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同棲癖。  作者: 濃紺色。
同棲癖。
2/16

忘れたい。

何だかんだ言って涼夜も黙って映画に集中していた。

静かになった私と涼夜の間。私の方がうずうずし始めていた。こんな感覚、今までなかった。今がこんなに大事だって、今よ永遠に続けって、こんな風に身体全体を使って、何かを感じ取ろうとする感覚は初めてだった。

出来るだけさり気なく。何でもないように。


「……馴れ初めってどんな感じだったの?」

「え……何?」


涼夜は画面から目を離さず、聞き返してきた。


「馴れ初め。彼女さんと」


何でこんなこと聞いてるんだろう。自分でもよく分からない。

やっと、涼夜がこっちを向いた。


「俺の?」


いつも眠そうな涼夜の目が珍しく丸くなっていた。


「うん」

「あー……」


涼夜は天井を見上げた。

思い出しているのか? 浸っているのか?


「会社の飲み会でさ、たまたま席が隣で、趣味合うし意気投合してさ、それから2人で飲み行くようになってからのー……ハピネス! って感じ」


ハピネス! って何よ。


「後半ちょっと意味分かんない」

「分かるでしょ。察してよ」


分かってるよ。察してよ。


「涼夜が最低なのは充分、分かった」


涼夜はまた、ニヤついた。


「お、適度な言葉責め」

「キモい」

「ガチで引いてるやん」


ガチでキモかったんだもん。


「っていうか」


私は意地悪く微笑んだ。


「鑑賞中に惚気るの止めてもらっていいですか?」


「はぁ!?」と、口を大きく開ける涼夜。


「理不尽。そっちから聞いてきたんじゃん」

「覚えてなーい」

「俺は覚えてる」

「私は覚えてない」

「マジかよ……狂ってやがる」


覚えてない。覚えていない方がどれ程幸せか。涼夜も、同棲も、金曜日の夜も全部全部……忘れたい。

忘れられたら、どんなに……。

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