3 魔剣と食べ物
ところで俺にくっついてきちゃったけどそれでよかったのか？
（うん、あそこにいると食べ物がないから、お腹がすいちゃうの。
あんまりお腹がすきすぎて前に持ってた力が全部なくなっちゃったんだよ。
しかたないからずっと寝てたのー。
でもおじちゃんが目の前でなんか食べてたから、目が覚めたんだよ）
おじちゃんってのやめような。
ライム・パースロンって名前なんだ。
ライムって呼んでくれ。
（わかったよ、らいむ。
食べ物もっとほしいからついていくよ）
そうか、俺が餌付けしちゃったんだな。さっきは干し肉だったけど、何を食べるんだ？
（んとね、血とかお肉とか。
前はね、人間さんの血をたくさん吸ったよ。
勇者さんの血が一番美味しかったよ）
やっぱり人間の生き血をすする魔剣じゃねぇか。
人間とか斬らないからな。
（そっかー。
動物とかモンスターとかの血でも大丈夫だよ。
血のほうが好きだけど、お肉も食べるの。
あのね、つよーいモンスターの血が美味しいんだ。
今はぜんぜん弱っちくなっちゃったけど、美味しい血をたくさん吸うとどんどん強くなるんだよ）
普通にモンスターを斬ればいいのかな？
（うんうん）
前の力をなくしちゃったって言ってたけど、どんな力があったんだ？
（あのね、遠くの人間さんの首をスパッと飛ばしちゃったりとかね。
人間さん同士で、えいえいって斬り合いさせたりできたのー。
すごいでしょー）
そんな力とか、あっても困るから。
（だいじょうぶだよー。
わたしの力はね、使ってる人の望むような力が自然とついていくみたいなの。
血を吸った後とかに、ピカーって光ると進化して少し強くなるの。
それに加えて新しい力がついていくんだよ）
俺の望むような力か。
どんな力になるんだろうな。
（わからないのー。
難しい力だと、なかなかピカーってしないんだ）
そうなのか。
さて、あの階層について冒険者ギルドで報告して報酬もらおうかと思ってたけど、脱出のしかたとか報告するとなるとこの魔剣についても報告しないとまずいよな。
それに報告したとしても、この魔剣がないと満足に使えないし。
報告はやめておいて、俺だけの狩り場にするか。
今はまだちょっときついかもしれないけど、ステータスも上がってるし、この魔剣ともども鍛えれば絶好の狩り場になるかもしれない。
（それがいいよー。
あそこのモンスターたちの血はとっても美味しいよ）
考えること全部伝わっちゃうんだよな。困ったものだ。
（うん、困ったものだね）
☆
とりあえず、俺はダンジョンに戻り、落とし穴のあった隠し部屋に向かうことにした。
誰にも気づかれないように用心深く隠し部屋に入り、落とし穴に他の人がはまらないように、隠し部屋の荷物を移動した。
これで、不幸なやつが現れることはまずないだろう。
落とし穴に落ちて、もうこの魔剣もなくなってるとなると完全に死亡フラグだからな。
そして、これであの階層が他に知られることもないはずだ。
隠し部屋から用心深く戻り、これでミッション終了。
どうせだから、少しこのあたりでモンスターを倒してみるか。
このあたりなら、もともと余裕だったから問題はないと思う。
最初に見つけたゴブリンに斬りかかる。
ステータスが大きく上がったせいか、すごく体が軽い。
魔剣の切れ味も素晴らしいとしか言いようがない。
これで弱体化してるのか。
一撃で切り倒したゴブリンの死体に剣を突き刺す。
（お腹は膨れるけど、あまり美味しくないー）
グルメなやつだ。さっきは干し肉だけでも喜んでたのに。
（だってー）
そんなこと言ってたら、オーガに見つかったようだ。
この階層では一番の強敵だ。
（美味しそうだよ！）
魔剣が勝手に動き出す。
おいおい。
そのまま魔剣はオーガの胸に突き刺さり、血をすすり始める。
どうやら即死のようだ。
（うん、美味しいよ）
すると、魔剣が光り輝いた。
（ピカーってきたよ）
今のが進化なんだな。
それで、どんなスキルを覚えたんだ。
（んとね、自己強化ってなってる。
これは前も覚えてたやつだよ。
切れ味が少しよくなるやつー）
今よりもっと切れ味よくなるのか。
進化するとどんどん強くなりそうだな。
確かに剣が強くなればいいなって思ってた気がする。
（えっへん。
すっごく強くなっちゃうからね）
でも、勝手に動くのは禁止な。
何でもかんでも戦われると困るから。
（はーい、わかりましたー）
いい返事だ。
鑑定スキル持ってないからよくわからないけど、すでに切れ味とかありえないくらいの感じになってる。
国宝級レベルだろう。
どれほどの値がつくかわからないレベルだ。まぁどんな値がついても、呪われて俺から離れられないから売るに売れないんだけどな。
