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第8話 魔王、罰を受ける。

 ノノのでかい木を放火をした俺は罰としてシャルスト学園を綺麗にすることを命じられた。

 

 「なんで俺様がしないといけないのだ!貴様には従わないぞ!」


 と一度は抵抗したが、教師にめちゃくちゃ怒られたので、俺は半べそをかきながら言うことを聞いた。

 くそ……この体になってから異様に涙もろくなるな。

 冷血非道と呼ばれた俺が……なんと情けない。

 

 説教が終わり、俺は罰を受ける。

 まず中庭から綺麗にする。

 俺は草むらに座り込み、ダルそうにそこら辺に生えている雑草をひたすら引っこ抜いていた。

 雑草を抜いた後は花壇に咲いている花に水やりをして、倉庫の清掃。これで罰の終了になるみたいだ。

  

 「くそっ……なんで俺がこんな雑用をしないといけないのだ?」

 「こっちのセリフよ!バカぁぁぁぁぁぁ!」

 

 俺は愚痴をこぼすと、近くから怒鳴り声が聞こえる。

 そこにはこちらを睨むノノがいた。こいつも俺と同じで学園を綺麗にする罰を受けている。

 

「なんで私まで掃除しなきゃいけないのよぉぉぉ!こっち木燃やされたのよ!被害者なのよ!」

「おい小物、うるさいぞ!俺は今ものすごく機嫌が悪いんだ」

「ユウが火の魔法なんか撃つからでしょ!ユウのせいで先生に怒られたじゃない!どうしてくれるのよ!謝りなさいよ!今すぐ私に詫びろ!」

「ふん……なんで俺が小物に頭を下げなきゃならんのだ」

 

 「きぃぃぃぃぃぃ!」とノノは怒りをぶつけるように雑草を引き抜き、何度も俺に投げつけた。

 

「おい!やめろ!俺に草投げるな」

「やめてほしかったら!私に土下座しなさい!そしてお菓子300ゴールド分、私に奢りなさい!」


「この!この!この!」と力いっぱいに草を投げつける。投げられた草は球速が落ちることなく俺に当たった。白いワイシャツが土で汚れてしまった。


「貴様、いい度胸だな………後悔するぞ」

「なに?優等生の私とやる気?」


 俺が睨むとノノが睨み返す。

 俺が草を引き抜いてをすぐさま投げると、ノノに回避された。そして反撃と草を一投。しかし俺も余裕で避ける。


「おりゃぁぁあぁぁぁ!」

「てやぁぁぁぁぁぁぁ!」


 投げて、避けて、投げての繰り返し。無数の草が中庭に飛んでいる。


「俺の火弾ファイアで今度は貴様を燃やしてやるよ!」

「上等よ!やってみなさいよ!!」

「お前ら何をやってる!」


 俺たちは夢中になって草を投げ合う。


「くだばれぇぇぇ!」


 俺は勢いよくノノに向かって草を投げつける。

 ノノが素早く身をかがめると、草はノノの後ろにいた教師に直撃した。


「「………あっ」」


 その瞬間ヒートアップした俺とノノは教師の存在に気づく。

 そしてやばいと、声も漏らした。

 その後、俺とノノは教師にものすごく怒られたのだった。

 くそ……小物せいだ。


 ○○〇


 この学園の中庭は広大で、雑草が生えている場所がたくさんある。だから花に水をやって、1階の倉庫を綺麗し終わった頃には放課後になっていた。


「はぁ……やっと終わったわ。どっかの誰かさんがサボったせいで遅くなったじゃない」

「……」

「ユウのことを言っているんだよ!」

「うるさいぞ」

「うるさくない!」


 罰から解放され、ようやく帰ることを許された俺とノノは夕暮れの廊下を歩いていた。

 横でガミガミと説教がましいことを言っているノノを無視する。

 はぁ……疲れた。魔王城の掃除は全部家来にやらせていたが、こんなに掃除が大変だったとはな……


「……あれって」

 

 突如ノノが足を止める。

 視線の先には、男3人に囲まれた1人の女生徒がいた。

 茶髪のショートカットの女は廊下に倒れこんでいる。周囲には荒らされた鞄の中身が散らばり、教科書も無残に引き裂かれ、床にばらまかれていた。

 あいつらは確か……。

 茶髪のショートカットの女と、その女を囲む男たち。

 その姿を目にして、俺は朝、ルティアと一緒に登校した時に見かけた、いじめの光景を思い出す。


「……いじめだよね」


 ノノが倒れている女に視線を向けながら、囁くように言った。


「そのようだな。でも俺たちに関係ないだろ?」

「関係ないって、そんな言い方……」

「無視でいいじゃないか?」


 下手に首突っ込んで、喧嘩売られたらどうするんだ?

 俺は掃除で疲れているんだ。無駄な戦闘は避けたいところ。

「でも……そのまま見て見ぬふりをするのは」とノノは反論しようとするが、俺の意見は変わらない。

 そもそもなんで俺が人間を助けないといけないんだ?


「だったら、貴様が助ければいいだろ?」

「そうだけど……相手、精鋭組だし……」


 ノノの声が少し震えた。表情も曇って、不安そうに目を伏せる。

 精鋭組ってことは俺より年上ってことか。

 俺は一瞬目を細め、ちらりと男たちを見た。


「お前、もしかしてあいつらが怖いのか?」

「ち、違うわよ!べ、べつに怖くないし! 弱い者いじめしてる連中なんて、ぜ、ぜんぜん怖くなんだから!」

「めちゃくちゃビビってんじゃねぇか?」


 俺は口元を歪めて笑うと、「う、うるさい」とノノはそう言って視線を逸らしていた。

 その後、廊下で無様に倒れる女に目をやった。


「おい、どうしたんだよ?ほらほらほら!俺を呪ってみろよ!」


 一人の男が嘲笑混じりに、女を踏みながら言い放つ。

 呪い?俺はその言葉に首をかしげた。


「呪い?」

「ユウ、知らないの?あの子の噂」

「噂?」


 ノノが周りに聞こえないように小声で話すと、俺は眉をひそめた。


「うん……彼女に近づくと呪われて、ひどい目に遭うらしいの。昔ね、彼女と仲良くしていた子が急に高熱を出して……そのまま寝たきり状態になったんだって。それから周りが呪いだ!呪いだ!って言い始めて……それで皆、彼女のことを避けるようになったのよ」

「それで呪いって言っているのか?バカバカしい。単にそいつが何かしらの病にかかっただけだろ?そもそも呪いが使えるのは魔物か魔族だけだ。人間が呪いを使えるわけがない」

「そんなこと知っているわよ。だから皆、彼女のことを()()って呼ぶようになったの」


 ……は?

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