なな
バッチイマンは今有給を消化しています。しかし、休み明けの職場に居場所はあるでしょうか。このまま首になってしまったらどうしようと不安です。
万が一、そうなってしまった場合に備えて、求人誌を集めに行ったり、預金を確認しに行ったりしました。
あと半年くらいは仕事がなくても何とかなりそうです。
とりあえず胸を撫で下ろしたバッチイマンは、町へ戻りました。
しかし何だか様子が変です。
町の人たちがしくしくと泣いています。血を流している者もたくさんいます。火の手が上がっている家もあります。
どうなっているんだ。
しばし呆然としていましたが、我に返ったバッチイマンはすぐに踵を返します。普段絶対に使うことのない背中の羽を大きく羽ばたかせました。
「オニギリマン! オニギリマン! どこだ、オニギリマン!」
いつも町の空をグルグルと巡回しているはずのオニギリマンがいません。
オニギリマンに何があったのでしょう。バッチイマンは心配で心配で、もう胸が張り裂けそうです。
子どもたちは森の学校に通っているので大丈夫でしょう。森の中は不可侵と協定で決まっています。
問題は、町がこうなってしまったのに姿を見せないオニギリマンです。
彼の身に何が起こったのでしょう。まさか、自分以外の悪者に倒されてしまったのか。
町中を舐めるように飛び、落ち着きを取り戻したバッチイマンは、あるとんでもない予想を思いついてしまいました。
いやでもそんなことがあるはずがない。
あってはならない。
でもこの町のヒーローは普通ではありません。
オニギリマンなら――規格外の彼ならしでかしてしまうかもしれない。
確認しなくては。
バッチイマンは震える手で、自分の家のドアをゆっくりと開けました。
つづく