いち
オニギリマンは今日も元気。オニギリマンはヒーローなので空を飛んで町にパトロールに出かけます。
「たすけてー! オニギリマーン!」
ほらみんなが救助を求めてる。今行くぞ。
「アハハ、こわすぞー」
バッチイマンが家の壁を壊しています。
「やっつけて!」子どもたちが言います。
「よしきた」
オニギリマンはバッチイマンを殴りつけました。
「いててて……何するんだ!」
「だって人の家を殴っていたじゃないか。見てみろ、壁がこんなにボロボロ」
「おれはリフォームしていたんだ!」
「りふぉーむ?」
オニギリマンは横文字が苦手です。バッチイマンの言っている意味が分かりません。
「またそんな嘘ばっかり! やめなさい、まったく!」
「嘘じゃない! ここは俺の家だ!」
そうだっけ。言われてみればそうだった気がする。
「おまえは自分の家を破壊していたのか!」
「違うよ! 古くなったから新しくする、それだけだ!」
「取り換えがきくぼくの頭部みたいなもんか」
「うん、まぁ」
「なるほどー」
しかし、それではどうして子どもたちはオニギリマンにたすけてと言ったのでしょう。
「なぜなんだい」オニギリマンは優しく彼らに問いかけます。
「今までのおうちがいいの!」「そうだ、そうだ!」
「だそうです」
それを聞いて、バッチイマンは困ってしまいました。
「そうは言ってもおまえたち。こんな家ではまともに暮らせない。雨漏りはするし、電気もガスも通ってない。トイレもお風呂もない。新しくすればもっと素敵な暮らしができるんだ」
「バッチイマン、おまえらすごい家に住んでるなぁ」
「褒め言葉としてとっておくよ」
いや、ポジティブ過ぎるだろ。と、オニギリマンは思いましたが黙っていました。それを言ったらバッチイマンに殴られる気がしたからです。
「それならいいや」「新しいおうちバンザイ」子どもたちは手のひらを返したように喜び始めました。
バッチイマンは家族の同意を得た所で『りふぉーむ』とやらを再開します。
「平和だなぁ……」
オニギリマンは空を飛びながら、そう呟きました。
おわり