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屍王子は、安楽椅子に座る。秘密を握られた探偵助手のワタシ〜泥だらけの罪と、学園のささやかな事件簿〜  作者: cross-kei
第01部:最悪の出会い

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【第5の謎】僕のスマホと彼女の秘密

 学園での事件は、次々と蓮の推理によって解決に導かれていった。


 ある日の昼休み。

 私は購買部で買ったパンを片手に、渡り廊下を歩いていた。


「今日の君も、すごく頑張ってくれたね」


 耳元で、甘く優しい声がする。

 隣には、一条蓮が並んで歩いていた。

 学園のアイドルの彼と並んで歩いていては騒ぎになると思い、私は周囲の目を気にしてビクビクしていた。


「先輩、だから……あんまり堂々と出歩かないでください。誰かに見られたらどうするんですか」


 私が小声で咎めると、蓮は困ったように微笑んだ。


「大丈夫だよ。僕のことなんて、君以外は誰も気にしないさ」


 言われてみれば、すれ違う生徒たちは誰一人として、彼に――いや、隣を歩く私にすら視線を向けていない。まるで、私たち二人だけがこの空間から切り取られ、透明になってしまったかのような奇妙な感覚。その薄気味悪さに耐えきれず、私は小さく息をついて話題を変えた。


「そういえば先輩、スマホって持っていないんですか? 事件の調査中、何度か連絡を取りたいと思ったんですけど……」

「ああ、うん。ちょっとね、落としてなくしちゃったみたいなんだ。でも君が直接報告しに来てくれるから、別に困らないよ」


 蓮は無邪気に笑う。

 落とした?

 学園長である父親に言えば、すぐにでも新しいものを買い与えられそうなものなのに。


 その時、脳裏にふと『ピロリロリ』という間抜けな電子音が響いた気がした。


 ――なんだろう、今の音。


 胸の奥がざわざわと波立つ。

 私は何か、とても大切なことを忘れているような気がするのだ。

 それが思い出せそうで思い出せない、胃の奥に冷たい鉛を飲まされたようなひどく重い感覚。


「どうしたの、白石さん。難しい顔をして」

「いえ……なんでもありません」


 蓮の優しい声が、私の思考の波を穏やかに均していく。

 周囲から孤立していく私の世界の中で、彼だけが唯一の理解者なのだと、私の心は逃げ場のない錯覚に深く沈み込み始めていた。

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