命の恩人
「ここは・・・?」
目を覚ますとふかふかのベッドの上にいた。もちろん貧民街でそだったおれはこんなベッドで寝たことはない。そもそも俺は床で寝ていたためベッドですら寝たことがない。
「あら、起きてたんですね」
「だ、誰ですか?」
目の前には黒い髪の少女がいて、笑顔で振る舞ってくれた。
「私はこの村にすんでいるメルシィという者です。」
「あ、ああ、よろしく。というかこれはどうゆう状況なんだ・・・?」
そう、俺はその時記憶が飛んでいた。たしか貧民街で食べ物と金を盗んで。それから逃げて。そこからの記憶がない。
「村の近くで倒れていたので拾ってきたんです。私困った人など見ると助けたくなってしまうので。あ、どこか痛むところはありませんか?」
そうだ。俺はあのあと村を見つけて倒れてたんだっけ。それで救ってもらったってわけか。
「あ、ああ、大丈夫だよ。それよりおなかがすいたかもしれない・・・」
「おなかがすいたんですか?待っててください、いまもってきます!」
そう言うとすぐに部屋から出て行って準備をしにいった。なんか申し訳ないな。ただでさえ救ってもらったっていうのに飯まで用意してもらうなんて。
しばらくすると彼女がもどってきた
「お待たせしました!どうぞ、おいしいですよ?」
けっこうな量だ。コンソメスープに焼き立てのパン、そしてチキンが皿の上に置いてある。俺は運ばれた瞬間我慢ができなかった。軽く三日なにも食べてなかったからこんなにうまい飯を食べれることが幸せだった。
そしてあっという間に平らげてしまった。
「ふふ、そんな嬉しそうに食べてもらうと、こっちもうれしくなってしまいます」
彼女はそう言いながらまた笑顔でこっちを向いた。
「すまない。助けてもらったうえにこんなうまい飯をだしてもらうなんて。何かお礼をさせてくれ。なんでもいいぞ、えっと・・・メルシィさんだっけ。なんでもするから何かお礼をさせてくれないか?」
俺は感謝と罪悪感で頭がいっぱいだった。それにこんなに人にやさしくしてもらえるのは初めてだった。
「わ、私ですか!そ!そんな!お礼なんて!」
彼女はなぜか慌てた様子で手をふったりしている。
「ああ、お礼をしないと気が済まない。お願いだからなんでも言ってくれ。なんでもいいぞ!」
「じゃ、じゃあ・・・。」
彼女は少し悲しそうな表情で言った。
「ああ。」
「・・・この村を救ってください・・・」
メルシィの表情は急に暗くなった。