さん
バッチイマンはとても心配性。いつも何かを気にしています。
「家の鍵は閉めたかなぁ」
「子どもたちは学校でいじめられてないかしら」
「忘れ物はないかな」
等々、頭の中はいらぬ心配でパンパンです。
「バッチイマンくん、ちょっと来なさい」
ある日、バッチイマンは仕事中に上司の鈴木さんに呼ばれました。
「なんでしょう」
「これは何だね」
目の前に突き出されたのは、バッチイマンが今日の午前中に提出した会議資料です。
「会議のために私が作成した資料ですね」
「見ればわかる。そんなことより、ココだ」
上司の鈴木さんはかなりご立腹。いったいぼくが何をしたっていうんだ。
メンタルが人より弱いバッチイマンは、上司の高圧的な態度にもう泣きそうです。
「あ……」
バッチイマンは思わず声を上げます。
上司の指さすところには、バッチイマンが仕事中も考えていた心配事がズラッと書かれていました。
心配し過ぎて指が勝手にパソコンのキーボードを打ってしまったのでしょう。
「どうするんだ。今から印刷したのではこの後の会議に間に合わないぞ」
「すみませんすみませんすみません……」
バッチイマンは謝ることしかできません。
上司の鈴木さんはため息をつきました。
バッチイマンの肩が遠目に見ても明らかに大きく跳ねます。同僚たちの視線を背中で感じます。
「最近、集中してないんじゃないか?」
声が出ません。
「そういえばきみの有給はまだ残っていたね」
「あ、あの……」
このままではまずい。しかし言葉が続きませんでした。バッチイマンはうなだれます。
「じゃあ、後のことは任せて」
早退する彼に上司や同僚はそう声をかけます。
バッチイマンは溢れそうになる涙を一生懸命こらえて退社しました。
おわり