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ご
オニギリマンは空が飛べます。
一日の終わりに町を上空から見下ろして「今日も平和だった」と言うのが日課です。
バッチイマンは空が飛べます。
しかし、だからといって滅多に飛ぶことはありません。
一日の終わりには子どもたちとリビングで談笑するのが日課です。
オニギリマンには帰る所がありません。
彼は一人です。
家族はいません。
彼には何もありません。
ずっと昔。
彼にも家族がいました。
ヒーローになるために家族を捨てました。
知らなかったのです。
大切だと気付けませんでした。
自分のことだけを考えていました。
他の人の気持ちを気遣うことができませんでした。
だから彼は今、ひとりぼっちです。
オニギリマンは正義の味方としては優秀ですが、まともな倫理観を持ち合わせていませんでした。
ヒーローなのに、善悪の区別がつきません。
『正義の味方ならこうあるべき』という理想像に基づいて生きています。
心の中は空っぽなのです。
彼は今でも、自分のためにしか動きません。
オニギリマンはヒーローに向いていない。
ヒーロー失格なのです。
おわり