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同棲癖。  作者: 濃紺色。
同棲癖。
5/16

初めて。

話は少し遡り……。

それはいつもと変わらぬ金曜日の夜。映画を観終えて、深夜のコンビニに向かっている道中だった。

涼夜が突然、立ち止まった。


「彼女、出来た」


私も思わず、立ち止まる。


「……え?」


ふざけて、嘘を吐いている雰囲気ではないと一瞬で分かった。


「いや……え? じゃなくてさ」


涼夜は首の後ろを掻き、それから両手をスウェットパンツのポケットに突っ込むと、


「俺さ、彼女出来たんだ」


まるで自白する容疑者のような顔で言った。


「精神科行く?」

「いや、嘘とかそんなんじゃなく……彼女、出来たんだよ、俺」


分かっていた。いずれ、こんな日が来るかもしれないって。そうなったら、お互い別々に暮らそうって。


「ふーん、そーなんだ」

「すっごい、興味なさそうじゃん」


でも、何でだろう。笑顔が作れない。胸が苦しい。


「いつから?」

「んーと、3ヶ月ぐらい前から」

「そんな前!?」


信じられなかった。今の今まで涼夜から一切、彼女がいる素振りは見られなかった。


「そんでさ、俺さ」


嫌だ。これ以上何も聞きたくない。


「ここ出てさ、彼女と新しい部屋借りて同棲しようかな、って」


次から次へと繰り出される涼夜の言葉に、どうしてこんなにも拒絶反応が出てしまうんだろう。


「……場所とか、決まってんの?」

「うん。駅からちょっとだけ遠いんだけどさ、南沢寺みなみざわでらに安い部屋見付けてさ」


初めてだった。


「ふーん、そっか。いいじゃん。おめでと」


涼夜に対して、こんな得体の知れない感情が湧き上がるのは。

この時が、初めてだった。

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