3
楽しんでいただけましたら感想やレビューなど、なんでもいいので拡散していただけないでしょうか……!
よろしくお願い致します!
「マユ。あれ」
私が指差した先には、何やら冒険者たちが戦闘を繰り広げている。
「……」
マユはそちらを見やると、興味を抱かなかったのかまた前を向いて歩き始めた。
「助けないの?」
マユは私の問いかけに答えず歩いた。マユの背中を追って私も歩く。
「ごめんね」
一言だけ冒険者たちに謝ってから。
「ん?」
私はマユの服の裾を掴んだ。
「マユ。あの人たちが戦ってるの。山賊みたいだけど」
マユは止まらず歩き続ける。
「ねぇマユ。あそこ、子供が縛られてる」
マユが止まった。
「助ける?」
マユは冒険者と山賊の戦闘を見た。ジッ……と見ていた。
「私が冒険者さん達に逃げてって言ってくるよ」
私はそう言うと、その戦闘に向けて走った。
冒険者たちは苦戦している様子だった。五人のパーティの内、二人は大怪我をしてしゃがみ込んでいる。
聖剣を構える剣士の男がかろうじて仲間を守っている状況だ。絶体絶命だ。
対して山賊。
まさに数の暴力。十人以上で冒険者たちに奇襲を仕掛け、二人に重傷を負わせてから囲んでリンチにしたのだろう。今は八人に減っているが、それでも冒険者たちを殺し切ることはできるだろう。
そして、縛られている少女。可哀想に。何処かからさらわれてきたのだろう。私よりも少し年齢が低いだろうか。
私はゆっくりと茂みの中から歩み出た。
「あの、すいません」
そして、しゃがみ込んでいる冒険者に声をかけた。
「なっ、何をやってる! 逃げなさい!」
冒険者のお姉さんが私を見て叫んだ。
「あの、そちらこそ逃げていただけませんか?」
「は?」
「その、事情は言えないんですけど、逃げてください。できれば、私を抱えて……」
「は?」
冒険者のお姉さんは私の言動を理解できないのか、戦闘のさなかだというのにポカンと口を開けて動揺していた。
「回復しますね」
私はそう言って、回復の聖剣をお姉さんの手に渡した。
「え、ありがとう」
「はい。じゃあその、逃げましょう」
お姉さんは立ち上がると、もう一人の重傷者に回復の聖剣を投げた。これで冒険者パーティは逃げられるだろう。
「マサ! 逃げよう!」
マサと呼ばれた剣士が山賊から目をそらさずに叫んだ。
「逃げられるか! 少女が捕まっているんだぞ!」
正義だ。正義の人だ。私は少し感動した。
私はマサと呼ばれた剣士に声をかけた。
「あの! 少女は絶対に助けますから! 逃げましょう!」
マサと呼ばれた剣士は聞き覚えのない私の声に「え?」と振り向いた。
山賊がその隙を見逃すはずがなかった。
「死ね!」
山賊が聖剣を振るった。すると、白い斬撃が宙を駆け、マサと呼ばれた剣士を切り裂いた。
……あっちゃあ~。私のせいだ。
「マサ!」
お姉さんが叫んだ。
その瞬間だった。
聖剣を振るった山賊の頭に大きめの石(野球ボールくらい?)がぶつけられた。山賊は倒れて動かなくなった。
「え?」
お姉さんが小さく呟いたかと思った刹那、茂みの中から飛び込んできた赤い影。
「なんだ!?」
山賊達が赤い影に狼狽えた。
……先程と同じ事を言うけれど、赤い影がその隙を見逃すはずがない。
赤い影は目にも留まらぬスピードで山賊の一人に近づき、赤い棒を頭部めがけて振り抜いた。
聖剣のシャキーンというかっこいい音ではなく、生々しいゴッ……っという音を鳴らして山賊は吹き飛ばされた。
「てめぇ!」
山賊が、赤い影に対して聖剣を振るった。すると、聖剣から炎が溢れ出した。当たれば相手を焼き切る必殺の一撃。
……当たれば。
赤い影は炎の一撃をスルリと躱すとまたも赤い棒を振り抜いて山賊の頭を頭上からぶん殴った。
山賊が地面に頭は地面に激突し、動かなくなった。
「……誰?」
お姉さんがそう呟いたので、私はお姉さんの前に立ち、その目を塞いだ。
「え、ちょっと」
お姉さんの言葉に被せるように、私は言った。
「見ないで」
「え?」
「仲間にも見ないように言って」
赤い影の攻撃は止まらない。手に持った赤い棒で山賊を殴る。殴る。殴る。
山賊の様々な聖剣(斬撃を飛ばす聖剣。刀身が伸びる聖剣。炎を出す聖剣二本目など)を躱して、赤い棒で頭を殴る。殴る。殴る。
それは、十秒にも満たない戦闘だった。そんな短い間に、八人いた山賊は全員、地面に倒れて動かなくなっていた。
「強い……」
冒険者の一人が呟いた。
赤い影は歩き出した。そして、茂みの中に入って行った。
私はお姉さんの目を見た。
そして「あの子、お願いします」と言って、赤い影を追った。