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オニギリマンはできるだけ、町のみんなの質問には素直に答えるようにしています。
「なぜ、空を飛べるの?」
「主食は何?」
「おうちはどこ?」
町の人たちは無遠慮にそう訊いてきます。そうですよね、ヒーローは身近な存在なのですから。
オニギリマンはいつも真面目な顔をして答えます。
「空を飛べるのはマントがあるから」
「好きな食べ物は梅干しだね。まぁでも、基本的に米に合うものなら何でも」
「アジトが周知のものだったら大変だろう。悪役に襲われてしまう」
彼はいつでも好青年です。
町の人たちは彼がどこからやってきたか知りません。オニギリマンはある日突然、当然のように存在していました。
しかし、はじめはヒーローと相対する『悪者』なんて存在しなかったのです。
『悪者』は、オニギリマンの後に、ヒーローの登場と同じようにいきなり町に出現しました。
「しかしあれだね。町のみんなへの回答なんて、ほとんど選択肢が決まっているようなものなのに何で何度も尋ねてくるんだろうね」
「それはね、オニギリマンが特別だからだよ」
バッチイマンの子どもその1はおままごとの片手間にオニギリマンの愚痴を聞いています。
「そりゃあぼくはヒーローだもの。特別なのは当り前さ」
「みんな特別な人とは仲良くしたいって思ってるんだ」
「ぼくだったらヒーローなんて胡散臭いやつには絶対近寄らないけどね」
「オニギリマンはヒネクレモノだなぁ」
けらけらとバッチイマンの子どもその1は笑います。彼女は今、おままごとの飼い犬という設定です。犬が喋ってる。
「ぼくはきっと『悪者』側なのさ」
「ええー」その1はあきれたようでした。「そんなこと言わないでよ」
オニギリマンはそっぽを向きながらニコニコします。
視線の先には町の人がいました。
「いい天気だなぁ」
空には雲一つありません。
「わんわん」
子どもその1は犬なりの相槌を打ちました。
おわり