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夕闇の傾国  作者: 檸檬
7/8

捜査


「‥そうか。引き続き捜査を」

「はい」


去って行くロロクを見、聖騎士クリエラはため息をつく。

あってはならぬ事だ。

聖騎士が殺されるなど。


しかもそれがあのカザハヤとはーー

ロロクと並んで疾風迅雷と称されたあのカザハヤとはーーー


信じられない、というのがクリエラの正直な思いだ。聖騎士の中に彼より強い者はいくらでもいるとはいえ、クリエラ隊で1、2を争う戦闘力を持っていたというのに。


セレナは、大丈夫だろうか。

彼女とカザハヤの関係は周知の事実。

早く目を覚ましてもらわなければ。

カザハヤ殺しの捜査の為に、セレナの魔術は必要なのだ。


クリエラは下唇を噛む。


このままでは。

このままでは、せっかく手にしたこの地位を失うことになってしまう。

だから女に隊長を任せてはいけなかったのだと、アキ様まで非難の対象にしてしまう。


いや、それ以上に問題なのは。


聖騎士は殺せると世に知らしめてしまったこと。

勿論今までに殺された聖騎士は数知れない。

しかしそれは、犯罪組織との大規模な争いや戦争において。

誰に殺されたのか、どのように殺されたのかさえ分からないなど前代未聞。


この国は平和だが、それは聖騎士という圧倒的武力による監視があるからだ。

皆が笑っているこの国も、一皮剥けば不満や暴力が現れる。


それが分かっているクリエラは、もう一度唇を強く噛んだ。


「セト、セレナの様子はどうだ?」

「変化無し。見ていて退屈だ」


メガネをかけた少年が薄ら笑いで答える。


いやな顔だ、とクリエラは思った。

上層部から送られてきた者なので、無下にできないのが苦しい。

線の細い、神経質そうな少年。

だが、その魔術は侮れない。


「なら、ロロクの補佐についてくれ。それなら退屈しないだろ?」

「配慮、感謝するけど。どこに行っても退屈なのは変わらない」


少年は、また笑った。

暗い笑みだった。






なぜこうなってしまったのだろう、とロロクは考える。

風魔術を使いマゴール邸に飛んだ時には思いもしなかった。


眼前のカザハヤの死体が、責めているような気さえする。


本当に、なぜ。

せめて自分が居れば。

カザハヤと2人で敵と対峙できていれば。

結果は違ったに違いない。

それとも、それでも敵わない程の強敵だったのだろうか。


ロロクは部屋の窓から外を見る。

また聖騎士が殺されるのを防ぐためだろう、多くの衛士の姿がある。

赤髪の衛士の姿もあった。


ロロクは切断遺体に向き直る。

風魔術で切断面を探り、1人頷く。


やはり、そうだ。

1箇所だけ、風魔術以外のもので切断されたらしき傷がある。


切断面が、粗い。


恐らくは人の手によるもの。

が、そうだとすると余程の手練れだ。


「ロロク、何か分かったのか?」


かけられた声に、ロロクは顔をしかめた。

セトだ。

高慢な、しかし能力のある少年。


「いや‥‥」

「へえ。今までに解ってることがあるのか?」

「殺された6人の身元‥‥‥のみだ」


少年はロロクに手を差し出す。

首をかしげるロロクに、少年はため息をついた。


「名簿」

「っ‥‥そこの衛士、名簿を頼む」



衛士から渡された名簿を見て、少年は嘲笑った。


「聖騎士は脳筋バカの集団か。見るだけで分かるだろ」

「‥‥?」

「被害者6人の中に、マゴール家当主、セツェ・マゴールが存在しない」

「っ!」


それは、つまり。

マゴール家当主が犯人だったということか?

しかし、セツェ・マゴールは魔術が使えなかったはず。

加えて、自宅で殺す意味が分からない。


そう反駁するロロクに、少年は苛立った面持ちを見せる。

それを見て、少年の態度に怒りを覚えていたロロクは冷静になった。

この少年の能力は高いが、こう素直に感情を見せるようではいけない。

現場をそう知らないのだろう。



「セト、クリエラから帰還命令が出ています。それから、あまりロロクを困らせないであげて下さいね?」



聴こえてきた優しい、柔らかな声に、ロロクは一瞬呆然とする。


次の一瞬、その場に膝をついた。

頭を垂れる。


セトも立ったまま頭を下げた。


「おやおや、ひどい現場ですね」


現れた男は、にこにこと笑いながらそう言った。












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