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一色 この通学路の世界で

周りと見る世界が違っていた。小学生の頃、色が見えなくなってから世界は大きく傾いた。

泣く両親、離れていく友達、同情する大人達。医者からは淡々とその症状と治せないこと、何か心にくるような刺激があれば治る可能性があると伝えられた。そんなものある訳ないのに。そんな負の心を抱えたまま俺は高校生になった。


今年こそは色が戻りますように。そんな事を願いつつ、幼き頃色を見れなくなってしまった少年、堀宮 和樹( ほりみや かずき) は、この春高校二年生となり、色のない桜を尻目に一人通学路を歩いていた。

その途中、ふと、ポーチが落ちているのに気がついた。そのポーチは誰にも気付かれていないのか、見て見ぬ振りをされているのか寂しそうにポツンと落ちていた。ポーチを拾って見ると猫の刺繍と丁寧な文字で

津雪 華澄(つゆき かすみ)」と書かれていた。拾ったポーチをどうしていいかわからず立ちすくんでいると、後ろから元気で馴染みのなる声が俺の名前を呼んでることに気がついた。

「おーい、和樹、なに立ち止まってんだ〜?」

少しバカにしてくるように名前を呼んできた方向を振り返るとそこには天野 斗弥(あまの とうや)がいた。斗弥はメガネに黒髪といかにも真面目そうな感じだがアホである。しかし目のせいで周りから疎遠されている俺と唯一仲がいい友人でもある。

その斗弥が近づいてきた

「おいおい、いつからそんな趣味あったんだ?」

俺が手にしていたポーチに気がついたのか、そんな事を聞いてきた。


「アホ言え、落ちてたのを拾ってしまったからどうしようか考えていたんだ。ほら、名前も書いてあるぞ」

「あー津雪さんのか」

「知ってんの?だったら渡しといてくれないか?」


知っているのなら好都合だとポーチを押し付けようとしたら露骨に嫌な顔をされた。


「いや、俺はいい、これは学校に届けとけ、直接渡しに行ったら刺されかねんぞ」

「は?」


なんだそれ、怖すぎだろ。

どうやら津山華澄というのはいわゆる"高嶺の花"というやつらしく、一部の人からは完全無欠の聖女と呼ばれるほどらしい。他にも毎日のように告白をされているという噂もあるらしい。

「噂をすればなんとやら、あそこにいるのが津山さんだぞ」

指が指された方向を見ると確かにそこには後ろ姿からでも美しさが滲み出るような少女がいた


「確かに…後ろ姿でもなんか美人そうに見える」

「だろ?…あ、そうだ」

何か思い付いたのか手をポンと叩いた

「拾ったやつ渡してこいよ」

「はあ?!」


いやいや、今刺されるとか言ってきたくせにそれはないだろう。 唐突になにを言ってくるんだ。

だがしかし、


「まぁ渡せるのに渡さないのは失礼か」

「そうそう、それに津雪さんとお近づきになれるチャンスかもよ〜?」

「ないない、落し物を届けるだけだぞ?マンガの中じゃないんだし」


そう言いうと俺は津雪さんの元へ駆け寄り声を掛ける。


「あの、すいません、これ落とし…」


そう言いかけると彼女は「はい?」と少し悲しそうに言いながらこちらをくるりと振り向いた。

その瞬間、俺は目を見開いた。肩よりちょっと伸びたきっと黒色であろう艶やかな髪、光を反射してキラキラと輝く大きく瞳、形の整った鼻と顔、潤いを持つ唇、顔だけじゃない、体もモデルのように美しい。俺は今、彼女がなぜ聖女と言われるその由縁を再認識し直した。

「どうかした?」

そう言われ俺はハッと我に返った。

「これ貴方のですか?」

そう言いながらポーチを見せると彼女は一瞬驚き、泣きそうな顔になりながらポーチを受け取とり中身を確認した。

「ありがとう…これ、すごく大切な物なの…あっ」

「そうなんだ、次からは気をつけなよ」

それだけ言い彼女から離れようとした。

「今度お礼させてね、和樹君」

思わず振り返る、そこには笑顔でこちらを見てる彼女がいた。

彼女は「じゃあね」とだけ言うと走り去った。


白い桜の花びらは風が吹くたび舞い上がり、道路の脇にある家の窓は太陽の光を反射し輝いている。まだ冬が抜けきっていない肌寒さと暖かい日の光が体を包み込む。高校2年の春の通学路、今の出来事が俺の今後の人生を大きく変えるとは予想だにもしなかった。

読んでいただきありがとうございます。初投稿で拙い文かもしれませんし、投稿頻度も遅いと思いますが気に入って頂けたら嬉しいなと思ってます。

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