第一章1話 ♡人形化の魔法少女♡
義春は家の中を確認すると、ここが自宅ではないことに気づく。自宅と部屋の構造が似ているが、部屋には見たことの無い変な置物やお姫様が暮らしてそうなピンク色の家具がある。
「なんだこれ?」
ピンク色のハート型の模様のあるクローゼットを開けてみると、人形に着せられそうなメイド服や学生服などのコスプレ衣装が揃っていた。そして、人型の人形もそこに入っている。まるでフィギュアやそういう人形の趣味を持っている人が喜びそうな家である。
「えへへ、結構お年玉のお小遣いで【果実の魔法少女たち】のシトラス・エルサのお着替えセット萌えフィギュア、今でも家に飾ってるからなぁ♡」
義春は自分が漫画やアニメ、ゲームの美少女フィギュアを揃えて遊ぶ趣味を持っており、そういう趣味を持った人間がこの家の人なら仲良くなれそうだなと考えていた。
「うひひ……。これは凄い♡」
義春は一通り、家の家具を調べ終えると、リビングのテレビを付けてみた。
『さあ、今日のアイドルは彗星の如く現れたあのお方です!! 彼の煌めく目を見たらどんな女性も一発でメロメロ!! 今そのご尊顔をみんなで拝みましょう♡ キャ~~~ッ♡ かっこいぃぃぃん♡ こっちみてぇぇ♡ その偉大な世の女性たちを虜にする今一番のアイドルの名は――』
この世界でもアイドル番組というものはあるようだ。アイドルのことはあまり知らないのでほっとっいておこう。
「とりあえず、この世界が果実の魔法少女たちの世界なのか調べるために調査しよう。」
この家にはパソコンがなかった。スマホも今は持っていないため、この世界の情報を調べるにはまず外で情報収集しなくてはならない。
俺は外に出て、住宅街を過ぎると街中に着いた。街中はパッと見た感じだと俺が暮らしている現代の日本と物凄い違いは感じられない。しかし、所々に魔力に関係する道具が販売されているお店。そして、宙を浮いている人や剣から光る光線を放っている人がいて、やはりここが元居た世界ではないことを理解した。
「誰かと話したいけど、ちょっとこの状況だと少し、話しづらいかぁ。」
義春は人混みから離れたところにある郊外に行った。ここなら人も少なく、出会った人と話しやすいかなと考えていた。しかし、思った以上に人がいない。まるで何かの災害があったのかと思わせるようなヒビの入った廃墟のような建物が複数見受けれられる。
「誰もいないな……。」
俺はその後も少し気になるところを探したが、人の気配は何も無かった。どうやら、この辺を探索しても何もなさそうだ。やっぱり、人混みの中で堂々と話すべきか……。
「もう一度、戻るか。」
ふと帰ろうとすると、俺の近くに向かって誰かがやってくる。
やってきたのはとしばもいかない少女。体型は美形で俺好みの妹系。
金髪のツインテール。赤いツリ目の瞳。気の強そうな雰囲気が滲み出ている。
服装はへそ出してる黒シャツと黒いミニスカとニーハイ。そして動物の肉球を意識した黒いグローブをしていた。ブーツは鉄で出来ていて硬そう。右手には鎌のような武器を握っている。
顔面点数は84点。きつい目つきが逆に可愛い。
俺はこの娘を見たことがある。リベアナ・イーシュリン、彼女はグランドストリートと呼ばれるシトラス・エリサを始めとした魔法少女の敵であるグランドストリートの構成員だ。
「あ、あの……。ちょっと聞きたいことがあるのですが……。」
俺は勇気を出して彼女に質問すると、彼女はその右手で持っている鎌を勢いよく振り回してきた。
「うわぁ!危ない!」
俺はすぐに後ろに走って逃げた。彼女も逃げ惑う俺に向かって走って追いかけてくる。やはり悪の組織の親玉であるマリエスの娘だ。
「お前、魔法戦士だろ?早く力を出せよ。」
俺はすぐに魔法の呪文を唱えた。あのアニメの設定が正しければ魔力のある者は魔法戦士と呼ばれる存在になり、敵と戦う正義の戦士になれるからだ。
「愛の力よ!私のものとなりて!マジカル・オランチア!」
追いかけられている咄嗟に夢の中で不思議な女の子に言わされたことが脳内に思い浮かび、俺はオランチアという名前を口走った。
「うお!か……体がッ……!!」
俺の肉体は光りだして、可愛いらしい。魔法少女の服を着た女の子の姿になっていた。
体の動きが急激に速くなり、身軽になる感覚がする。生まれてきて味わったことのない感覚だ。
「てめぇ……。男の癖に魔法少女に成りやがった……。 なにもんだ?」
リベアナは俺が可愛らしい魔法少女の姿に変身したことに驚きを感じている。果実の魔法少女たちにも男性がアソコの付いていない女の子の姿に変身するという性転換の表現は無かった。恐らく、この世界でも性別を都合良く変える魔法とかは存在していないのだろう。
「うふ……♡ 少しくらい口調も女の子らしくしなとね♡」
俺……じゃなくて私は魔法少女としての振る舞いを行う。まずは魔法少女と言ったらステッキであろう。私はすぐに魔法のステッキを召喚させるために手の付近に念じる。
「さあ、私の武器出てきて!」
とりあえず、どんな武器が使えるか分からないため、私は魔力を込めて武器を召喚させてみた。
そうすると、私の手にバトルアックスの様な武器が現れた。魔法少女って普通、もっと杖みたいな武器が出てくると思うんだけど……。
「とりあえず、これで戦うしかないか!」
私はバトルアックスを握りしめ、追いかけてくるリベアナを返り討ちにするため、振り返った。
リベアナも私が変身して斧を取り出したことに警戒し、立ち止まる。
「てめぇ、魔法少女にしては変な雰囲気出してんな。 さっきまで男だったしよ。」
自分も実際に何故、こんな姿に変身できる力を貰えたのか謎だが、今は戦うことに集中だ。
リベアナは私が斧を構えると、ニヤリと笑い思いっきり小釜を地面に突き刺した。それと同時に地面から衝撃波のようなものが出現して私の方にそれが思いっきり飛んできた。
「うわぁ!! 威力すっごッ!!」
私はすぐに横に走って避けきることができた。彼女の強さはアニメ通りということか。
このままだと負けて殺される可能性が高そうだ……。
「上手く避けやがったな……。 ならこれはどうかなッ!!」
リベアナは衝撃波を撃ち終えると、そのまま鎌をしまって力を溜める魔法を使う。すぐに魔法の詠唱を終えると、衝撃波を避けて怯んでいるオランチアに全速力で向かっていく。
「や、ヤバい!」
オランチアは斧では彼女の素早い殴打を防御することはできないと考えたため、そのまま斧を側に投げて彼女と同じく素手で戦う構えを取る。彼女は格闘術も磨かれており、魔法少女成り立ての私の拳術では全く対応できず、防御の構えを取っても彼女の殴打で打ち砕かれた。
「うっぐぁ! うぅ……。」
「よっしゃあ!! あんま強くない雑魚魔法少女で良かった!」
私はリベアナの殴られまくった後、トドメの腹パンを喰らい、そのまま近くの住宅街の路地裏に吹っ飛ばされる。
「あぁ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
いくら自分が知ってるアニメの世界だからと言っても初心者に強敵と対峙させるとか酷過ぎるよ神様!
「こんな奴が最初の敵とかあんまりだあぁ……!!」
「っぷ!美少女の姿をした弱虫男が赤ちゃんみたいに泣いてるとかマジウケル! ざぁこ♡ ざぁこ♡」
リベアナは殴られて惨めに涙ぐむオランチアの表情を見て優越感に浸っている。こいつは原作のアニメでも魔法少女狩りを行っていて、自分よりも弱い魔法少女をすぐに殺さず、痛めつけて喜ぶシーンがあるサディストな一面がある。私はこの世界にやって来たと早々、痛めつけられながら殺されるオチが待っているのか。
「そんなの嫌だッ!!」
なんとしてでもここから反撃の手段に出なくてはならない……。だがどうすれば……。
私は頭の中を必死に動かして、夢の中で不思議な女の子に言われた『両手でハートを作って思いっきり精神を集中させて見てね。』という言葉を思い出す。
「両手でハート……?」
私の使うことのできる必殺技。すなわち、最終奥義とも言える攻撃手段。ここで使わなば殺される。
最後の必殺技に希望を賭けて立ち上がるオランチア。リベアナが立ち上がる彼女を見て笑いながら近づいてくる。
「あ? まだ抵抗するの?」
リベアナは立ち上がるオランチアに鎌で軽く攻撃をする。オランチアの右腕に鎌が刺さり、右腕からダラダラと出血をする。
「……うぐっ!」
「どう? 痛いでしょ? ぷっ……。」
リベアナはオランチアを鎌で刺して少し嬉しそうな表情をする。
彼女にとって最早、オランチアはただの遊び道具でしかないと思っているのだ。
そして、オランチアは鎌で刺された痛みを堪えながら両手でハートを作り、リベアナにそれを向ける。
「あっ? お前何やってんの」
「これは『私は屈服して負けました。 あなたに従います。 ラブラブ♡ハート』 っていう意味。 つまり降参ですってこと。」
私は勝ち確定で本気で襲いにかかってこないリベアナに対して時間稼ぎの時間を取る。私が考える内にこの必殺技は相手に向かってハートのビームを撃つものではないのかと推測している。
必殺技で手でポーズを作って力を込めるという攻撃手段は今まで色々な魔法少女ものの作品を見た限り、ビーム系であった。
「ぷっ。 痛みと恐怖で頭がおかしくなっちゃてるよ。 こいつ情けねッ!! クス……。」
「ごめんなさい。 調子に乗って。」
「まあいいや。 どの道お前を殺さないと示しがつかないんでね。」
そう言うと、私に止めを刺す一撃を指すつもりと思える構えを取ろうとしてきた。
やはり、必殺技と言うだけあって攻撃までに時間がかかりそうである。
くっそぉ……!! 早くぅ……!!
何としてでもこのメスガキを分からせてやると心に思いを積もらせた。
その瞬間。
周りから不思議なピンク色のオーラが生まれて私の手からオレンジ色の不思議なビームが思いっきりリベアナの方向に飛んでいった。リベアナはそれを見て驚いた表情でそのまま路地裏から逃げようとするが、幸いにもこの路地裏は飛んでよじ登るには高すぎる作りになっていた。
「お前!! この技を使うために時間稼ぎしやがったな!!」
「そうだ。 とは言えまだ一度も使ったことがないからどんな技かは不明だが。」
「ちっ!!」
リベアナはすぐに真っ直ぐに全力で走って路地裏から脱出しようとするが、脱出するよりもビームをそのまま喰らう方が速かった。
「うわあああぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!」
リベアナの叫び声とともにオレンジ色の光線で目の前の視界が覆われていった。
光線は距離と共に範囲を広げるかのように大きくなっていっき、その光景は自分にとって物凄い衝撃的であり、爽やかな高揚さえ感じられた。
「はあぁ……。 歩く度に体中から痛みがこみ上げてくる。 リベアナはもう死んだのか。」
リベアナにビームを当てた後、すぐに血がぽたぽたとこぼれ出てくる右腕を抑えながら路地裏から出てくるオランチア。路地裏を出たがリベアナの姿はなかった。恐らく、肉片すらも残らなかったのだろう。いくら普通の人間よりも強度な肉体を持っているとは言え、あんな強力なビームを浴びたら一溜まりないもない。
性格はともかく、声と容姿は中々良かった。
もう二度と見れないのは残念だなと少しだけ感じた。
「いや、流石に命を狙ってた相手のことだからそんな風に感じちゃダメだと思うけど!!」
そんなことを考えながら帰ろうとした時、ふと何か違和感を感じたので周りを見返したらあることに気付いた。それはあんな破壊力のあるはずのビームを撃ったのに路地裏や周りにある建物は何一つ損傷がないということだ。
「あいつを消し炭にできるような威力のビームを撃ったのだからどこかに跡が残っているはず。」
オランチアはもう少し周りを確認しながら近くを見回し、確認をしてみた。そうすると、下に何かが落ちていた。
「こ……。 これは……に………人形……。しかも……。」
それはさっき命をかけて戦った相手であるリベアナ・イーシュリン本人と言って差し支えない容姿をしている人形。このビームってまさか……。
魔法少女に変身し、相手を人形にすることができる力を手に入れてしまったオランチアこと義春。
俺(私)の人形にする力で沢山の敵を収集する活動が始まったのである。