男子が嫌いになってそうじゃん?」
「ふふっ、何それ、嫌いなるはずないじゃん」
彼女は口元に手をあて可笑しそうに笑う。
「私の好きな人はね、私を救ってくれた恩人なの。相手は私の事を覚えてなさそうけどね」
「津雪さんの事を忘れるって逆にすごいね」
「……そうだね」
津雪さんはそう言いながら少し悲しげに俺の事を見てきた
「なーにべらべら喋っちゃってるんだろ私、もうこんな時間だし私は帰るね」
カバンを持ち教室を出ようとする彼女が去り際に一言言ってきた
「あ、この話は二人だけの秘密ね、それじゃばいばーい」
津雪さんがいなくなってすぐに斗弥は起きた
「悪いなこんな時間まで残しちまって、お前一人だったのに」
「ああ、うん」
そう言うと斗弥はニヤニヤしだした
「な、なんだよ気色悪い」
「別に〜?」
そんなこんなで俺は帰路に着いた、しかしその脳裏の裏には今日放課後の教室で起きた津雪さんとの出来事が脳裏に焼き付いていたのであった。
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