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第一章6話 ♡特級魔法少女現る♡

 悪の組織グランドストリートに俺は命を狙われている。その上、人形にしたリベアナがいつ元の姿に戻るかは分からない。俺は今日も一刻も早く、強くならないと身が危ないことを承知し、稽古に力を入れていた。


「さあ、今日こそ風魔法の強技エルカントを取得するよっ!」


 オランチアはヨゾラと待ち合わせの場所であるセンターの休憩所にやって来た。約束通り、ヨゾラが待ち合わせの場所にいたが、近くにもう一人、女の人が彼女とコンタクトを取りながら一緒にいた。


「あなたいくら特級魔法少女だからと言って、法に触れるようなことはやめといた方がいいよ!」

「うぉん? 何言っとんだぁ、お前さんわてにそんな態度取れる程、偉くなっとんか?」


 ヨゾラの隣にいる女性は20代後半の容姿の女性。服装は髪型は黒を軸にした赤と白の長髪とその上に犬なのか横なのか不明な獣耳の生えたカチューシャ。奇抜な形をしたサングラス。テカテカと光る紫ピンク色に光るロングブーツ。

 紫色で統一されたハイレグの上にマイクロミニスカートとリボンの着いたコスチュームを着ており、露出を強調したようなデザイン。


「あっ……このキャラは……まさかこの世界でも出てくるんだ……こいつ……。」


 オランチアに変身した義春はちょっと顔が冷めた表情になり、すぐにその場を誤魔化すように離れようとする。しかし、戸惑うオランチアを見かけたヨゾラはすぐに会話を仕掛けて来た。


「あっ! オランチア来たんだ! 待ってたよ!」

「あっ……はい、そ……そうですね……。」


 オランチアが気分の悪そうな顔をするため、ヨゾラは心配して回復魔法を私にかけてくれた。


「よぉ、お前ヨゾラの知り合いかぁ?」

「あぁ、はい、そうです……。」


 ちょっと目を逸らすような嫌悪感を示す表情を抑えながら、その女性と目を合わせる私。彼女はそんな私の表情に対して不満の言葉を漏らす。


「おい、てめぇよぉ? わてのことが嫌いって顔してやがんよぉ!」


 私は早速、彼女の逆鱗に触れてしまったようで思いっきりキレられてしまった。幸い罵声を浴びせられただけで、済んだが殴られなかっただけまだマシだろう。


(ドコニはやっぱり原作通りの性格なんだね……。)


 ドコニとはこの魔法少女の名前である。アニメでの本名は【虹子】。かじまほの世界には漢字は存在せず、名字は貴族や特殊な身分の人間にしか与えられることがないため、ニジコと呼ぶべきだろう。彼女は蓬莱国においては特級魔法少女という最強クラスの魔法少女として扱われている。特級魔法少女とは、魔法少女の中では最強クラスの存在であり、そこまでのランクに辿り着けるのは一万に一人しかいないと言われている。そのため、多くの魔法少女から憧れを受けたり、尊敬の眼差しで見られることが多いのである。

 だがしかし……。


「おいッ! 聞こえてんのかよぉッ!! うぉん!」


 この女は周りから尊敬などされず、それどころか周りからは怪物のように恐れられている存在である。このキツい性格と常識人からは共感されない趣味嗜好が周りの人々を寄せ付けないのだ。


「とりあえず、落ち着いて! 魔法少女同士で喧嘩なんてよくない!」


 ヨゾラはドコニの気分を逸らすために仲介に入る。私も彼女の機嫌をこれ以上悪くしないように謝ることにした。


「ごめんなさい! ドコニさんのことが嫌いだから嫌な顔をした訳ではありませんよ……。私の命の恩人であるヨゾラさんと喧嘩してたから……。」

「いや、喧嘩じゃないんだがよぉ。ただこの女とぉグランドストリートのことで話し合いをしていただけだわ。」


 私から見たら喧嘩にしか見えないけどね。


「とりあえず、落ち着いてもう一度話し合おう!」


 ヨゾラがドコニの怒りを鎮めた後、三人で組織のことについて情報や意見を交換し合うことにした。どうやら、この街にも組織の人間が暗躍しているようで怪しい人がいたら、すぐに通報してくれとのことだ。


「オランチア、あの組織には悪い噂があって、もう一度世界を冥獣のものにしようと企んでいるって話があるんだけど、どう思う? 私はそこまで詳しくはないけど、今から四十年近く前に起こった【ディストリア戦争】の時に冥獣側について人類を支配する側に寝返った魔獣者が創設した組織っていうのはちょっと怖いよね……。」

「今は組織のボスがマリエスっていう金髪の女性らしいぞぉ。何か冥獣に関する研究を行っているよだぞぉ。」


 ヨゾラの言う通り、あの組織の創設者ガーシュインはディズベストの手先である。最終的にはディズベストと同じく滅んだが、その設定も概ね同じようだ。組織のボスもマリエスでかじまほと全く同じである。これなら、私なりに一応は対策ができる。


「ねぇ。ヨゾラは瘴気耐性付与と水属性の魔法を防御することができる魔動技って持ってる?」

「えっと、瘴気? 一応使えることには使えるけど……それがどうしたの?」


「冥獣に従っていた組織だから何かそう言った能力の対策も取っておいた方がいいかなって思ったんだ。」


 良かった! マリエスと戦うことになった時の対策もバッチリってことだ!

 マリエスが冥獣化しても勝てる見込みがある!


 ヨゾラと組織の状況の話をして気分が徐々に上がってくる俺。やっぱり、アニメの知識が使えるのはをとても気分が良い。オタクも悪くないもんだ。

 三人で組織のことについて話し合いを終える辺りになったら、偶々通りかかってきたマスカリーナとバッタリ会い、彼女とも魔法の話で盛り上がっていった。


「う、うぅ……。ドコニさんおはようございます……。」

「マスカリーナか、二ヶ月振りだヌァ!」


 マスカリーナはドコニに対して嫌悪感を抱きながらも挨拶を交わす。やはり、みんなに嫌われてますね……。ドコニ先輩……。まあ、自分よりも10歳以上年下の男子学生に欲情する変態犯罪者だしね。仕方ないね。


「実は今ね。グランドストリートのことでドコニと相談してたの。」


 ヨゾラがマスカリーナにそう伝えると、マスカリーナも何か組織のことで知っている情報を私たちにくれた。


「じ、実は今日さっき、組織の本拠地が特定されたって情報がセンター内の訓練員から秘密裏に聞いちゃって、本部は関東区南部の水木シティの郊外のゴーストタウンにあるってッ!」


 マスカリーナちゃんありがとうございます! これで後は頼もしい味方と自分の魔力を鍛え上げれば本部に行くことができる!!


「おいぉぃ。これでもう悪の組織の壊滅の日が目の前まで来てんじゃねえかよぉ。」


 ドコニはニヤニヤ笑いながら、人差し指を上に向けて顔を見上げた。そして、彼女は自信たっぷりにこう告げる。


「さあ、わてと共に組織を潰しに行く手下募集ぅ!!」


 彼女なりの仲間の募集方法だろうか。勿論私が思うに素直に味方になってくれるとは思えないが、少し話にのっておくべきか。


「私はドコニさんと行こうかな。特級魔法少女としての実力は本物だからね……。」


 私はそう言って、彼女と同行を頼もうとすると、周りはやめた方が良いと説得しようとしてくる。ドコニの信用度がどのくらい低いのか、このみんなの反応だけで分かってしまうのはある意味凄いかもしれない。


「できれば、みんなも今回は彼女の意見を聞き入れてほしい。新参の私を信じることができない気持ちは分かる。でも、私はあの組織を潰す術をなんとなく察している。私は何が何でも勝ってこの街の平和を守ってあげるんだから!!」


 オランチアの自信を見て少しだけ勇気が出たのか、マスカリーナは「私と一緒に街の平和を守ろう!」と言ってくれた。私はそんな彼女を受け入れると心配になったヨゾラも結局「一緒に戦う。」と言い出したので、最終的にはみんなでグランドストリートと戦うということになった。


「さあ、明日の夜中にひっそりと本部に忍び込んで暗殺するぜぇ!!」

「え? 明日の夜中ッ!?」


 しかし、ドコニがすぐに準備して明日に戦おうと言い出したので、また周りがドン引きしてやっぱり行くの止めるかブームになってしまった。


「あ……あの……まだ魔法少女成り立てなんでもう少し魔法を覚えてから突入したいかなぁ……。」

「お前さん、何言ってやがんだよぉ、戦う時ゃあ、すぐに攻め込むのがいいんだぜぇ。」


 ドコニは報酬を自分が多くもらうためにいち早く組織を解体する方向に話を持っていく。報酬についても話を聞いてみたが、「わてが一番強いし、リーダーだからお前らの報酬は2割程度しか貰えないわなぁ。」と言われてしまった。


 やはり、彼女には人から敬れる要素がないんだねぇ……。

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