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Chapter 0: The Girl of Flowers
俺は、あいつのことを、ひどく変わったやつだと思っていた。
毎日、同じ光景を目にしていた。
一人の女子生徒が、いつも決まって外に出ていく。
時間を見つけては、静かに花壇の前に腰を下ろす。
そして、ただひたすらに、じっと花を見つめている――というもの。
なにを考えているのかも、なにを感じているのかも、俺にはわからない。
だけど、あいつは毎日そこにいた。
まるで、それが当たり前みたいに。
天気のいい日なら、わからなくもない。
気分転換とか、日光浴とか、そういうやつかもしれない。
教室にこもってばかりじゃ、息が詰まるだろうし。
――でも、そいつだけは、違った。
風の吹く日でも。
雪のちらつく日でも。
雷が鳴り響く日でも。
そして、雨が降る日でも。
小さな傘を差し、肩を濡らしながら。
雨の雫にぬかるむ足もとにも、視線ひとつ落とさずに。
ただ静かに、黙って花を見つめていた。
まるで、花に寄り添うことだけが――自分のすべてだとでもいうように。