表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

2 魔剣と呪い

 いや、ダメだろ、この剣。

 これを装備してみようというのは、毒薬のラベルが貼ってあるビンを飲み干してみようってのと同じくらいダメだろ。

 俺には鑑定技能とかないけど、誰でもわかるって。本能がこの剣は呪われてるって言ってる。

 この剣が呪われてない確率は、さっき考えてた二択より確率が低そうだ。


 落ち着こう、俺。

 きっと腹が減ってるせいだ。

 最後の非常食だが、干し肉をゆっくり食べて考えよう。


 しっかり噛んで食べると少しの量でも腹が膨れる。

 貧乏人の知恵だ。

 最後って言ったが2食分にできるかもしれないな。

 少しだけ腹も満ちたから干し肉は半分残しておくことにした。


(お腹すいたー)


 今なんか声が聞こえたぞ。

 幻聴か?


「誰か居るのか」


(声を出さなくても大丈夫だよ)


 頭の中に声が直接響いてくるようだ。

 一体誰だ。

 どこにいるんだ。


(あなたの目の前にいるよー)


 目の前って……

 何もいないんだが……もしかして幽霊!


(うーん、そんなんじゃないよー。ちゃんと見えてるはず)


 そう言われても何も見えるものは……

 ……もしかして……剣?……


(うん)


 この剣が意思を持って俺に話しかけているっていうのか……

 俺、ついに極限状態で気が狂ったのか?


(気が狂ったって自分で思うような人は本当は狂ってないって昔の誰かが言ってたよ)


 そういうものなのか。


(うん、おじちゃんは誰かな? 魔王さまじゃないよね)


 おじちゃんって言われるほどの年でもないと思ってるんだが、それはまぁいいや。

 魔王さまって、お前は魔王の剣だったのか?


(うん、そうだよ。魔王さまは強かったんだよ)


 ここは魔王の居城だったのかな?


(そういうのは、よくわからないけど、よくここでいばってたよ)


 そうか。

 俺はここに迷い込んじゃった冒険者なんだけど、ここから出られなくなって困ってるんだ。

 もしかしてここからの出方を知ってたりする?


(うん、簡単だよー)


 教えて欲しい。

 あ、通路の先を通ってってのはダメなんだ。

 強いモンスターがいっぱいで通れないから。


(この部屋からピュッとお外へ出られるよ)


 それはいいや。

 ぜひ教えて欲しい。


(んとね、お腹すいたからさっき食べてたのくれたら、教えてあげるー)


 それくらいなら喜んで。

 半分食べちゃったから少ししかないけど。


(わーい。おなかぺっこぺこなの)


 俺は干し肉を持って剣に近づいた。

 どうやったら食べれるのかと思ってそのまま剣に触れた瞬間……


 すごい衝撃が俺を包んだ。

 ここから出られると聞いて嬉しくてつい触っちまった。


 呪われたよ。

 これ初めてでもわかるよ、俺呪われたんだって。

 騙されたよ。


(はやくちょうだいよー)


 あれ、騙したんじゃないの?

 俺、このまま剣に吸収されたりするんじゃないの?


(そんなことしないよー。刃のところにお肉くっつけてー)


 言われたとおりにすると、干し肉は剣に飲み込まれていった。


(うん、美味しい。おじちゃんありがとう)


 いえいえ、どういたしまして。

 それで、ここからの出方を教えてもらえるのかな?


(うん、わたしを持ったまま、椅子の後ろのまーるい模様のところに行って)


 言われたとおりに持ったまま椅子の後ろの魔法陣へ、っていうかもう離せないんですけど。


(じゃ、行くよー)


 魔法陣が光ったかと思うと俺は外に出た。

 もしかしてと思ったが、剣は持ったままのようだ。


 ここはどこだろう?

 ダンジョンの入り口じゃないな。

 しばらくあたりを見渡してわかった。

 ダンジョンの入り口からは数百メートル離れた丘の反対側のあたりだ。

 何やら朽ちた石碑のようなものがある。

 もしかして、中へ入るのも簡単に行ける?


(うん、すぐ行けるよ。行く?)


 いや、今はいいや。

 でも、この剣どうしよう?

 街に戻るにしても、ドス黒いオーラの出てる剣を持ったままとか衛兵に捕まりそうだ。


(もやもやしてるのがおじゃま?)


 消せるのか?


(うん)


 そう言うと剣からのオーラは消え去った。

 便利だな、オーラは自由に操れるのか。

 でも、剣を持ったままなんだよな。


(カバンに入れたり、腰に差したりしても大丈夫だよ。

 盗られたり、なくしたりしない便利機能つきだからね)


 え、呪いじゃなくて便利機能なの?


(うん、戦いの最中に落としたりしないから便利だよ)


 魂吸い取ったり、狂戦士になったりの呪いはないんだね。


(んとね、ちょっと強さが変わるって言ってた)


 そうなのか。ステータス確認してみよう


 【 名 前 】 ライム・パースロン

 【 職 業 】 戦士

 【 レベル 】 23

 【 体 力 】 480+240

 【 魔 力 】 120+60

 【 攻撃力 】 320+160

 【 防御力 】 280+140

 【 俊敏性 】 250+125

 【 スキル 】 剣術 初級回復魔法 初級一般魔法

 【 状 態 】 呪い


 やっぱり呪われてるじゃないか。

 でもなんかステータスがすべて50%増えてるぞ。

 これが呪いの効果なのか……呪いっていうより祝福じゃないか、これ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ