貧民街で育った一人の男
この世界、ウリンジェは人それぞれが異能具や魔道書を持つ。そしてその能力は人によって異なる。
「く!ふざけんな!返せ!」
俺はルイン・オールスタイン。貧民街に住む一人の少年。年齢は16歳だ。
「お前はなんの異能具も魔導書ももたないクズなのにこの俺にさからうってのか?」
そう、俺はなんの力も道具もないクズだ。今まで魔法の一つも使ったこともない。異能のも使えてない。そんな俺でも・・・
「返せ!それを返せ!」
「どうせお前には使えないだろ?」
そんな俺でも守りたいものがあるんだ。
「それは俺の先祖代々受け継がれてきた大事な魔導書なんだ!」
そう、魔導書。魔法のひとつも使えない俺でもあの魔道書だけは絶対に渡してはいけない。
「お前にこれが使えたとしてもこの魔導書、すっげー弱そうだぞ?薄っぺらいし。まあ、ちょっとの金にはなりそうだから安心しとけって」
そう言って男は気味の悪い笑いかたをする。この貧民街は金のためならなんでもするんだ。金のために決闘もする。盗みもする。殺しもする。
「そんな返す気がないのなら・・・」
「返す気がないのなら?」
「俺と決闘しろ!」
その言葉は心の奥底から一気に吐き出された。こんなやつに勝てるわけがない。こいつは・・・
「俺はこの貧民街最強の魔導書、ブレイドダンスの持ち主なんだぜ?あとすこしでこの貧民街からでられるんだよ。あと少しの金があればなあ!そうだな、決闘にはこの魔導書と金を賭けよう!」
そう、こいつはこの貧民街最強の魔法使い。そんなやつに勝てるわけがない。だが、書を渡してはいけない。先祖代々受け継がれているあの書は絶対に失ってはいけないと何度も言われているらしい。さらに、もしあの書をオールスタイン家の手から一日でも離せば世界に災厄の日々が訪れると言い伝えられている。だから・・俺は。
「うん、そうしよう。もし俺が負けたらその書と金を全部くれてやる。その代わり、俺が買ったら、お前の書と金を全部もらっていく!」
「ひゃっひゃっひゃ!まじかよお前!そうとなったらさっそく戦おうぜ?人も集まってきたし、ちゃっちゃとけりつけてやんよ!」
「うあああああああ!」
俺は思いっきり殴りにかかった。
「はっはっは!お前正気か?こい!剣たちよ!ブレイドダンス!」
男の周りには剣が1本、2本、いや、もう軽く5本くらいだろうか。一瞬で召喚されて一瞬で刃の先端がこちらに向く。
・・・終わったかもしれない。