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「マユ」
マユは振り向かずに赤い外套を脱いでいた。
「ありがとう」
マユは何も言わずに赤い外套をバッグにしまうと、私を見ずに歩き出した。
私はマユの背中を追った。
マユの強さについて。
マユは強い。とても。聖剣を持っていないのに。
聖剣の能力の恐ろしさは先程の山賊を見れば分かるだろう。
マユが強かったので、大したことなく見えたかもしれないが、どの聖剣も正しく努力した人が使えば強力なものになる。
だって、斬撃を飛ばせるなんて、どう考えても強い。もう、説明の必要がないほど強い。
炎を出せるのも強い。敵が着てる服に火をつければ隙だらけにできる。
刀身を伸ばせるのも強い。届かないと思っていた剣が急に伸びてくるなんて、対応できない。
エトセトラ。
とにかく聖剣はとても強い。強くて便利。
そのはずなのに。
そのはずなのに、マユはそれよりも強い。
マユはまるで、聖剣の能力を把握しているかのように攻撃を避けて近づき、赤い棒で頭を殴る。
あ、この赤い棒というのは、ただの鉄の棒だ。鉄の棒が赤錆びているだけ。
間違っても聖剣じゃない。本当にただの鉄の棒だ。
だって、マユは聖剣を使えないんだから。(何度も言うようだけど)
なんでも、マユは聖剣の能力をある程度見分けることができるのだそうだ。
その見分け方はマユが教えてくれないので分からないけれど、マユはそうして聖剣を倒している。
マユの強さとはすなわち、経験値。
聖剣を持たないからこそ、聖剣のことを調べ尽くし、見分け方を見つけて攻撃を予測。そして、鉄の棒で頭を殴る。
それが、マユの強さ。
……などと、私が独り言のように考えているのは、マユが会話をしてくれないから。
マユは私の言葉に答えない。
私が何を言っても、言葉を返してくれない。
マユはあまり喋りたくないらしい。私がマユの言葉を聞くのは三日に一回程度だ。それも「ああ」という小さな返事だけ。
でも、それでいい。
なぜならマユは、私のことを守ってくれるから。私以外の人達のことも守ろうとしているから。
その優しさがあるだけで、私には十分。
私は夜寝る前にマユに必ず感謝を伝える。「マユ。ありがとう」と。
なぜならば、帰る場所がない私はマユを利用しているから。
ひ弱な私はマユの近くにいることで安全を得ている。
だから、毎日マユに感謝を伝える。勝手について行くのを許してくれて、ありがとう──と。