金曜ロードショー。
付き合ってはいない。
同棲しているだけの関係。
ちょっとした一夜の、ちょっとした男女の話。
金曜ロードショーは毎週、金曜日の21時から放送される。
内容は違うけど、金曜日の夜、チャンネルは8。
毎週、毎週、繰り返し、繰り返し。
ソファーに座って、リモコンのボタンを押せば、金曜ロードショーは必ずそこにいる。
必ず。変わらず。
「もう始まるー?」
涼夜だ。バスルームから涼夜が大声で尋ねてきた。
「始まるよ。早く早くー!」
私はリビングにあるソファに座って涼夜を急かした。
「そんな急かすなって。疲れてんの、こっちは。ゆっくり風呂ぐらい……」
関係ない。金曜ロードショーは2人で見るんだ。そういう決まりなんだ。
「はーやーく! はーやーく!」
私の中だけでだけど。
「はいはい、りょーかいりょーかい」
涼夜がバスタオルで濡れた髪の毛を拭きながら、リビングに入ってきた。白色の半袖Tシャツに灰色のスウェットパンツの涼夜。「髪乾かす暇もくれないのかよ」とか何とか愚痴っているが無視をする。
「今日何?」
CMを眺めながら涼夜が尋ねた。
「ハリポタ」
「嘘やん。またかよ。前も観たじゃん」
「文句言わない。……ほい、これ」
私は予め、用意していた2つのアルミ缶の内の1つを涼夜に渡した。
「お、さんきゅー」
さっきまで冷蔵庫に入っていたから指が少し痛いぐらいに冷えている。
「「乾杯」」
2人の声と、アルミ缶同士のぶつかる音が重なった。何故だか、少し胸が痛んだ。
部屋に流れる、映画の音声。私と涼夜は同時にぐびぐびと中に入っている液体を喉に流し込む。
沈黙を破ったのは、涼夜だった。
「くぅーーーやっぱ、風呂上がりの1杯は美味いなー」
両目を瞑り、眉間に皺を寄せ、幸せそうな表情をする涼夜。
こういう涼夜を見ると、何故だか冷静にツッコミたくなる。
「ビール飲んだ後みたいな反応止めてよ、毎回。ただの酎ハイだから。アルコール度数2パーの」
「宵宵」という名前の、誰にでも飲み易いお酒として有名なやつだ。私も涼夜もお酒弱いから毎週金曜日の風呂上がりは、お世話になっている。
むふふ、と微笑む涼夜。心なしかもう頰が赤い。
「んなこと言ってさー。恋しくなるよ。俺のこの美味しそうに飲む顔」
もう酔ってんの?
私は鼻で笑った。
「ならないわ。とっとと記憶から消えて欲しい」
とっとと、どこかに。どこかへ。
「すっごい、好きじゃん。俺のこと」
……好きじゃなかったら、一緒に住んでないし。
思いとは裏腹に、口から放たれる言葉は強がろうとする。
「どこがよ。あり得ないわ」
涼夜が急にニヤついた。
「適度な言葉責めなのよ、これがまた」
「ドMか」
「ぐへへ」
「キモ」
何だよ、ただの変態かよ。