濃紺色。
『同棲癖。』の番外編の番外編のような、二部作の短編小説。
本編の11話、「デジャブ」の涼夜の台詞、
「覚えてるだろ。海辺の街が津波に飲まれたってニュース。あの時だって、被災者の気持ちなんか考えずに、この現地リポーター、明日香に似てるな、可愛いなって、それで! ……そんなことばっか考えてる屑野郎なんだよ俺は!」
この中にある、津波に飲まれた海辺の街を描きました。
実はこの作品、高校生の時に入っていた演劇部で作った『海辺の街から』という舞台を元にしました。
涼夜と依夜の存在を知る余地もない、それでも確実に存在する、海辺の街。「私」と「僕」。夜と海。
濃紺色と水色で描いた物語。
「あなたに似合うのは濃紺色だと思う」
そう言うと、あなたは「君が夜を表現する色と同じじゃん。僕は夜?」と、戯けたように、それでいて、優しい目で微笑む。
泣きたい時、私はいつも夜に泣く。私は濃紺色が好きだった。青色にも黒色にもなり切れない不器用な色をした夜が大好きだった。そんな、大好きな夜に包まれながら泣いたら、涙は止まらず、泣いて、泣いて泣いて、ひたすら泣き続けて、それで、涙を枯らしてくれるんじゃないかって思って。泣く時は世界が濃紺色に染まった夜に泣くことにしている。
私が泣く時、あなたはいつも私の前に現れる。どんなに1人でいたい時も誰の顔も見たくない時も私が泣いていると、あなたは決まって私の前に現れる。濃紺色の闇から静かに現れて私の横に黙って座る。それでいて優しい目で私が泣き止むのを待ってくれる。どんなに放っておいて欲しくても最終的には濃紺色に染まったあなたの体温を求めてしまう。
あなたに似合うのは濃紺色だと思う。
そう言ったら、あなたはまた笑うのだろうか。
でも、それでもいいと思う。
だって誰が何と言おうと、
あなたは私にとっての夜だから。
「あなたに似合うのは濃紺色だと思う」
あなたは夜を閉じ込めた涙を拭うと、「そうだね。ごめん……ありがとう」と言って優しく微笑んだ。
その夜色に染まった笑みが何だか、懐かしくて、虚しくて儚くて、狂おしい程に愛おしかった。




