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21 魔剣と血の味

 これで、アンジェにまた会えるんだよな。

 今すぐに帰るぞ!


(待って待って。あせらないでよ。

 あくまで禁忌を利用して、らいむが活力やらなんやらを吸い取って、その余った分をわたしが吸い取るんだ)


 いいじゃんか。

 俺が少々弱ってもすぐにまた戻るんだし。


(ダメです。

 らいむの余剰分しか吸う気はないからね)


 しかたないな。

 んじゃ、普通に夕方まで狩りしてそれからってことで。


(わたしだって、はやくしたいんだよ。

 でもこういうことはちゃんとしないと)


 わかったわかった。

 さっさと、狩りの続きに戻るぞ。


 ちょうど近くにワイルドボアが寄ってきたので、俺は無造作に魔剣を振るった。

 ありえないくらいの柔らかさでワイルドボアを両断した。


 なにこれ今の……ステータスの急激な変化で自分の動きの一つ一つに戸惑ってしまう。


 そして、斬った瞬間に一瞬吸った血の美味しさに戸惑った。

 これがアンジェとの感覚の共有なのか。

 モンスターの血を美味く感じるとか……すでにこの時点で危ないな、俺。


 倒したワイルドボアの血をあらためて吸う。

 舌なめずりするように血の美味しさを味わい、体に流れてくる活力や生命力を吸収する。

 そして何やら得体の知れない何かドス黒いものもいっしょに俺は吸収していく。


 俺は血に酔ったような感覚になりつつも、ワイルドボアを斬り続ける。

 斬って血を吸って、また獲物を探す。

 それはすでに狩りではなく、虐殺に。


 これが魔剣の感覚ってやつなんだなってことがよくわかる。

 そう、俺がすでに魔剣になっているんだ。

 世間に言われてる魔剣に呪われた状態ってのがこういう感じなんだろうか。

 たぶん、このまま何日も狩りを続けたら俺もそうなっていくんだろう。


 やばいな、これ。


(わたしが怖いって言ったのわかるよね)


 あぁよくわかる。

 俺の精神状態はアンジェわかるよな。


(うん)


 俺が一線超えちまわないように頼むな。


(わかった。

 気をつけてみてるようにするよ)


 今日はこのくらいにしておこう。結構やばいよ、これ。


(そのほうがいいかもね)


 俺は狩りを打ち切って、ダンジョンをあとにした。


 ☆


 早く家に帰ってアンジェに会いたいっていう気持ちは逸るが、日常は大事にしよう。

 冒険者ギルドへ寄って、Dropアイテムを精算していくことに。

 俺は途中から夢中で血に酔ってたが、アンジェが冷静にDropアイテムを集めていってくれていたようだ。

 優秀だな、アンジェ。


(えへへ。もっと褒めるといいと思うよ)


 いつものようにミランダさんのところに行って買取を頼んだんだが、なんかミランダさんが赤面してるような。

 視線が何か泳いでるような気もする。


(らいむ、すっごく前が膨らんでるよ)


 おっと途中からまったく意識してなかったが、狩りの途中からこうなっちゃったままもうどうにも戻らなくなっちゃってたんだ。


「ライムさん、すごく顔色がよくなったみたいでよかったです」


「ありがとう。心配かけたな

 もう大丈夫だ」


 俺は軽くそう応えて、いつものようにDropアイテムを並べていく。

 ミランダさんがなんかそわそわしながら買取のほうをしてくれてる。


(たぶん、らいむがフェロモン出しまくってるせいだよ。

 今なら誘えばすぐについてくるよ)


 俺がフェロモンを?

 そりゃないって、色男オンリーのスキルだろ、それって。

 それに別にそういうの興味ないし。


(あれ? この女を気に入ってたんじゃなかったっけ)


 そうだな。

 確かに以前は結構気に入ってたかもしれないな。

 でも、そんな気になったこともあるけど、アンジェと比べたら他の女とか、もうどうでもいいし。


(ふぇぇ……)


「ライムさん、聞こえてますか。ライムさん」


 とか、行ってる間にまた呼ばれてたようだ。

 どうもアンジェと話してると他のことが疎かになっちまう。


「あっと失礼」


「精算終わりましたよ。全部で77,960ゴールドになります」


 午後だけでそんなになったのか。

 狩り場もいいかげん、下の階層に行ったほうがよさそうだな。


 すべて用は終わったし、さっさと帰るぞ。

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