第一章4話 ♡三人の魔法少女♡
異世界で始めて仲良くなった相手であるホシノヨゾラ。
彼女に命を救われてやってきた場所は【マジカルネイションズセンター】である。
「ここがマジカルネイションズセンター。私たち魔法使いたちが活躍するためのギルドみたいものよ。」
マジカルネイションズセンター、通称このアニメでは省略されてセンターと一般名詞で言われていることが多い公共施設。ここには魔法少女や魔法騎士と呼ばれる魔法を扱うことのできる人間の交流の場であり、様々な依頼を受けることができる。
「わぉッ! まるでアニメやゲームのキャラクターみたいな服装の人がいっぱい! とても楽しそうぅ!」
施設の中には多くの戦士達がワイワイと賑やかに話し合いをしていた。センターには戦士を育成する機関も存在しており、向こう側にある大きなグラウンドには戦闘の訓練を行っている人たちもいる。どうやら、この辺は原作再現がされているようで話が早い。
戦士とはこの世界における魔法を使って戦闘を行う能力を所有している者のことを指す。一般的な魔法少女モノのアニメだと魔法少女が悪の組織に挑むという構図になるけど、「かじまほ」における魔法少女はあくまでも戦士の内の一種であり、若い女性しかなれない職業のようなものと俺は認識している。
「オランチアちゃん訓練所気になる? いづれ強くなったら、一緒に戦おうよ!」
ヨゾラは私に対してキラキラとお星様のような眼光で見つめてくる。可愛い少女の顔の興味津々な表情が私の心に響く。綺麗な女の子の笑顔を拝むと気分が良くなっていくというが、女の子の肉体になっている今の自分でもそれを感じることができるものなのか。
「なんか私、めっちゃ期待されている! 頑張らなくちゃ!」
オランチアがヨゾラから期待をされたことによってウキウキとした態度を取り続けると、私の前に三人の魔法少女と思われる子がやってきた。
「ヨゾラさん! さっきまで郊外を探索されていたという話ですが、何か進捗ありましたか?」
「この子を助け出した!」
三人の魔法少女は悪の組織と戦っていたヨゾラを少し褒めるようなリアクションを取った後、無事に救出された私の方を向いて、軽い自己紹介を行ってきた。
「私はマスカリーナ! マスカちゃんて呼んでね!」
「私はキリカ。これからよろしくな!」
「う……うちは……セイント・クオーツ……と言います……。」
赤色のツインテールが似合うシャーベットを連想させる魔法少女マスカリーナ。彼女の明るい第一印象と丸っこい洋紅色のつぶらな瞳が俺にはとても魅力に感じた。ちょっと、身長低めで確か公式設定では155cm。スレンダーな体型も少女としてのあどけなさがあるロリっぽさがあって義春の性癖に刺さる。少し派手だが、シャーベットアイスのひんやり感ある薄いレッドカラーの服装はチャームポイント。
コバルトブルーの髪型で身長168cmのクールな顔立ちの子はキリカ。彼女はアニメの設定ではとても頼りになる先輩と言った魔法少女で常に周りの人から尊敬されている。剣を扱うことができ、騎士としてもその強さを認められている。結構美人好きのイケメンが狙ってきそうなイメージがある。
そして、もう一人いるのは原作の漫画やアニメにはいない見たことのないキャラ。薄いピンクと紫色が混ざったような色の髪型で瞳の色は翠色。身長は二人と同じく女子校生と言った年齢だと考えられるが妙に身長が低めなのとは裏腹に胸とお尻が大きめ。所謂ムチロリ巨乳キャラと言ったところか。桃色のヘアピンも良い味出てるぞ!
ただちょっと、問題なのは太眉で顔がちょっともちもち感があることだ。童顔なのは良いがどこにでもいそうな顔なのが勿体ない! 顔面点数は多く見積もっても60点くらいかなぁ……。
「私はオランチア! まだ魔法少女成り立ての新人だけど、これからお願いします!」
オランチアこと義春は三人の自己紹介を終わらせた後に自分の名前を名乗った。まだ、会ったばかりの子たちだが、すぐに馴染めそうなくらい親切な人柄が三人にはあった。
「それで今日の訓練は前の続きをするんですか?」
「うん! そうだよ! 今日は風魔法取得の続きをしようか!」
ヨゾラはどうやら、他の魔法少女にとって先輩という立ち位置らしい。めっちゃ強いし、他の子からも慕われてるとか流石ですッ!
「オランチアも一緒に行こう! ここでトレーニングして強くなれば悪の組織なんて怖くない!」
私はヨゾラと他の魔法少女と共にセンター内の訓練施設に行くことにした。さあ、みんなと一緒に稽古をして、強くなっていくとしよう!
◇ ◇ ◇
訓練所はアニメで見たことのあるような光景が広がっている。そこには魔法を使える戦士がそれぞれの能力を高めるための修行に励んでいる。訓練所は広く、俺の通っている高校の体育館の倍の大きさがった。入り口の近くには魔法のステッキが置かれており、このステッキは訓練を受ける魔法少女用のものである。
「とりあえず、試しに一つ手に持って使ってみるか。」
私は自分の姿に似たオレンジ色のミカン風味のステッキを使って、訓練所にある的に魔法を放ってみた。
「ウィンドアスプラッシュッ!」
オランチアがそう唱えると、彼女の周りに物凄く鋭い小さな強風が生まれ、その強風が次第に一つの鋭い刃へと合体を起こした。合体した鋭い刃はまるで回転するのこぎりのように周り続ける。オランチアは的に目掛けて全身を込めて魔力を的に目掛けて飛ばした。
パリーンッ!!
訓練所にある的は風船が破裂するが如く、崩れ落ちた。まだ魔法少女成り立てとは言え、ステッキに魔力を込めればここまでの破壊力のある魔法の弾を撃てるようになるなんて……。
「魔法少女って素敵ね!」
オランチアが自惚れしていると、マスカリーナとセイント・クオーツがオランチアの魔法を褒めてくれた。オランチアは褒められて更に優越感に浸った。
「えへへへ、私ってめっちゃ凄いのかしら。」
「本当にあなた魔法少女成り立て? 私でもウィンドアスプラッシュを取得するのに二ヵ月近くかかったのに!!」
ウィンドアスプラッシュとは果実の魔法少女でよく使われている風魔法の魔動技である。魔動技の中では比較的簡単に体得できる技で多くの魔法少女が見習いランクを卒業するために覚えることが多い。
今日、この世界に来て魔法少女になったばかりだと言うのにここまで強くなれるとかやっぱり、私って凄い子なのね!
「みんな! 私と練習しましょうよ!」
ヨゾラが後輩に稽古を教えるための準備ができたようでこの訓練所にある全ての的が再生していた。的の周りにいた人は「今から指定訓練の時間なのでフリーの人は別の場所で研鑽してくださーい!」というヨゾラの声を聞いて別の場所に去っていった。
「さあ、風の魔動技エルカントを教えてあげるよぉ~!!」
風の魔動技エルカントはウィンドアスプラッシュの上位互換であると、義春は捉えている。この技は凄まじい疾風を自ら生み出し、自分の手中に納めてからそれを相手に向かってぶっ飛ばすという動作。基本的にはウィンドアスプラッシュに似たような動作とは言え、それとは明らかに破壊力も範囲も桁違いである。
ヨゾラは両手を大きく広げて自身に魔力を貯め込んだ。そして、彼女の頭上に大きな魔力の塊が生まれた。その魔力の塊は徐々に大きな風力に変換され、そのまま風の魔法となった。あまりにも風の抵抗が大きく、周りにあるものにも飛ばされていきそうになったので、キリの良いところで彼女は力を押さえ込んで見本の魔力の塊をかき消した。
「こ、これがエルカント……。」
マスカリーナはヨゾラの圧倒的な魔力量で室内で生まれる暴風のようなエルカントに腰を抜かしている。キリカも彼女の圧倒的な魔力量に少し戸惑いを感じているような表情になった。
「ヨゾラさん。もしかして果実の魔法少女の主役級キャラ?」
「相変わらず、夜空先輩の技は威力が半端ないのね……。」
「大丈夫大丈夫! とりあえず型を作るだけでいいよ! こんなに力込めなくてもこの魔動技を使うことはできるから!」
ヨゾラはマスカリーナにプレッシャーを与えないように友達感覚で話す。彼女に対して無理に魔力を込めなくても、技が使用することができることを伝えた後、ヨゾラは訓練所にある二階の観客席の方に登ってしまった。
「私はここでちょっとゲームでもしてるから後はみんな頑張ってね!」
そう言ってヨゾラは観客席の椅子の上に横たわり、自分のバッグに入っているゲーム機を取り出して遊び始めた。彼女がプレイしているゲーム機は天々堂DSのような少し古めの機種であった。
「ってあれ? ヨゾラさ~ん?」
オランチアはそのまま呼び戻そうとするが、そんな私を止めるかのように手を掴むキリカ。彼女は私を悟らせるように事情を伝えてきた。
「実はあの人、気分屋なところがあって恰好良くて可憐なところもあるんだが、時々こんな言動を取ることもあるんだ。そこは理解してくれ。」
あぁ~ショックッ!! 残念美人ならぬ残念美少女なのか……。
私の彼女への幻想が壊れていくぅ! あわよくばもっと仲良くなって一緒に戦ったり、色々な技を教えてもらいたかったのにぃ!
「うーん……。」
「オランチアちゃん、ゴメンね! 私たちで一緒に強くなっていこうよ!」
マスカリーナはガックリしている私に対して両手を掴み、笑顔で励ましてくれた。やはりヒロインに相応しいのは真面目で優しくて馴染める子に限る。私は励ましてくれる彼女に「これから一緒に頑張ろうね!」と励ましてくれた感謝をして、三人と一緒に風魔法の練習に取り組むことにした。