誕生日、これしか出来ない僕だけど。
♡
「「「「「「「「♪~ハッピーバースデートゥーユー×2(かける2)、ハッピーバースデーディアあきらちゃーん、ハッピーバースデートゥユー。お誕生日、おめでとう!!」」」」」」」」
わぁ、皆揃って私の誕生日を祝ってくれてる!
パーン!パーン!
「わぁ!ありがとうございます!」
ふー、ふー、ふー、ふー、ふー
ロウソク多かったわね。2つもケーキを用意してもらって、突き刺さってるケーキは全部で22本。私11歳になったんだけどなぁ。
「さぁ、お召し上がり下さい。今日の為に、わざわざシェフも動員しました。」
「これアイスで出来たホールケーキだ。」
「ひんやりしてておいしいよ!」
早っ!トモくんとナナちゃん、私より先に食べてるなんてぇ。
それにしたって、中々これは豪勢な料理ねぇ。初めて見たわ、北京ダックにチーズフォンデュ、貝殻みたいなのが付いてるものは確か、エスカルゴっていうんだっけ?エスカルゴってカタツムリだよね!あっ、でも、美味しいわね。
あと、女の子が多いことを意識したんでしょうね、なるべく脂ものを控えてくれてるわ。助かる~。
今日の私の誕生会、参加者は
今日の主役である私、あきら
自宅を貸してくれた麻耶ちゃん
かなちゃん
ナナちゃん
森嶋さん
絵美裡ちゃん
智美ちゃん
赤崎先生
そして男子で唯一参加した、トモくん
私を入れて9人が参加。規模は小さいけど良い感じのお祝いパーティね。何だか、もっと多くいるような賑やかさも感じられるわ。
「あきらちゃん、楽しいですわね。こうして仲の良いクラスメイトと、お世話になってる先生に集まってもらって、ワイワイ出来るのですから。」
「なんかもう、何もかもに感謝だよ。」
「本当に最高よね、あきらちゃんにとっては。」
「どうして?かなちゃん。」
「あきらちゃんのカレシさんもいるじゃない。」
「も、もぉ!やめてよー!」
「僕は大体慣れたよ、その呼び方。たまにドキッとする時もあるけど。」
「じゃあそろそろ新しいあだ名に変えなきゃね!」
「わ、分かったから、呼びたいように呼んだらいいよ。」
適応力良いんだからぁ、トモくん。もう「カレシさん」って呼ばれたって、上手い事返せるんだもんねぇ。
「あきらちゃんのお誕生会、今日は色んなイベントがあるから、盛大にあきらちゃんを弄っても構わないわよ!」
「何でかなちゃんが仕切るのよ。」
「何だか、こういう場面になっちゃうと、仕切りたくなっちゃうのよね。」
か、変わった性分、なのかな?私だったら、やりたくないよ。人前に立って何かするのって。
「かなちゃん、司会をするの大好きなんですね。」
「そうね、今度学校でもやろうかしら。」
ますますやる気よね、かなちゃん。何をしでかすやら。
楽しい食事が済んだところで、私が赤っ恥をかくイベントへ…。
「次は、あきらちゃんの過去を振り返るコーナー!あきらちゃん、アレ、持って来た?」
「持って来たわよ。はい。本当は、超恥ずかしいんだから。コレを人に見せるのって。」
「恥を忍んで持って来てくれたあきらちゃんに拍手を送りつつ、皆であきらちゃんの記念アルバムを読みましょう!」
私のアルバムを読むのって、かなちゃんが発案したのよ。知ってるでしょ!誰だって自分の過去露わにされたら恥ずかしいの!
「見てみて!これ幼稚園の頃のあきらちゃんよ!」
「わぁ~。お姫様みたいに愛おしいですわ。」
「あっ、この頃のあきらちゃん、先生見たことありますわね。」
保健室の赤崎先生も今日は来てたのね。赤崎先生…、あっ!私も幼稚園の時、どこかで見たことある!けど、どういう時だったか、思い出せないなぁ。
「あっ、ここにもあきらちゃんいた。」
「この写真の片隅にちょこっと写ってて、恥ずかしがり屋なの今と変わらないね。」
これは、幼稚園卒園する頃ね。上手く笑えなかったのよね、この頃は。あっ、今もそうね。
そうやって女性全員が私のアルバムを見ていると、あることに気がついた。周り見たら、トモくんがいなかった。よく見たら一人でサラダを食べながら「僕、見ても良いのかな?」と訴えかけるような視線を私に送ってたわ。ダメよ、トモくん。見に行かなかったって事は、分かってるわよね?
「さぁ、こんなにも貴重な写真の数々、例のカレシさんには見せない訳にいきまへんな~。」
えっ、ちょっと、かなちゃん、まさかそのアルバム、トモくんに見せる気なの?
「ぼ、僕は、いいよ。」
「あら、興味無いんだ。」
「いやっ、あっ、あるよ!でも、あきらちゃんからしたら、僕に見られちゃ恥ずかしいんだろうな、と思ったから、見ないようにしたいんだけど。」
「ほぅ…」
な、なんで頷いてるの?かなちゃん達。
バタバタ…
ナナちゃんがトモくんを羽交い締め!そのままアルバムの前に移動させてる!
「ちょ、ちょっと!僕は、僕はあのー…」
次に言う単語を迷ってる間に、私のアルバムの前に来ちゃった!ヤーメーてー、ほしくないかも。
○
「あの、だから、僕はいいんだって!腕が動かせないよ!」
あっ、こうやって恥ずかしい思いしながら、あきらちゃんは僕に腹を見られたんだ。
じゃなくて、このままじゃあきらちゃんの過去が僕の目に触れることになっちゃう!あらっ?あきらちゃん、止めないの?一瞬止めにかかる仕草が見えたんだけどなぁ。いいのか?あきらちゃん。僕、見るぞ。
あっ、これは。相当貴重な写真だなぁ。それにしても、笑顔少ないなぁ。これって、父親に撮られてるのかな?まぁ、あの親父だったら、笑うにも笑えないだろう。
ただ、可愛げがあるね。不思議と、癒されるねぇ。6~9歳ぐらいの女の子だけど。
「トモくん、私のアルバム…、どう?」
「えっ?あぁ、そうだなぁ。あの、全体的に笑顔が少ないなぁ、って思ったよ。写真の端っこにいたり、恥ずかしがってる仕草もよく見かけるし。」
「あら大変!麻耶ちゃん、カメラある?」(かなちゃん)
「只今取って来ます!」
えっえっ…、何で?僕は感想言ってる途中なんだが。そうしてる間に、何かあきらちゃんも困惑気味になっちゃったし。それに「カメラ取って」って言ってたか?まさか、僕にカメラマンをさせる気なのかなぁ?
「はーい、トモくん。持って来ましたわ。41万円の一眼レフカメラです。」
よ、41万円!?高っ!扱いづらんじゃないかなぁ?
「このボタンを押しますと、自然とシャッターが切れて、焦点も合うんですよ。対象物を、とっても綺麗に撮る為に改良されてありますわ。」
そ、そうなのか。きっと、麻耶ちゃんとこの会社で作ったんだろうなぁ。まぁー良くできた製品だこと。
で、対象物というのが…
「ほらほら、撮ってもらいなよ。あきらちゃんを中心にしてさぁ。」(ナナちゃん)
やっぱり僕が撮るのか。うひゃー、なんでか知らんけど興奮してきたなぁ。それでもって、あきらちゃんを中心に皆で取り囲うように周りを埋めちゃったしなぁ。これはもう、撮られる準備万端みたいだな。1人だけ表情が硬い子がいるけど。
「じゃ、じゃあ、本当に撮ってもいいのね?」
「ちょっと待ってね、トモくん。ほらほら、あきらちゃん、折角トモくんが撮ってくれるんだから、もっといい表情でいなきゃ。」
「ちょ、ちょっと待って。こ、こんな感じで良いかな?かなちゃん。」
「おっ!徐々にだけど笑みが出てきたわね。トモくん、いつでも撮っていいわよ!」
「はーい。そんじゃ、撮るよ。はい、チーズ。」
…カシャ
シャッター鳴るまでに1秒かかるのね、このカメラ。
「次は、あきらちゃん一人だけ撮ってね!」
「えっ?ちょっとそれは…」
こんな感じの反応になるよなぁ。正直、さっき撮った時だって、僕は結構ドキドキしてたんだが。
「じゃあ、と、撮るよ。」
「う、うん。いつでもどうぞ。」
あぁ、この恥じらってる表情。一枚収めておきたいなぁ。
カシャ
「えっ!?撮ったの!?」
「あぁ、ごめん。今の表情良かったから、つい…。」
「ビックリしちゃった。合図送ってよ。」
「はい。」
怒ってる様には見えないけど、反射的に言っちゃったよ、「はい。」って。まぁ、急に撮られちゃ、誰でも驚くよな。
「じゃあ、撮るよ。3カウントの3つ数えたと同時に撮るよ。」
「う、うん。」
「はい、1、2、3」
…カシャ
あれっ?上手く取れないなぁ。今のあきらちゃんの表情も、笑顔だったけど、どことなくちょっと硬かったし。
「上手く撮れてないようね。」
「そうなんだよなぁ。どうしたらいいんだろう?」
「あっ、少々お待ちください。」
そう言って、麻耶ちゃんが取り出したのが、ちっちゃいベル?
チリンチリン…
「白河さーん!いらっしゃいますか?メイドの白河さんが間もなくこちらに駆けつけてくださいます。」
「あ、ありがとね。ところで、どんな要件で呼んだの?」
「勿論、トモくんの代わりに写真撮影、カメラマンをしてもらう為です。そして、あっ、お耳をお貸しいただけませんか?」
「んっ?なになに?」
麻耶ちゃんの口元に僕の耳を近づけると
「また、ツーショットを撮る為です。トモくんとあきらちゃんの。」
わーお。ビックリした!そして脳裏に、氷川丸をバックにして撮ったツーショット写真を思い出しちゃったよ。まさかここでまたやるとは。
「お待たせしました。白河、馳せ参じました。御嬢様、どういった御用件で御座いましょうか?」
「白河さん、このカメラであの2人を撮影して下さい。」
「こちらの高級カメラで、あのお二方を撮影するのですね。承知しました。」
白河さんって、冷静な人だなぁ。僕じゃ、あんな振る舞い方出来ないよ。
「おっ!ツーショット!?」(かなちゃん)
「あぁ、素敵!」(絵美裡ちゃん)
「夢よもう一度と思ってたものが、現実に…」(森嶋さん)
わぁ、皆揃って、僕らに目が釘付けになってるよ。
「羽目を外さないように、先生見張ってますからね。特にトモくん。」
僕かよ。羽目外さない、と思うんだけどなぁ。
「それではご自由にポーズを決めて下さい。」
ポーズか。いつもなら、サムアップしてるとこなんだけど、何だか動作の一つ一つがぎこちなくなっちゃうね。このあとどうしたらいいかな?
そう考えてるうちに、あきらちゃんが…
「ねぇ、抱っこして。」
「んっ?抱っこ?」
「お姫様抱っこがいいなぁ。」
「お姫様抱っこ?だって今日、ミニスカート履いてるじゃない。直接脚に触るけど、いいの?」
「もちろん、いいわよ。むしろ、かなちゃん達に見せつけたいぐらいよ。」
な、なるほど。あきらちゃん、たまに大胆な事を思いつくよねぇ。不思議と、すごいと感じてしまうよ。
「ポーズ、お決まりになりましたか?」
「はい!それじゃ、トモくん、用意して。」
「お、おぅ。」
よいしょっと。あっ、あきらちゃん、軽いなぁ。それに、女の子の体は柔らかいし、左手が脚に触れてる。右手、あきらちゃんの腋のしたでよかったかな?「くすぐったい。」って言われそうなんだが、いいよね。
「あー、いいなぁ、あきらちゃん。」(絵美裡ちゃん)
「えへへ…、何だか、居心地がいいよ。」
「先輩、阪本さん重くないですか?」
「いや、全然重くない。むしろ軽いよ。」
「や、やだぁ。痩せてるかな?」
「うん。浮き上がりそうなぐらい。」
本当の事だよ。僕がお姫様抱っこした事ないだけだろうけど。多分、20kg満たないんじゃないかなぁ?
「それでは撮ります。はいチーズ。」
カシャ
タイムラグがあるの知ってか、白河さん「はいチーズ」の途中でボタン押してたなぁ。
そして、あきらちゃんはカメラに向かってピースしてた上に笑顔だったし、僕も出来る限りのスマイルでカメラに向かったし、なんとなくだけど、いい1枚が撮れたんじゃないかなぁ?
「今度は阪本様を正面にして撮ります。」
もちろんここでも、お姫様抱っこしたまま。あきらちゃんを正面に向かせたんだけども…
「おぉ、このアングルは、麻耶お嬢様のクラスの男子が発狂しそうですね。」
ま、まさか、あきらちゃんがミニスカ履いてる事が関係してるのかな?でも、あきらちゃんはノリノリだし。
とここで、あきらちゃんは少し体を起こした。
「ありがとうございます。阪本様の御顔が見えなかったところをお気遣いされまして。今ならいい写真が撮れますね。それでは撮ります。はいチーズ。」
カシャ
♡
何でかな?今こうして撮られてるのに、トモくんと一緒だと、楽しく感じちゃう。しかも、私、今トモくんの腕にお姫様抱っこしてもらいながら写ってる。何か、かなちゃん達も言ってるみたいだけど、今はそんな冷やかしの言葉が耳に入らないわ。
結局撮ったのは、9枚だった。何と何と、撮った写真がそのまま画面に写る機能も、そのカメラにはあった。あっ、写真じゃ、私こう写ってたんだ。撮られるたびに、私の顔がほころんできて、すっごく嬉しそうな表情してる。
「あのアルバムにはほとんど見られなかった表情だなぁ。」
「そうね。自画自賛になっちゃうけど、良く撮れてるわね。」
「そうですわ。私達、以前からあきらちゃんの可愛さに目を付けていたのです。」
えっ!?女子にも認められるぐらい、私って可愛かったの!?気が付かなかったなぁ。よく弄られるけど、いまいち理由が分からなかったけど、そういうことだったのかな?
「も、もしかして、そういう理由で、私をからかってたの?」
「からかうというより、私達が面白がってただけですわ。」
「そーよ。あきらちゃんが気づかなかっただけよ。」
あっ、皆?何で私のとこに集って来たの?
「さて、やっちゃいますか!」(かなちゃん)
「麻耶お姉ちゃん、私も参加していいですか?」
「もちろんですわ。」
あーあー、段々と皆の目が、私を狙ってるように見えてきた。その、獲物を取ろうと飢えてるような、はたまた目を輝かせているような、そんな形相をしてるわ。
「さぁ、ここで次のイベント!「あきらちゃんを捕らえよ!」をここに開催します!」
かなちゃん、それは当初の目次にあったの?
「さぁ、観念なさい、あきらちゃん。」
「えっ?ちょっと皆どうしたの?」
「スタート!!」
きゃー!こっち来たー!あーもー、何だかもみくちゃになってるし。誰が誰の胸触ってたり、脇くすぐってたり、お腹なでたり、スカートめくってた子もいたわ。
「やっ、くすぐったいよー。」
「それ私のおっぱいだよー。」
「誰かスカートの中覗いた…?」
「智美ちゃん、それ私の胸よ、あっはっはっは…」
「あっ、すみません。でも、麻耶お姉ちゃんのも、これは結構良いですね。」
「やーよー。あきらちゃんの方がもっとあるのよ。」
危なっ!こういう時の女子たちって、男子以上に厄介なんじゃないかなぁ?そう思ってる時だった。誰かが私の両腕をグイッと引っ張った。誰?
「まったくもー。おっかない女子達だなぁ。」
と、トモくん!?わぁ、良かった。この場にトモくんがいてくれて。
「あれっ?あきらちゃんどこ行ったの?」
「さっき迄私達に囲まれてたと思ったのですが。」
「阪本さんなら、私の先輩に腕を引っ張られて外に出ようとしていますが。」
あ"っ、バレた!
「トモくん!独り占めなんてズルいぞ!いくらなんでもあきらちゃんのカレシさんだからって!」
やっ、やだぁ。「カレシさん」だなんてぇ!だから、大変仲の良い友達なのよぉ!
「おっかねーな。あの女子達。」
「と、とりあえず逃げ切って!」
「そうはさせないわよ!皆、とっ捕まえるわよ!」
「「「「「「オー!」」」」」」
もう、何が何やら。本来のイベントから逸れてきちゃった。言っておくけど、今日は私の誕生日だからねー!
とりあえず急いで外に出た。
「だ、大丈夫か?少し強引に引き込んじゃったけど。」
「大丈夫よ。どこも怪我してないから。それより、早く後ろから来るあの女子たちから逃げ切らなきゃ、私、あの子らに弄ばれるわよ。」
「そうなるな。んっ?パーティ始まった時と比べて、曇天になってないかな?」
「あっ、本当ね。これじゃ、いつ降ってもおかしくないかも。」
もしかしたら、私のピンチを救ってくれるのは、意外なところからかも。
○
男子に追いかけ回されるなら、かなり必死になるだろうな。今回の面子なら、それほど必死こいて逃げるなんてことにならない。だって、女子相手だから。と思ったけど。
「ナナちゃんがいるのよ!あの子は特に気をつけて!」
そうだった!10月に入る前に開催された文化体育祭で、僕より脚が速かったナナちゃんがいるんだ!みるみるうちに僕らを追いかけてきたよ!
あっ、捕まるかな?と思ったら…追い越した!足からスライディングしながら僕とあきらちゃんの目の前に立ち塞がり、あきらちゃん目掛けて猛ダッシュしてきた!
「ボク、力には自信があるんだ。ボクがあきらちゃんを捕らえた隙に、皆が襲いかかってくる、これで作戦は完璧だね!」
作戦がだだ漏れなんだが。確実にこのままじゃあきらちゃんが捕まって、あきらちゃんの体を触りたがってる女子達の餌食になってしまう!強引だけど、アレをやるしか…
「きゃあー!捕まるー!んあらっ?」
思い切ってあきらちゃんの体を持ち上げた。重力に屈するかもしれなかったけど、とっさに思いついたのがこれしかなかったんだ。けど、思いのほか上手くいった。そしたら…
「おぉ、スカートめくれた。ピンクか。」
「どっ、どこ見てるのよ!ナナちゃん!私の下着見たでしょ!」
反動であきらちゃんのスカートがめくれ上がっちゃった。
「悪りぃ!そういう意図でやったんじゃないんだ。」
「分かってるわよ。トモくんは悪くないわよ。」
良かった。あきらちゃんに分かってくれて。
追いかけられて4分。屋敷の裏に回って小休止しようと思ったら。
「「「「いたー!」」」」
あーっ!こっちじゃ、かなちゃん、森嶋さん、麻耶ちゃん、仲野の4人がバリケード作ってたのか!こりゃまずいことになったぞ。どーすりゃ…
ぴとっ
えっ?何?何か冷たいのが落ちてきた!?これは…
ぴとっ、ピトッ…ザー…
雨降ってきた!
「あー、雨降っちゃったわね。これは、ゲーム終了ね。トモくん、あきらちゃん、勝ちよ。」
よかったー!逃げ切った達成感と、いい意味での安堵感があったし、あきらちゃんはにこやかだし、何とか…「カレシさん」としての役目を果たせたよっ!
「白河さん、傘をお願いします。」
「承知しました。私も含めまして、9本お持ち致します。」
「いや、8本で大丈夫です。トモくんとあきらちゃんは1本の傘に2人で入りますから。」
「8本ですね。承知致しました。」
だぁーっ!それはつまり、相合傘でしょ?麻耶ちゃん。
「な、何で私ら、1本の傘に2人入るの?」
「それは、私の密かな心遣いですわ。」
「恋人であり、夫婦であるあなた達にとって、ピッタリのシチュエーション…」
きっと、森嶋さんが言ってたのが、麻耶ちゃんの心遣いなんだろうな。
「わぁー!トモくんとあきらちゃん、お似合いね!」
「後ろ向きながら歩いてたら尻餅つくよ。」
それにあきらちゃん、赤面しながら目を伏してるし。このシーンを写真に写したら「僕の願望が叶った!」とでも言いたげな1枚になっちゃうしなぁ。
「あきらちゃん、笑って!」
「ばっ、ばかぁ。恥ずかしいんだからぁ。もぉー!」
僕だって、そりゃ恥ずかしいさ。
心なしか、あきらちゃんがいつもより早足で歩いてるように感じた。うん。屋敷に着いたら、相合傘しなくたっていいもんね。僕も同感だ。
「さぁ、気を取り直しまして、バースデープレゼントをここで送りましょう!」
やっと、本来の目的に戻って、あきらちゃんのバースデーパーティが再開された。さっきの2つのイベント、目次に入ってたのか?
「今回のあきらちゃんの誕生日にあたり、ここにいる出席者から直接手渡しで、また、あきらちゃんと関わりのある方々からのバースデープレゼントを、ここ、江藤邸に一時保管し、本日ついにあきらちゃんにお渡しするに至りました!」
パチパチ…
拍手の意図が何なのか分からんのだが。
これから渡されるプレゼントといったら、それはそれは、見ただけでもかなりの量がある。僕、さっき開かれてない部屋をこっそり開けたんだが、あのラッピングだと、もう誰に向けてのプレゼントだか分かっちゃったからなぁ。あんな大量のプレゼント、あきらちゃん1人で持って帰れるかな?
あと、当日参加した僕らは、また別の部屋でプレゼントを用意した。そして真後ろからあきらちゃんをびっくりさせるという演出まで施されてある。こう考えたのは、麻耶ちゃんだ。流石だね!
各人が思考を凝らして決めたプレゼントは次の通り。どのプレゼントを見ても、あきらちゃん喜んでたなぁ。
かなちゃん→ハンカチ
ナナちゃん→ハンカチ(かなちゃんのとは別の絵柄)
森嶋さん→メガネ拭き5枚(色違い)
絵美裡ちゃん→手紙と造花
麻耶ちゃん→オレンジジュース
仲野→グラス(保証書付)
赤崎先生→花束(プルメリアと言うらしい)
赤崎先生、変わった事言ってたな。
「このお花、あきらちゃんの誕生日に合わせたの。プルメリアって11月16日の誕生花よ。(※1)」
変わったと言うより、結構気が利いてるなぁ。僕のはどう言うわけか最後に回された。
他にも
小山先生→「宿題提出を忘れてもノーペナルティでいれるチケット」(こんなんでいいのか?教育者として?)
姐さん→「1日だけ智彦に何をしても良いチケット」(またチケットかよ。しかも、僕までとばっちり食っちゃったし!)
あきらちゃんのお母さん→「キャラもののぬいぐるみ」
などを貰った。あきらちゃんがそのぬいぐるみのプレゼントを見た時、かなり嬉しそうにしてたなぁ。ちっちゃい子みたいにギューッて抱きしめてたし。
さて、最後は僕の番か。
「センス大事よ!」
「分かってますよね?先輩。阪本さんは中途半端な物は好みませんから。」
なぜに皆からプレッシャーかけられる?大した物じゃないと言えばそれで済むんだけど、何だか、あきらちゃんの目が「期待してるよ!」と訴えかけてるようにも見えた。大丈夫かなぁ?僕のは。
そんなこんなで、恐る恐る部屋から箱を取り出した。これから渡すモノよりも一回り大きい箱だ。
「はい。お誕生日おめでとう!」
「ありがとね!トモくん!」
あーこれで良かったのかなぁ?段々と不安になってきたよ。喜んでもらえるかどうか。
カパッ
「わぁー!何これ?」
♡
こ、これって、私もよく見る、テディベアだよね?でも、このテディベア、何か違う。
よく見たら服装は、マクレレーン・ホルティ(※2)のチームウェアを着てるし、目のとこにかけてる赤いメガネは、あk…私を意識してるとしか見えないわ。
「トモくん、よく凝ったもの作ったわね。」
そうよね、絵美裡ちゃん。既製品に止まらず、一手間加えたのがポイント高いわね。
「このテディの服装は、母が裁縫得意だから作ってくれたんだ。「お母さんも手伝わせて!」って、何だか乗り気だった。でね、僕はメガネを作ったんだ。お察しの通り、あきらちゃん意識したんだ。」
察してたって、何で分かったの?それに、トモくんのお母さん、本当に裁縫上手よね!この間泊に行った時、あまり喋らなかったけど。何だか「こういう製品があるのかな?」なんて思っちゃったわよ。スゴーイ!よく出来てる!
「あとね、テディベアの手元見て。何か持ってるでしょ?」
あっ!本当だ!よく見たら、あるわね。何だろう?絵美裡ちゃんに続いて、手紙かなぁ?手紙だったら、泣きそう。
「オー!ここもトモくんらしいわねぇ!」
そ、そうね。描かれてたのは、マクレレーン・ホルティのF1マシンに乗る私が、誕生日をお祝いされて、皆に手を振ってる様子を真っ正面から写し出してる絵。しかも、漫画チックに描けてるわね!これは、大切に取っておこう!
「以外ね、トモくん。私だったら、ミニチュアモデルのF1カーか、ハンドル持ってくるかと思ったわ。しかも、裏側のパドルでギヤを操作するタイプの。」(絵美裡ちゃん)
あぁ、トモくんがよく車の運転をする時にやる、あの動作ね。指先で弾くような、あの感じ。あまりに真新しいから、運転してるとは最初気付かなかったわ。
「ミニチュアモデルも、ハンドルも結構高いんだよ。とても小学生に買えるような代物じゃないよ。」
まぁ、そうよね。アレは、私金額見た事あるけど、高いったらありゃしないもの。麻耶ちゃんにあれこれおねだりしなきゃ買えないわ。
「あきらちゃん、どうだった?皆からプレゼント渡されて。」(かなちゃん)
「そ、そうね。中にはおかしな物もあったけど、どのプレゼントにも、気持ちが込もってて、本当にありがたいです。」
パチパチパチパチ…
ど、どうしよう。今にでも泣きそう。今周りに人がいなかったら、間違いなく泣くわね。
「あきらちゃん。」
「どしたの?」
かなちゃんに手招きされた。何だろう?
「あきらちゃん、もしかして、目が潤んでる?」
「う、うん。いつもは弄られてばかりの私なのに、まぁ今日もだけど、こんな私に誕生日祝ってくれるのが、嬉しくて…。」
「よかったねー!あきらちゃん、私達、いつまでも友達だからね。」
「あっ、かなちゃんがそう言ってくれるなんて思わなかった~!」
やっぱり堪えられないや。かなちゃんのこの言葉に、もう涙が止まらなくなったよ。
「ううっ…うっ…」
「よーしよーし。」
「トモくん、残念ね。あれ、本当はかなちゃんじゃなくてトモくんがやる番じゃなかった?」
「そうですよ、先輩。先輩がしゃべってたら、私達も泣いたり、どさくさに紛れて体触れたりしたかもしれないんですよ。」
「ま、まあ、何事も早けりゃ良いってものでもないけど、確かに今回のはチャンス逃したかもなぁ。」
もっ、もぉー!後ろでトモくん達が話してるの丸聞こえだよ。でも、今だったら何事にも感謝出来るかも。
私達の日常。誰にも邪魔されたくない。そう思いながら、私はかなちゃんの肩の上で泣いてた。
時刻はそろそろ午後5時半になろうとしてた。もう、辺りは暗くなったわね。
「こんなに楽しかった、あきらちゃんのお誕生日会も、いよいよグランドフィナーレを迎えました!名残惜しいですが、エンディングと参ります!」
ど、どしたの?かなちゃん。
「会場提供、江藤麻耶ちゃん!」
麻耶ちゃん、お辞儀が深いわね。どこかの県知事を見てるみたい。
「参加者紹介。50音順に紹介します。
相坂菜々ちゃん!
赤崎峯子先生!
江藤麻耶ちゃん!
小野絵美裡ちゃん!
仲野智美ちゃん!
私、原加奈子!
松本智彦くん!
森嶋麻帆さん!」
あれっ?私は?
「そして、今日のヒロイン、この人は絶対忘れちゃ困りますとも。敢えて最後に紹介しました!阪本あきらちゃん!」
おぉー!さすがはエンターテイナー、かなちゃん!本当に司会が上手いんだから。
「さぁ、最後に、本日のヒロインに締めの言葉をいただきましょう!」
えっ!私がしめるの!?どうしようかしら。良い言葉が思い浮かばないけど、成り行きでなんとかしよう!
「ええと、本日は…」
わ、た、私、皆に見られてる!
「お日がらも良く…」
「「「「「あはは…」」」」
「あきらちゃん、外はもう夜だよ。」
今、私「お日がらも良く」って言っちゃった!?ボケで言ったつもりでもなかったんだけどなぁ。でも、何だか緊張が解れたわね。
「この時間まで、私の誕生日会に出席いただき、ありがとうございました。今後とも、私を多いに弄ってくれても構いませんが、常識の範囲内で出来ればお願いします。また、来年も、ずっと、こうして集まって、皆で楽しくできたら、こんなに幸せな事はありません。また来年もお願いします。麻耶ちゃん。」
「Be pleasure !」
あっ、また言った。「ビープレジャー」って。麻耶ちゃんの流行語なのかも。最近よく言うんだもの。
「本日は、どうもありがとうございました!」
パチパチパチパチ…
「以上をもちまして、阪本あきらちゃん、お誕生日会を終了致します。お帰りの際はお忘れ物ございませんよう、ご注意ください。尚、外は現在も雨が降っております。お足元にお気を付けて下さい。」
ここまでやってくれるんだ。さすが、司会者のかなちゃん。
「また、トモくんは本日のヒロイン、あきらちゃんとご一緒にお帰り下さい。」
えっ!?
「ぢょっどー!そ、そ、そ、それ本気なの?」
「本気よ。ちゃんとお家までエスコートして上げなさいよ。あぁ、傘1本しか無いので、2人仲良く歩いてね。それじゃ!」
また相合傘するの!?もぉー、かなちゃんったら!
とはちょこっと嘆いてはみたけど、皆別れの挨拶をちゃんとして去ったので、あとは私とトモくんが一緒に帰るだけなのね。
あらっ?さっきは恥ずかしくて堪らなかったのに、なぜか今はワクワクしてる。
「トーモくん!一緒に帰ろう!」
「あぁ、いいよ。」
会場を使わせてもらった麻耶ちゃんにお礼を言って、私達は麻耶ちゃん家をあとにした。
○
「いやー。相合傘しながら帰るのって、何だか気恥ずかしいなぁ。」
「そ、そうね。学校だけじゃなくて、いろんな人の目があるから、ついつい気になっちゃうわね。」
「そうだな。」
うーん。良い返しが思いつかない。変なタイミングになっちゃうけど、話題変えよう。
「あのー。プレゼント、どうだった?」
「もちろん、文句無しよ!あのテディちゃんも可愛かったし、一目見て、トモくんからのプレゼントだって分かるし。あと、あの絵も上手だったわ。トモくんが描いたんだよね?」
「うん。僕が描いた。」
「トモくんらしかったし、良かったよ。」
「そう言ってくれると、やった甲斐があるよ。」
「うふふ…」
ど、どうしよう。お互いに何も言えなくなっちゃったよ。こういう沈黙って、僕はあまり好きじゃないんだよなぁ。な、なんでだろ?妙に緊張するなぁ。
何の会話もないまま、大通りの下を通るトンネルに入っちゃった。トンネルと言っても、人だけが入れるように様々な設計が施されてあるだけ。横にある信号が待てない時はこっちをよく使う。朝や夕方になると、このトンネルを高校生が頻繁に通る。
けども、あとちょっとで夜になる。そうなると、滅多にこのトンネルを通る人はいないんだよね。んっ?人が通らない?今、頭の中で、良からぬ事思いついたんだけど、もしかして、これって、あきらちゃんが欲しかった事なのかも。
「ねぇ、あきらちゃん。」
「どうしたの?」
ちょうど、あきらちゃんが出口に向かう階段に足がかかった時に、あきらちゃんを呼び止めた。
「あ、あのさ。実は、もう一つ、誕生日プレゼント、渡し忘れてたんだ。」
「何でぇ?プレゼントは1人一つじゃなかったっけ?」
「あの場じゃどうしても渡し辛かったから、ここでだけど、良いかな?」
「いいわよ。いいプレゼント、期待してるわよ。」
「お、おう。きっと、喜んでくれると思うんだ。あっ、その前に、あきらちゃん、目を閉じてくれるかな?きっと、そうした方が、ワクワク感が増すと思うんだ。」
「なぜか腑に落ちないけど、いいわよ。」
あきらちゃん、目を、閉じたな。これから渡すのは、プレゼント、なんだけど、何と形容したら良いか、僕には思いつかない。けど、あげるしかないんだよな。
「トモくーん。まだなの?」
「まっ、まだだよ。ぼ、僕がいいって言うまで開けちゃ、ダメだから。」
もう、後には引けないぞ。今更「ゴメン、何でもない。」と言えないし、あきらちゃんをガッカリさせちゃうからなぁ。でも、コレあげちゃったら、僕らの関係も変わっちゃうんだろうなぁ。
ぼ、僕だって、今日、コレあげるとは思わなかったんだよ。でも、以前、アレして欲しいなぁ、ってあきらちゃんが言ってたの聞いたもんだから、かと言って嫌々あげるわけじゃないよ。僕だって、その、興味はあるし、1度はあげてみたいな、と思ってたからね。
さて、そ、そ、そろそろ、心を決めて、あげるか!
「あ、あきらちゃん、誕生日、おめでとう。」
次の曲を別ウィンドウで再生し、後に続く物語をお読み下さい。
『In This Country』sung by Robin Zander(※3)
♡
な、何かな?私を呼び止めて、目を閉じて、って言って。それに、麻耶ちゃん家で渡せなかった誕生日プレゼントって何だろう?実は、ポケットに何か忍ばせてたとか、かなぁ?
何を贈ってくれるんだろう?トモくん。何だか緊張しちゃう。
「あ、あきらちゃん、誕生日、おめでとう。」
何で耳元でささやくの…
チュッ
えっ!何?何?この、私の唇に伝わる感触?あと、何だか、震えてる。も、もしかして…。「いいよ。」って言われてないけど、片目開けてみよう。
あっ!トモくんの耳が見えた!という事は、私、キスされてる!私のファーストキス、トモくんに奪われちゃった。こんなに早く、まだ11歳にして奪われちゃうなんて…。
でも、何だか、ずっと、してたい。トモくんだって、きっと初めてかもしれないのに。唇、震えてるけど、優しい。あぁ、何も考えられなくなりそう。お願いだから、このまま時間止まって。
トモくん、唇離しちゃった?ああっ、だめ。まだやめちゃ…
チュッ
私から、しちゃった。トモくん「えっ?」と言いたかったみたいね。ちょっとだけ、吐息が漏れてたわ。
○
あぁ、これか。これが、女子も憧れる、あきらちゃんの唇。きっと、僕があきらちゃんにキスした、最初の人なんだろうなぁ。何だか、勿体無い事、してるみたい。あきらちゃんのファーストキス、僕なんかがもらっちゃってよかったのかな?
でも、何だか気持ち良い。キスって、こんなにも気持ち良いんだ。体のどこかを触れるよりも、こうしてると、一体になったようで、時が止まってるように感じるなぁ。
いかん、息苦しくなってきた。名残惜しいけど、ちょっと離そう。
チュッ
あっ!あきらちゃんから、してきた!びっくりした!まさか、あきらちゃんから、キスしてくるなんて。思わず
「えっ?」
って言っちゃったよ。キスしてる時に。
呼吸、しにくいけど、は、離したくないなぁ。鼻からの呼吸じゃ、到底落ち着きそうにないなぁ。
♡
どうしよう。離れるのが勿体無くなってきちゃった。もう、私とトモくんは、友達の枠から、一歩踏み越えちゃったのかも。
ギュッ
あっ!と、と、トモくん、私の体を抱き寄せた!ど、どうしよう。私の鼓動が、トモくんに伝わっちゃいそう!あっ、だめっ。腰に腕をまわしちゃ。緊張が直に伝わっちゃうよぉ~。
だっ、だめっ。もう、息、出来ない。
はぁ…はぁ…
離しちゃった。何だろう。妙に切なくなっちゃう。もっと、したかったなぁ。トモくんとのキス。
「ぷ、プレゼントって、この、キスだったんだ。」
「あの、嫌だった?」
「嫌なわけ、ないじゃない。嬉しかった。うふふ…」
そうそう、私、トモくんから大事なもの、もらっちゃった。
「ふふふっ。あきら、トモくんの初めて、もらっちゃった。」
「ぼ、僕が初めでだったなんて、よく分かった、よね?」
「小刻みに震えてて、慣れてなかった感じだったから、そう思ったんだ。」
「そう、か。もしかして、あきらちゃんも…。」
「そうよ。トモくんの、今のキスが、初めて。」
「お互いに、初めて、もらったんだね。」
「そう、ね。」
なっ、やだぁ。恥ずかしくなってきちゃったじゃない!ふと、今の私達を客観視しちゃって、初々しいカップルだなぁ、なんて思っちゃったから。
「そ、と、トンネル、出ようか。」
「う、うん。出よう。」
何だか、たどたどしくなっちゃったわね。上手く言えないんだけど、トンネル出た時、雨降ってるのに、傘がいらないと感じちゃう。雨に打たれなきゃ、何だか気持ちが落ち着かないというか、もう、言葉に出来ないかも。今の、私の気持ちは。
しばらく歩いて…
「あきらちゃんの家、着いちゃったね。もっと、一緒に居たかったけど、ここまでになっちゃったね。」
「そ、そうね。また明日も、学校あるから、また、一緒に、遊ぼうね。」
「う、おう。あの、傘持っていきなよ。僕は、家まで走って帰るから。」
「風邪引かない?」
「大丈夫だって。すぐ、シャワー浴びるから。」
随分と調子良いね。やっと、いつものトモくんらしくなったわね。
私の家、トモくんのお家より、学校側から近くにあるから、先に着いちゃうの、何だか物悲しいなぁ。
「トモくん、また、2人っきりになったら、あきらに、キス、してもいいよ。」
チュッ
えへへへ…。トモくんに向かって、投げキッス、しちゃった。トモくんったら、また顔真っ赤にして。可愛いんだから。
「あ、ありがとね。ぼ、僕、頑張る!それじゃ!また会おう!」
「バイバイ、また明日!」
こんなに可愛いトモくんを見たの、いつ以来だったかな?シャワーを浴びながらそう思いつつ、こっそりとトモくんの唇の感触を思い出していた。
※1.誕生花の検索は、下記のサイトを参考にしました。http://ffj.jp/hana11.htm
※2.ネタの元にあたるのが「マクラーレン・ホンダ」です。以前から出てましたが。
※3. 作者は右記のサイトから聴きました。 http://www.youtube.com/watch?v=L1ssmwyujHM&list=AL94UKMTqg-9A-gVN7lZfC0NhgHhs_uD31&index=1&feature=plcp&hd=1